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「Fairy World」を読む(14)

最近寒いですねぇ。体調に気を付けねば。今回は2作目に複雑な作品が登場します。自分の理解が正しいのか自信がないので、解説におかしいところがあれば教えてください。


110番

Probleemblad 2nd Prize 1971 (FIDE ALBUM 1971-73収録作)

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H#2 b)Bh1→a2

a) 1.Kg2 Rd1 2.Qxc6 f3#
b) 1.Qxg3+ Rg5 2.Qxc7 f4#

とりあえず1.Kg2 Rd1と進める。f3までのメイトを目指す(f4ではKg3がある)のでQをどけたいが、QはpinされているためBのライン上でしか動かせない。2.Qd5としてみると最終手のf3がunpinになってしまいQd2の受けが残るため、Qxc6とBを取るのが作意。

b)も1.Qxg3+ Rg5までは進められる。今度はf4までのメイトを目指す(f3ではKh1がある)ので、またしてもQをどけたい。2.Qd6ではやはりf4にQd2の受けが残る。よってQxc7と取るしかない。

ツインの設定が良くないのと作意もそれほど感心しないので微妙だが、ALBUM収録作なので一応紹介。


120番

2nd Friendship Match, 1967-1970 1st Place, Section G (FIDE ALBUM 1968-70収録作)

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H#2 2solutions 

H#2としては相当重い形で、ここからどんな手順が飛び出してくるか。まずは状況の整理から。d6に逃げ道があるのでSc4またはSf5とバッテリーを開くのが本筋に見える。しかし、Sc4はQf1のラインを、Sf5はRg5のラインを切ってしまう手になっている。そこから考えると、白はRe5からSf5とするのが最も自然だろう。しかしこれではBh6がe3に利いてくる。それを止めようとSe4からSg5とすると今度はRh3がe3に利いてきて詰まない。話はそう簡単ではないのだ。とはいえ、白の最終手はいかにもSf5とSc4だから、そう決め打って先に進めよう。

まずはSf5#から考える。このメイト形の問題点はもちろんd5に逃げられてしまうことなので、それを未然に防ぐ手は何かと考えると、Qd3?という手を思いつくはずである(Re5?は上記の通り詰まない)。そのためにはQのunpinが必須。つまり1.Bd1 Qd3 2.?? Sf5#という手順構成しかないわけだが、これでは2手目の黒に入る手がない!Sを跳ねるのもQを動かすのもRh2もRe1も、指せる手は全てwB自身もしくはwBのライン上どこかに利きを作ってしまう。tempo moveが存在しないのだ。以上よりd5に白の駒を利かせる順では詰まないと分かり、黒でd5をself-blockするアイデアに到達できる。最終手でd5の駒がunpinされることを考えるとQがd5に居たのでは詰まないため、手順は1.Bf3 ?? 2.Bd5 Sf5#と決まる。あとは白の初手に手待ちが出来るかどうか。Rはダメ、Bはダメと1つずつ確認していくとtempo moveが確かに1つだけ存在することに気が付くはずである。

1.Bf3 d6+! 2.Bd5 Sf5#

もう1解はSc4#になるはずだ。こちらで考えるべきことはb5への逃げ道をどう防ぐか?である。そして、そのb5をself-blockできる駒はBしかいない。具体的な手順は、1.Be2 ?? 2.Bb5 Sc4#となるだろう。またしても白の手待ちを考えるわけだが、こちらにはtempo moveが存在しない!よって、b5は白が1手でguardすることになる。そういう手はwQがcritical square(c4)を飛び越えるしかない。手順を当てはめると1.Bd1 Qa6 2.?? Sc4#となるわけだが、果たして黒の2手目に手待ちは出来るのだろうか?実は、盤上にはそういう手が1つだけあるのだ。

1.Bd1 Qa6 2.Qxd5! Sc4#

「黒が2手かけてself-blockする」か「白が1手でguardする」かの比較で、片方が本手順、もう片方は紛れとなる。そして両方の手順で白or黒の手待ちが求められる(tempo moveが有れば詰み/無ければ不詰)。さらに、紛れと本手順の比較が2解で逆転するという、とても複雑な構造になっている。いかにもKrikheliらしい構成の好作と思うが、どうだっただろうか。


解説が長くなったため、図面と作意、そして紛れを列挙する。

(再掲) 120番

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H#2 2solutions

Tries
1.Bd1 Qd3 2.?? Sf5#
1.Be2 ?? 2.Bb5 Sc4#
Sols
1.Bf3 d6+! 2.Bd5 Sf5#
1.Bd1 Qa6 2.Qxd5! Sc4#


ちなみに、本作に登場するテーマは作者の名前を冠してKrikheli themeと言われている。定義は以下。

In a helpmate twomover with two solutions having similar mates, there are one or two flights which can be covered by either side (self-block or guard). In each solution arises dual avoidance, motivated by either side’s necessity to play a tempo move. In one case the move can be made with out negative effect, in the other it can not.

これまでに紹介した作品で言うと、(9)の69番がこのKrikheli themeに該当する。


今回は以上。紛れ探しに結構骨が折れました。次回は気楽に鑑賞できる作品が揃っています。


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