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Uri Avner作品集を読んでみる 2-6

今日でセルフ編は終わりです。この分野は本作品集の中で質・量ともに最高。ぜひとも作品集を買って、ご自分で良い作品を見つけていただけたらと思います。


78番

Yosi Retterと共作

Springaren 1997 1st-2nd Prize e.a.

S#3

1...f2 2.c4+ Kxb3, Kb1 3.d4+ Bd3#
1...e5 2.c3+ Kb1 3.d4+ Bd3#

1.d4! waiting
1...f2 2.c3+ Kxb3 3.c4+ Bd3#
1...e5 2.c4+ Kxb3 3.c5+ Bc4#

最後なので解き方を書いてみることにしよう。黒には指せる手が3つしか無いから、セットプレイを考えるのが王道。1...f2、1...e5のいずれにもPの移動先が限定されたメイトがあるので、セットと作意での対比がテーマだと想像がつくところ。とりあえずは1...Kb1に対してメイトのある手を探すことになる。
それが1.d4だ。e4Bのラインを通そうという手なので発見は難しくない。もちろん1...Kb1には2.c4 Bd3#だ。となると、variationは1...f2、1...e5の2つ。それぞれ考えていくことにしよう。1...f2に対して2.c4+?とすると、これで黒Kのほうが詰んでしまう。よって2.c3+!だ。また、1...e5には2.c4+!とするのが正解。もし2.c3+?だと、やはり黒Kが詰む。
さて、以上2つの変化におけるPの動きに注目しよう。これは、set playにおける1...f2 2.c4+、1...e5 2.c3+と比べて丁度逆の関係になっているのだ!
この狙いをプロブレムの世界ではReciprocal changeと呼ぶ。オーソドックスやセルフメイトで頻出のテーマである。
手の入れ替わりを成立させる論理は極めて明快だ。セットプレイでは白のラインを開けるために白Pを動かす。対して本手順は、白のラインを一時的に閉じる必要があるため白Pの動きが限定される。

シンプルだが、これはこれで悪くないのではないだろうか。


次回からは最終章のフェアリーです。ヘルプメイトの好作もあるのですが、新刊を紹介しすぎるのもどうかと思うので、フェアリーを3回やったら終わりにします。

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