見出し画像

Zivko Janevski - Selected Helpmates 13

今回はどれも甲乙つけがたい好作が揃いました。


86番

Phenix 1990

H#2 2solutions

1.Rd2+ Sec6 2.Rb2 Bxe3#
1.Sd6+ Bf6 2.Sc4 Sd3#

5筋がものすごいことになっている。これら8枚の駒のうちテーマを構成するのは右の6枚なので、この部分の状態を確認しておく。h5Rとc5Kの間に合計4枚の駒が挟まっており、その内訳は白が2枚と黒が2枚。とりあえず黒2枚を無いものとして白の2枚に注目してみると、これはhalf-batteryの形になっている。今度は逆に、黒の2枚に焦点を当ててみよう。すると、こちらはhalf-pinになっていると分かる。このように、1つのライン上にhalf-batteryとhalf-pinが内包されているというテーマはAbdurahmanovic 4 themeと呼ばれている。作例の少なそうなテーマにも名称が付いているのがいかにもプロブレムらしい。

ここからは肝心の手順について。と言っても、この初形で2解となるとやることは1つしかない。まずhalf-pinから1枚抜いてpinの形を作り(2パターン)、次にhalf-batteryから1枚抜いてbatteryの形を作る(こちらも2パターン)。最後はpin-mate。逆王手や黒のラインを止める意味付けを用いてうまく手順を限定している。
これが何も受賞してないというのはとても不思議だが、類作でもあったのだろうか?


ここで本家AbdurahmanivicによるAbdurahmanovic 4 themeの作品をご覧いただこう。
時代的にも、本作に影響されてJanevski作が作られたのではと類推される。

(参考図)
Fadil Abdurahmanovic
4th Prize Phenix 1989

H#2 2sols

1.Bc6 Se2 2.Kc4 Be6#
1.Rd6 Bd1+ 2.Kb4 Sd5#

こちらは元々ライン上にKがおらず、Anticipatory self-pinになるパターン。Double pin-mateに仕上げた点が特に素晴らしい。


88番

1st Prize Sahobski Glasnik 1990 (FIDE ALBUM 1989-91収録作)

H#2 5solutions

1.Qd3 Sd2 2.Kc3 Sb3#
1.Qe3 Sxb5+ 2.Kd3 Sc5#
1.Qf3 Bc4 2.Ke3 Bf2#
1.Qd5 Sxb5+ 2.Kc4 Sed6#
1.Qe6 Bc3+ 2.Kd5 Sf6#

2つの白のラインを使った5つの解。4解までに比べて一気にレア度が高い。解のバランスが悪いと感じる人もいるかもしれないが、Bのラインで3つの解は用意できないため、これが文句無しに最大値である。
BとSを用いた5つのメイト形がどれも美しく、大変好みの作品。


92番

3rd Prize Schach 1991 (FIDE ALBUM 1989-91収録作)

H#2 2solutions

1.Sxe5 Seg5 2.Sd5 Bb5#
1.Bxe5 Bc4 2.Sf5 Sf6#

Pの無い綺麗な初形図。e5のRがSをpinしている。しかし、これをそのまま使ってメイトにするのはありえない。Rの背後には3枚もの白ピースが隠れているからだ。はじめにe5Rを取ってしまうのが解く上では絶対の手となる(もちろん作る側は余詰消しに悩まされるわけだが)。さて、この時点の図を見ると、86番と同様にhalf-batteryとhalf-pinが複合された形になっている。ただ、Helpmate AnalyzerではAbdurahmanovic 4 themeだとは表示されない。テーマというのは初形に出てこないとダメなのだろうか?

少し話が逸れたので手順の解説に戻ろう。白の初手は単純に黒Kの逃げ道のguardのため、盤面が動くのは黒の2手目だ。e7Sを2方向に跳ねて黒Qのラインを遮断する。これで初形からpinされる駒に加えてpinする側の駒まで変わった、珍しいタイプのtransffered pinになった。ラストはそのpinを使った美しいpin-model matesでの締め括り。配置の経済性が最高で、傑作だと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?