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読書感想文

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上田吉一フェアリー作品集『極光Ⅱ』、『チェスプロブレム入門』を読んだ感想記事です。その先は未定。
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『チェス・プロブレム入門』感想⑦

『チェス・プロブレム入門』感想⑦

F13:巨匠の手すさびで、例題として模範的だ。Annanは詰将棋からチェスプロブレムに輸出されたルールの1つ。そういうものは他にも幾つかあるが、最近ではPoint Reflection(点鏡)が特筆に値するだろう。

F14:マキシはフェアリー詰将棋での作例が少ないため馴染みのない方も多いだろうが、ルール的に考える手が少なくなるため解きやすかったりする。本作がまさにそうで、ほとんど考えるところなく

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『チェス・プロブレム入門』感想⑥

『チェス・プロブレム入門』感想⑥

今回からはこのセクション。

【フェアリー(Fairy)】

執筆者はまたもや若島正さん。

F01:セルフと類似したルール。まず1.Rc1+?はBxc1とされ、ここで手待ちができないので逃れ。また1.Rg1?には1...Bh6!の返し技がある。よってRの最遠移動が登場。エッセンスだけ。

F02:この設定と駒数では新作にならないだろう。作者はこういうのを大量に発表しているイメージ。

F03:白

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『チェス・プロブレム入門』感想⑤

『チェス・プロブレム入門』感想⑤

ちょっと間が空いてしまいました。今回はこのセクション。

【セルフメイト(Selfmate)】

執筆者は若島正さん。

まずセルフメイトのルール説明から。「黒は抵抗する」というところが肝で、協力自玉詰ではなくて自玉詰である。抵抗する以上はvariationがいくつも存在するため、表現はHelpmateよりもDirectmateの方と似てくる。

S01:3つのvariationで白Qの使い分け。

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『チェス・プロブレム入門』感想④

『チェス・プロブレム入門』感想④

D11:こういう形をOrgan Pipesと呼んでいる。干渉点が計4つもあって面白い形である。
2.Rd2!という第三弾のNovotnyは、2...Bxd2 3.Sd4のvariationを見れば分かる通り邪魔駒消去の意味合いを持っている。つまり第二弾のNovotnyである2.Se3+とは少しニュアンスが異なるわけで、そこが少し残念か。
なお、このテーマは本手順1+Try3で4回捨てられるので、#

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『チェス・プロブレム入門』感想③

『チェス・プロブレム入門』感想③

【ダイレクトメイト(Directmate)】

執筆者は若島正さん。

ここでは作品を紹介しながら前提となる知識を解説している。特に重要なことを書いておこう。白の初手(key move)には大概threatが付いていて、黒の初手はそれを受ける手だと言うこと。threatが付いていない場合というのは、例えばD01のような限られた場合のみである。また、長編以外のダイレクトメイトで作意となる本手順が1通

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『チェス・プロブレム入門』感想②

『チェス・プロブレム入門』感想②

前回の続き、P33から読んでいこう。

H11:作意自体は面白い。 b)の最終手だけが駒取りになっている点やツイン設定の大きさは多少の減点である。ちなみに、2枚の駒を2パターンでunpinするシステムを詰将棋で使ってプロパラで発表したことがあるが、プロブレム向きのテーマだと実感させられただけだった。

H12:ツイン設定に無理があるが、H#2でこのテーマを実現したのは本作が初めてなのかもしれない(

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『チェス・プロブレム入門』感想①

『チェス・プロブレム入門』感想①

今回から『チェス・プロブレム入門』を読んでいき感想を書くことにしよう。

なぜこの本を選んだのかについて。
その理由は『極光Ⅱ』の時と同じで、「持ってはいるけど読めていない」人が多い本だと思うからだ。そういう人に読むきっかけを与えられたら、と考えている。あくまで持っているのが前提なので、私は作品の感想を書くだけ。図面や作意、そして解説は本を開いて確かめていただきたい。

イントロダクションは割愛す

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極光Ⅱの感想を書くだけ(5)

極光Ⅱの感想を書くだけ(5)

81番:縦横の桂鋸で2枚の歩を外す。啓蒙的作品。桂鋸が可能なルールは他に何があるか……と考えるとまた新作が作れるかも。

82番:ややこしいことこの上ないが、面白いのかよく分からない。

83番:ヤング・デ級の自玉詰。

84番:1サイクルで1枚動くというのは普通なのだが、その枚数と構造が尋常ではない。入れ替わる駒を眺めるだけでも一苦労。やはり2万手という手数には圧倒されてしまう。本作を理解するに

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極光Ⅱの感想を書くだけ(4)

極光Ⅱの感想を書くだけ(4)

61番:よく分からないが、それほど上手くいっていないように見える。

62番:逆回転するために玉が端まで赴く。

63番:連続詰と覆面駒の組み合わせなら簡単に面白いものが作れそうだ、と錯覚してしまう出来の良さ。Locustのラインを入るときは王と飛の2枚を引っ付けておかないといけない。このシステムだけでもあと何作も作れそうだ。

64番:こういうのも一種のエコーか。ナイトの利きの訓練になる。

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極光Ⅱの感想を書くだけ(3)

極光Ⅱの感想を書くだけ(3)

41番:GiraffeにPaoを取らせるまでのストーリー。Grasshopper2枚で玉を挟み込むパターンは、他のギミックとの組み合わせも考えられそうだ。

42番:主題部の易しい趣向に、序と収束が溶け込んでいるのが素晴らしい。こういう全体の纏め方を「センスが良い」と言うのだろう。

43番:中編詰将棋の気分で楽しめる。伝統ルール好きがこの本で最初に見るべきは自玉詰ということになりそうか。

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極光Ⅱの感想を書くだけ(2)

極光Ⅱの感想を書くだけ(2)

21番:16番と同じ連取り趣向。Neutral駒は難しくて苦手なので16番の方が好き(素人感想)。

22番:久しぶりに脳内で並ぶ手数のものが来てくれた。あまり上田さんらしくない印象だ。

23番:馬鋸は序奏。本題は合駒で出る角を利用したと金を往復鋸である。興味深い手順で好作と思う。Grasshopperのための跳び箱(と私は勝手に呼んでいる)を準備するというのは、長編で使いやすそう。

24番:

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極光Ⅱの感想を書くだけ(1)

極光Ⅱの感想を書くだけ(1)

上田吉一氏のフェアリー作品集『極光Ⅱ』を読んでいき、感想を書くだけの記事です。私にはフェアリーピース入りの図面を作る術がないので、出題図は貼りません。正解手順も書きません。書くのは作品番号と感想だけ。ぜひ『極光Ⅱ』を手元に置いてご覧ください。
もしこの名著を買いそびれているという方がいたら、本当に勿体ないので必ず買いましょう。まだ在庫はあるはずです。

なお、本作集は収録作の6〜7割が余詰らしいの

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