技術士の定義と役割
ケムファク(@chem_fac)と申します。普段は化学メーカーで生産技術として働きながら技術ブログを書いています。
技術士試験受験にあたり、基本となる技術士の定義を調べ、役割について考えてみました。
技術士については、技術士法で定められています。
目的(第一条)
技術士法の第一条に役割が記載されています。
後半には「科学技術の向上」と「国民経済の発展」に資するという技術士としての役割が明記されています。誰もがイメージしやすい言葉ではありつつも何をもって向上し、発展したと判断するのか?というところまで考えます。
科学技術の向上
私の中で科学技術が向上しているかどうかは付加価値を生み出しているかどうかだと考えます。
科学技術の向上と聞くと特許や論文がまず浮かびます。それだけではなく新製品や新技術の開発に伴い付加価値を生み出すことができれば科学技術が向上したと言えます。
視点を変えて、自分以外にも技術を持つ人が増えれば科学技術が向上する確率が上がります。つまり人材育成・技術伝承の面でも技術士として貢献できます。
国民経済の発展
国民経済の発展、つまり国が経済的に豊かになるということです。では、金が稼げれば良いのか?日本だけが豊かになれば良いのか?近年では特に、カーボンニュートラルやSDGsを始めとして経済との両立が求められます。
技術士としては、それぞれが持つ専門領域を活かして社会的にも経済的にも発展させることが求められると考えます。
定義(第二条)
技術士法の第二条に技術士および技術士補の定義が記載されています。ここでは技術士の定義を確認します。
まず、技術士は登録しなければ名乗れません。こちらに関しては後ほど記載します。後半には、どのような業務を行うものが対象であるか明記されています。
科学技術の定義
科学技術の中でも人文科学のみに係るものを除くと注記されています。つまり政治、経済、言語、倫理など人間の歴史や文化に関わる内容が除かれています。
個人的には自然科学を対象とすると考えるのがしっくりきました。実際に何を科学技術と定義するのかは、受験のために設けられた次に示す21の技術部門から判断できます。
【技術部門】
機械、船舶・海洋、航空・宇宙、電気電子、化学、繊維、金属、資源工学、建設、上下水道、衛生工学、農業、森林、水産、経営工学、情報工学、応用理学、生物工学、環境、原子力・放射線、総合管理監督
口頭試験もある二次試験では、各部門から細分化した選択科目があるだけでなく「専門とする事項」にまで限定して記載する必要があります。技術士会にて科目表が公開されています。
高等の応用能力が必要な事項
技術士法には直接記載されていないものの、技術士会のQ&Aに補助的業務や単純作業業務、マニュアルに従った業務は含まれないと明記されています。これが「高等の応用能力が必要な事項に限る」という文言を表現していると考えます。
おそらく主担当でなくても良く、自分の意思や発想が反映されているかが注目されます。つまりどれだけ規模の大きな仕事であっても、ただ人の指示通りに動いたり、業者に丸投げしたりするだけでは技術士としては相応しくないということです。
二次試験の申し込みに際して業務経歴を書きますが「ただ〇〇しただけ」ではないか?と問いかけてみると相応しい業務かどうか判断しやすい気がします。
技術士の行う7つの業務
技術士の行う7つの業務が「計画、研究、設計、分析、試験、評価、指導」であると明記されています。正直、意識して言葉を使ったことがないため違いが説明できませんでした。
計画も設計の一部では?分析と試験って同じ業務では?などいくつか疑問も出てきますので1個ずつ定義を確認しました。公式に公開されているものはありませんでしたので自分なりに整理したものです。
計画(Planning):将来の事業や製品開発などに向けて、目標や方針、手順、スケジュール、必要資源などを立案すること。
研究(Research):新しい原理や技術の発見、既存技術の改良などを目的とした、基礎的または応用的な調査や実験を行うこと。
設計(Design):製品やシステムなどを具体化するために、その構造、仕様、配置などを詳細に決定すること。
分析(Analysis):対象となる物理現象や事象についてデータを収集し、原因や要因を明らかにするとともに評価法や対策案を検討すること。
試験(Testing):設計通りに製品やシステムが製作されているかを確認したり、性能や安全性を検査したりすること。
評価(Evaluation):製品や技術などの価値や適切性について、所定の基準に照らして判断すること。
指導(Instruction):部下や後進の技術者に対して、知識や技術を伝授したり、適切な指示や助言を与えたりすること。
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)
技術士法で技術士について定義されているものの、これらの業務を行うために求められる資質能力が明確に定められていませんでした。このため平成26年度に技術士分科会にて資質能力(コンピテンシー)が新たに定められました。
また令和5年には改訂版が公開されました。
現在は、専門的学識、問題解決、マネジメント、評価、コミュニケーション、リーダーシップ、技術者倫理、継続研さんの8項目です。
コンピテンシーの理解は特に重要なため、改めて深掘りします。
技術士の登録
技術士法の第二条に登録について少し記載がありました。
技術士の二次試験を合格した段階ではあくまで登録の資格を有しているのみです。技術士定める通り、登録しなければ技術士になれませんし、名乗れません。
まとめ
技術士は8つのコンピテンシーを発揮し、科学技術の応用に関する7つの業務に取り組むことで「科学技術の向上」と「国民経済の発展」に貢献することが求められます。
技術士として、それぞれが持つ専門性を発揮することで新たな価値を生み出し、経済のみならず社会的にも発展していけるよう努めなければなりません。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?