カービングウォレット二種完成
皆様こんにちは。
先日名古屋にて初の出張講師をさせて頂きました。
出発数日前に盛大に体調を崩し点滴、現地へ移動中に顔面神経痛を発症、いざ講習会が始まると悪天候で片頭痛、それでも無事に講習会を終えてしっかり打ち上げした翌日に徳川美術館から知り合いの革工房へ、それからタトゥーを彫って翌々日からは激しい喉の痛みと痛い足を抱えたまま明治村へ、それから帰宅し翌朝すぐに病院へ行き薬を処方してもらうも効き目が浅く今日は朝から別の病院へ。
はい、本厄街道まっしぐらです。
不調も休み休みにして頂きたい。
それでも講習会を無事に終えれたのは関わって頂いた皆様の尽力のお陰で御座います、厚く御礼申し上げます。
そんな本厄街道爆速暴走中にも無事に作品が完成しましたので写真と共に綴ります。
カービング工程
先ずは下絵を描きます。
染色工程
仕立て
小端磨き、仕上げを経て、完成です。
弁天小僧柄セミロングウォレット
カービング部分の弁天小僧は個人的にも好きな歌舞伎の演目、登場人物なのである程度造作も深いので取り掛かりやすかったのですが。
こういう場合は先ずは知識から蓄えて、先入観を持たずに想像力を掻き立たせてから絵的な資料を集めるようにしています。
先に絵的な資料から入ると、そこに先入観を持ってしまい想像力が膨らまないので。
それから下絵を描きますが、大量に集めた資料のどれにもない部分というのを描くように心掛けてます。
自分なりの工夫というヤツです。
今回は大悪党ながらも17歳のあどけなさや生意気さ、色白で役者のような様子の良さ、というのも意識しております。
着物はドットで染め抜きの麻の葉模様を表現してみました。
仕立てはカードを入れても型崩れのしない立体的なカード入れ。
一枚パーツにし漉きとクセ取りを駆使し仕立てる事で底の縫い目を無くし、大きさは据え置きで容量と見易さを向上させた小銭入れ。
カード入れ側の札入れ(ポケット)スペースは2辺だけを縫う事で取り出しやすく革や縫い目への負担を軽減。
小銭入れ側のお札入れはスライドマチで取り出しやすく丈夫です。
糸は手撚りの麻糸、小端は切目本磨きです。
続きまして、、、
フリーメーソンステンドグラス柄長財布
こちらは実在するステンドグラスのデザインを縦長に縮尺を変えて製作しました。
私のカービングは基本的に理屈に合わせて立体感を付けております。
例えば前記のウォレットで言えば弁天小僧の体に入ってる桜吹雪の彫り物には立体感を付けておりません、実際の彫り物に立体感はないので理屈に合わないからです。
その考えでいくとステンドグラスなのであれば一切立体感を付けない方が理屈には合うのですが、そこは芸の上での嘘という事で各モチーフにだけ立体感を付けております。
が、ラインをカットしてしまうと立体感が強くなりすぎるのでスーベルナイフ等は殆ど使わずモデラとベベラーのみで立体感を付けております。
実はこの方法だと革の立体感が戻りやすくて革が吟スリでない場合は遥かに難易度が高いのです。
更に表現の限界に近い柄の細かさも相まって高難度となりました。
染色は日光堅牢度に応じて使う染料の種類は変えております。
それと拘りのダークグレー、これは過去にも書いたかもしれませんが単純な黒とダークグレーでは経年変化が全然違います。
使ってて面白い、せっかくのオーダーメイド、そういう考えで数十倍の労力を掛けるのです。
勿論カード入れは立体的に、糸は革の厚みに合わせて右撚りの麻糸の太さを変えて、縫い目のピッチも同様に3種類使い分けて仕立てております。
どちらも同じですが、カービング部分は型崩れを防ぐ為に薄くて丈夫な芯材を裏から張り合わせております。
その他全てのパーツをへり返したり、張り合わせたり仕立てていく上で全て立体的になるよう意識していく事で完成時に全てが僅かにふっくら膨らむように仕上げております。
時間がありましたら画像を拡大して見て頂きたいです。
形はふっくら、縫い目は無駄無く、小端は凹凸無く、メンテナンス性は高く、2〜30年後を見据えた仕立てです。
そこまで気を使って仕立てればこそカービングが生きてくるんだと思います。
カービングは早く経年変化しても良い部分と、なるだけ経年変化を遅らせたい部分で仕上げ方を使い分けております。
革製品は使ってて完成する物、オーダーメイドとは他所では真似出来ない物、と心得て仕立てております。
今回も良いオーダーを有難う御座いました!!
次は溜まった雑用を済ませてリペア&メンテナンスを少しやり、次のオーダーに取り掛かりたいと思います。
それでは皆様また会う日まで。
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北崎厚志
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