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私の物語はいつだって憧れから5話

【始まりの合図はバターの香り】

ここで少しレストラン・ランシエンヌ・オーベルジュの料理の紹介をします。

私がフランスで初めて勤めた、ジョルジュ・ブラン氏のブラッスリー、
ランシエンヌ・オーベルジュは郷土の伝統料理を中心に料理を提供するレストランです。

オーベルジュ カルト

こちらはオーベルジュの【ラ・カルト】の当時の単品料理表。
料理表には前菜、魚料理、肉料理などが主に記載されています。

単品料理以外にも月曜から金曜日の平日のみ、前菜・メイン・デザートと毎日異なる日替わりメニューもあります。

料理表には当時わからなかった単語にメモした跡が残っています。
辞書で調べては訳して直接メモした様子見ると、何もわからなかった当時の自分を懐かしく思い返します。

ジョルジュ・ブラン氏のレストランがあるヴォナ村は、フランスで美食の街と呼ばれるリヨンから程近く(程近いといっても70キロほど離れていますが、フランス人にとって100キロ圏内であればあまり遠いと言う感覚はありません)、リヨンの代表的な郷土料理もいくつか味わえるのが魅力の1つでもあります。

前菜ならばガトー・ド・フォワド・ブロンドと呼ばれる鶏レバーのムースにトマトベースのソースをかけた料理

安価な鶏レバーを食パン、パセリ、生クリーム、卵と合わせてミキサーにかけてから裏ごしして型に入れ、蒸し焼きして作る鶏レバームースです。

リヨン近郊の郷土料理には臓物を使った料理を多く見ることができます。
鶏レバーはそのひとつで、それ以外にも料理表には仔羊の脳みそや仔牛のレバーを使った料理もあります。

エスカルゴ(カタツムリ)を使う料理は、この地方に限らずフランスのブラッスリーならば定番の1皿です。すでに加熱済みのエスカルゴは白ワインと香味野菜で煮て香りを和らげ、香草バターのソースを絡ませて提供されます。

カエルの足を使う料理はオーベルジュの人気料理の1つです。
フランス語でグルヌイユといいます。

たっぷりのバターを使って、揚げるようにカリカリに火を通してから仕上げにパセリとにんにくのみじん切りを加えて仕上げる料理です。

熱々で味わってもらうため、一皿ごとに熱い状態で食べ切れる量のみを提供し、2回にお皿を分けてサーヴィスするのがこの店のスタイルでした。

バターの香りに包まれたパセリとニンニクの香ばしい香りは、営業中常に
調理場いっぱいに漂っており、今でも同じ香りを感じると当時のオーベルジュの調理場の様子を一瞬で思い出すほどです。

だから私にとって、バターの香りは当時の緊張感や自分自身を自然に奮い立たせる香りに直結していると言っても大げさではありません。


そして決して忘れてはならないジョルジュ・ブラン氏の代名詞ともされているブレス地方の地鶏、ブレス鶏を使った料理はこのレストランのスペシャリテです。

土地に愛されるブレス鶏

ブレス鶏とは、ジョルジュ・ブラン氏のレストランのあるアン県を含む、
3つの県で飼育されるフランス中東部、ブレス地方の地鶏のことです。

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しかしブレス地方で飼育された鶏すべてがブレス鶏と名乗ることはできません。ブレス鶏と名乗るためには、ブレス鶏の生産に関する規則を守り、伝統と経験により確立された飼育管理方法に基づいて生産された鶏でなければならないのです。

【引用:土地がはぐくむ風味-ブレス鶏(フランス)】
https://lin.alic.go.jp/alic/month/fore/2005/mar/gravure.htm

環境、餌、飼育期間の長いブレス鶏は、人で例えるならアスリートのような筋肉質な肉質です。

歯ざわりの心地よさに、脂の香りは健全で、骨から取れる出汁は、黄金色に輝くほどに素晴らしく美味しい澄んだ味わいを生み出します。

そのブレス鶏を使って提供されるオーベルジュの料理は2種類あります。

一つは伝統的な調理法でフリカッセ(素材に焼き色をつけて軽く煮込む料理)と呼ばれるクリーム煮です。バスマティ米のピラフと提供されます
(Poulet de Bresse à la crème 〈mere blanc〉, Riz Basmati と上記の料理表に記載されています)

もう一つは、内蔵を取り除いたブレス鶏を丸ごと串刺しにしてレストランの入口に設置してある大きなロティサリーで丸焼きにして調理されたブレス鶏のローストですこちらは、じゃがいものピューレとサラダの付け合せと共に提供されます。
(Le poulet de Bresse Rôti, à la Broche 上記の料理表に記載されています)

大半のお客さんはこのブレス鶏を味わうために、近隣の村や街からはもちろんのこと、時には国境を超えてわざわざブレス鶏を食べに来るほどジョルジュ・ブラン氏のレストランと言えば、このブレス鶏の料理なのです。

オーベルジュではブレス鶏の下準備、仕込みの調理をするのは決まって
シェフか二番手の若い料理人が行っていました。

シェフが調理場に着いて1番初めに仕込むのはブレス鶏のクリーム煮とブレス鶏のロースト。

この2つのブレス鶏の料理は、営業前の仕込みの時点でほとんど調理を終え、営業中は温め直して提供されます。

営業中のオーベルジュの調理場の印象的な香りが、カエル料理のにんにくとパセリの香りなら、仕込みの時に私の鼻に届く印象的な香りは、調理されるブレス鶏の皮がパリパリに焼かれる際に漂う香ばしいバターの香りでした。

ここジョルジュ・ブラン氏のレストランに限らず、フランスではこのブレス鶏を使った料理をブラッスリーに限らず、数多くのフランスの星付きレストランで調理されるほど、フランスで特別な地鶏がブレス鶏なのです。

オーベルジュで働いていた時は、ほとんどこのブレス鶏に触れる機会はありませんでした。

ただ、そのブレス鶏を調理する時に聞こえてくる音、香りはここジョルジュ・ブラン氏のレストラン、ランシエンヌオーベルジュで過ごした時間が一番印象的に私の脳裏に焼き付いていることは確かなことです

そして今でもブレス鶏に触れるたび、オーベルジュで過ごした時間を愛おしく思い返すのは、私にとってここで過ごした時間が特別だからだと感じているからだと思います・・・。

それでは今日はここまで❗

続きは次回❗

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