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もう会うことのできない小さな家族

我が家には2匹の愛猫がいる。
オスの9歳と7歳の実の叔父甥となるのだが、私はお兄ちゃんと弟と呼んでいる。
離婚した元夫の実家の庭に現れた上の子は目に膜が貼ってしまった状態で、このまま放っておいたらすぐに死んでしまうのではないかと保護をしてもらい迎えに行った。野良とは思えないくらい人懐っこくてすぐに我が家のアイドルとなった。
下の子は上の子の兄弟猫が産んだ子で、お母さんそっくりの毛色でメスと見間違えるほど可愛くて小さな体をしていた。子離れをさせるために母親から猫パンチをくらい、顔から血が出ていたところを保護した。
離婚した今は2匹を離す事が出来ず、私が引き取って育てている。

そんな家の兄弟に、実は真ん中に女の子がいたのだ。

雨の多い梅雨の頃、職場のゴミ捨て場のところに小さな猫がいると同僚から聞いた。当時の職場はいろんな飲食店が入るビルの中のパン屋で、ゴミ捨て場には多くの飲食店から出る様々な食材の残りが捨てられている。
ご存じの方もいるかも知れないが猫がネギ類を食べると中毒で死んでしまう場合がある、いつその子がネギを口にしてしまうか心配でならなかった。

大雨警報が出ていたその日、居ても立っても居られずゴミ捨て場に向かったパンを出すとひょこひょこ出てきたのは500gもないくらいの小さな子猫だった。このままここにいても良い未来なんて無いと、そっと抱き寄せて家に連れて帰った。
先住の猫の餌を出してあげると、どこかの動画でみたような『うまうまうまうま』と声を出しながら完食し、寂しかったのか私や先住猫を追いかけて過ごした。本当は病気も心配だったのだが、あまりにも悲しそうに鳴くのとお兄ちゃん猫も優しく迎えてくれたこともあって、同じ部屋で過ごしていた。
お兄ちゃん猫の名前が八兵衛だから、妹の名前は八重にした。

八重はその日のうちに病院にも連れて行って、問題なさそうだと言われ家で自由に過ごさせた。思いっきりご飯をがっついた後に吐いて心配をさせたが、それ以外はお兄ちゃんを追い回して走り回ってよく寝ていた。

順調だと思っていた4日目、八重がご飯をたべなかった。
元気もなさそうだと直ぐに病院に連れて行くと猫風邪だといわれた。
注射を打ってもらって、大事を取ってお兄ちゃんとは別の部屋で寝かせた、鼻が詰まってしまっているのか呼吸がしづらそうだったので、何度も拭いてきれいにしてあげた。

5日目、今日も元気のない八重を心配し水も上手に飲めていないようなので病院へ連れて行った。自転車しか無い私は八重を小さなカバンにいれてカッパを着て病院に行った。
その日も注射を打ってもらって家に帰って柔らかいおふとんで寝てもらった。
お兄ちゃんとの接触を避けるため、ゲージを買って入れてあげた。

6日目、ほとんどご飯を食べられなくなっていた。うちに来てすぐ勢いよくご飯を食べていた八重と同じ八重とは思わないくらい弱っているのがわかった。身体を触るととても熱く、熱があるのだと思った。
その日も病院につれていき、注射と水分の多いチュールを食べさせてもらって家に帰った。

7日目、弱った姿が痛々しく見ていられなかった。
お兄ちゃんが来てもほとんど動こうとせず、ゲージの中の布団でずっと寝ているばかりだった。

そして8日目、パートから帰ったらすぐに病院に連れて行こうと家に帰ると、冷たく動かなくなっていた八重を見つけた。
八重はゲージの中のいつもの布団の上にいた、間に合わなかった。

それからどれだけ泣いたかわからない、どうしたら良いかわからずとりあえず病院に電話をしたことだけは覚えている、気がついたら旦那が帰ってきていて一緒に泣いた。

八重は多分保護したときにはすでに風邪を引いていて、小さな体では耐えることが出来なかったのだろうと、野良猫の平均寿命は2年と聞いたことはあるが、それは事故やカラスだけが理由じゃないとわかった瞬間でも合った。

小さな八重は小さな箱にきれいに入れて、たくさん食べていた餌とチュールと一緒にお寺で供養をしてもらった。今は一匹で寂しくないようにペットの共同墓地に納骨をしてもらっている。

保護なんてしなければよかったと思ったこともあったけど、保護しなかったら冷たい雨に打たれて寂しく外で死んでいたと、短い時間でも人間の優しさに触れることが出来てきっと幸せだったと信じたい。

ある日沢山荷物を抱えて家に入った時、ふと足にふわふわとしたものが触る感覚があった。八兵衛かなと思ったが荷物が多くて足元がよく見えないし八兵衛はリビングに居るはず。不思議に思っているとまた触る感覚があった。大きさから言ってこれは、たぶん八重だ。

それからは一度も八重が足元をうろつくことは無かったが、きっといつまでもメソメソしていた私に“今はもう元気だよ”と会いに来てくれたのだと思う。すぐにリビングに行って八兵衛を抱いて泣いた。

八重は本当に小さくて可愛かった、小さな声で鳴いてお兄ちゃんに甘えてくっついて寝ていた姿を今でも思い出す。8日間しか一緒に居られなかったとしても、八重は大切な家族であった。
どんなに大切に暮らしていても猫の寿命は人間よりは短い、可能な限り長生きをしてほしい、生きている間は幸せだって感じてほしい。
そう思いながら今日も一日安全に過ごせるように、兄弟の待つ家に早く帰れるようにおかーしゃんは頑張ります。


うちに来た日
遊び疲れて膝で寝た八重

よく虹の橋を渡ってまた会いに来るとは言いますが、もし八重を見かけたら教えてください。迎えに行きます☺︎

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