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月が綺麗だと思ったら

今年は暑い。
とにかく暑い。
いつもは夏の終わりを感じると
ひとりセンチメンタルになるのに、
もう、とにかく早く暑さとサヨナラしたい。

夫とふたりの生活になって
お休みは家でのんびりが多くなった。
それは年齢的なものなのか、
いやはや元々の性分か。
同じ屋根の下で暮らしていても
仕事がある平日、
早起きする私は夜が小学生並みに早く、
逆に夫は夜ゆっくり過ごすリズムで、
一緒にいるのは朝の1時間と夜の1時間くらい。
だからふたり揃ってのお休みは
とにかく家でダラダラ過ごす。
興味があることも全然違うから干渉しないけど、
見渡せるワンフロアの中で、
テレビを見たり、本を読んだり、
料理をしたり、昼寝をしたり、
お互いの様子が見えるだけですごく落ち着く。
ちなみに昨日の夜は『8時だよ全員集合』を見て
「くだらないのに笑っちゃうよね。懐かしい。」って、ふたりともケタケタ笑っていた。
実はその時、
椅子に座っていた私は視線を上げて
綺麗な月を見ていたんだな。

いつだったか空を見上げて
「月が綺麗だよ」と言ったことがある。
すると夫に「夏目漱石はそれに『愛してる』って意味を持たせたこと知ってる?」と聞かれた。
こういうとこ、
ほんとズルいのよ。
自分は「愛してる」なんて
一度も口にしたことないくせに(私もない)
こんな話をしてくれる。
こういう瞬間がすごくあったかい。

これは、英語教師をしていた夏目漱石が
『I LOVE YOU』を訳させた時の
エピソードらしい。
私は照れくさいのと、
言葉の持つ意味の深さに、
ちょっと簡単には口にできずにここまで来た。
だから
「じゃあ、自分だったら『愛してる』って言葉を使わずに何て訳す?」って投げかけてみた。

私は中学1年生の時に
初めてお小遣いで買ったレコードが
オフコースの『I LOVE YOU』だったとか
好きだなと思った人のお誕生日が9月だったとか
ひとりいろいろ考えた。
いつも気持ちをきちんと伝えたいと思うけど
『言葉にできない』っていう歌を聴いた時、
一本取られた気持ちになったんだよね。
それでも私の言葉でどう伝えてみたいかなと
ひとりでニヤニヤしていた。

夫は多くを語らない。
だけど、
長女が生まれた時に「どうかな?」と提案してくれた名前に、心をぐわーんと持っていかれた。
そして、次女が生まれた時も全く同じように。
いつもあまり表現はしないけど、
ほんとはきっと私と同じように
ひとりでニヤニヤしているんだと思う。
「なんだよ、もっと出していいよ」と思ったり、
「このままの感じがいいな」と思ったり。
今でも敬語でやり取りしたりもするのは、
変わらぬ尊敬があるからで、
私たちにとって対等を阻害するものじゃない。
むしろ距離を縮めてくれているかも。

お互いを大切に思う
温度を感じながら過ごしていることが
きっといいんだろうね。

月が綺麗だと思ったら、
今日は中秋の名月だって。

そういえば大河ドラマ『光る君へ』でも
道長とまひろは月を見上げるシーンが多かった。
きっとそんなふうに過ごす人が
たくさんいるんだろうな。

昨日の続きを話せるかなぁ。

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