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我が祖父の想い出【なぜ私が脳内だけエロいヒトになりしか】



ひょっとすると、私が脳内だけエロいヒトに育ったのは、やたらとブラックミュージックとフランス性愛小説ばっかり好む我が母のせいというよりも、そもそもの我が母の父親=我が祖父のせいであるのかもしれない。



わが祖父は50歳前というすでに初老の頃に徴兵されたのでまさかの明治生まれでなおかつ戦争体験者である。しかも我が母は祖父が60歳前に作った末っ子である。58歳だかその辺りに祖父が祖母に産ませた子が母である。

その上祖父はちょうど100歳まで生きて役所から100歳の表彰状を貰ってから死んだので、私が10歳のときにはすでに90歳超え、私が20歳くらいの頃に100歳丁度で死んだ。

明治生まれの偏屈頑固じじいであった。

「ねえおじいちゃん、おじいちゃんって神様に仕える牧師様でしょ?死んだら人ってどこに行くの?」

って孫の私に尋ねられると、

「ハン!!!!まだ死んでもいないのにわしがそんな事知ってるわけあるかい!!!!」

って聖職者にあるまじき事を言い捨てる様なジジイよ。

そんで、日本全国の教会をまとめる会合に最長老の牧師として参加して、誰か若者が、前例が無い何かを提案したんだけど中堅と長老が皆んな大反対で、そのうち誰かが「前例が無いからそれはダメだ、よし、最長老のあの方に聞いてたしなめてもらおう」ってなったときに、たしなめるどころか、最長老のくせに

「前例が無いからダメだと?意味がわからんな。前例がないからやってみればいいではないか、そしたら前例が出来るなぁ、ヒャッハッハッハ!!」

みたいな発言して他の長老聖職者全員を困らせるようなじじいであった。

ちなみに私の家庭は父方も母方も、下戸な上に、親戚の飲み会などでもすくなくとも子供の前ではエロいことは一切いわないようなまじめな人々だ。

だからもちろん祖父も私にも一言たりともいやらしいことなど言わない真面目な人であった。

明治生まれのくせに長身で痩せ枯れた、骨太の、ザビエルハゲの面長の眼鏡かけた皺皺のじじいである。

しかも毒舌。

が。

自分でもなにがなんだかよくわからないのだが、

私はこのザビエルハゲのじじいが好きであった。

もっというと、ちょっとプラトニックラブ的な感じでほんのり恋してたのかもしれない。

もちろん変なことはなにもなく、

ただ子供の頃、テレビの相撲を見ている祖父のザビエルハゲを後ろからペシペシ叩いたりしていたり、十代になってからは祖父が語る棟方志功とか珍味とかの話をほーへーって聞いているだけなのだが、なんかこう、自分でもその時の自分の感情がなんなのか分かってなかったのだが、今になってみるともうあれは初恋だったのではないかという気がするのである。

せいぜい祖父が私に多少でもエロい事を言ったのはただの一回である。

たぶん私が13歳か14歳位の頃だ。

夏のお祭りか何かで、祖父の家に遊びに来て、私は長い髪を片側に垂らして、ノースリーブの服にスカートを履いて祖父の家に行った。

そしたら祖父に廊下で出くわして、祖父は久々に来た私をちょっとびっくりした表情をしたあと、上から下まで射る様なちょっと怖い視線でじっと私の全身を眺め回した。

そして黒い浴衣を来た長身の90代の爺さんは一言、

「そうか、マヨコ、お前はもう女になったんだな」

って普段信徒の人への説教で鍛えてる変に深みのある大きな声で真顔で私の目をまともに見ながらキッパリ言い切って、去っていった。

私は(!?!おじいちゃんそういう事言う人だったの?!しかもこれちょっとセクハラっぽくね?!)みたいな感じで動揺して言葉をなくして背中と足の裏に汗をかいた。

それだけ。それくらいかな。

ただちょっとなのは、祖父の娘たちつまり私の母や伯母達なんだけど、ふだんは祖父のことを「あの皮肉屋のザビエルハゲめ!」とか毒づいてる割にね、どーうもワケノワカラナイ事で祖父を巡って喧嘩を繰り返すのよ…。しかも祖父の後継は次男だったんだけど、次男の嫁もその喧嘩に巻き込まれてね。

1番ヒドかったのは、祖父が99歳くらいからマダラにボケ始めてついに介護を必要とかになった時ね、

伯母2人と我が母と次男の嫁の4人が、祖父の介護をしたいと、祖父を取り合って大喧嘩するというワケノワカラナイ事件があったのよ。

誰に介護を押し付けるかではないの、皆んなが爺いを介護したがって爺いを獲り合う…

祖父を介護できる権利を勝ち取りたいと、自分がお爺さんの介護をしてあげるんだから!と初老や中年のおばさん4人が号泣したり叫んだりしながらギャーギャーケンカするわけ。

なんかこうこれはワケノワカラナイ状況じゃない?

「たしかにおじいちゃんはもう正気でなくなってるけど!はじめておじいちゃんは私に優しくしてくれるの!私を頼ってくれるの!私の事が誰だか分からなくてもいいの!私が介護したいの!」

↑みたいな事を涙を流しながら言い合う中高年の女達…変くね?!?!なんかこう、イカれてるよね?!?!

そして既にボケてたまにしか正気に還らぬ祖父はそいつら4人の娘たちを無視して愉しげにちょっとエロい長唄とかを大声で歌い続けているという…

そんで、嫁を盗られた様になった教会の後継ぎの次男坊は、(郷ひろみ+役所広司みたいな冗談みたいに男前)

「あんなじじい!自宅で介護なんかする必要ない!老人病院にぶち込めばいい!」

とか憎々しげに、続けて

「あんなじじいになんかエロ本でも与えて放って置けばいいんだ!」

私それ聞いて

(エーーッ伯父さんそんな人だったっけ?!なんで突然そんな事言うの?!?!伯父さんがエロとかエロ本とかいうの産まれて始めて聞いたんだけど?!?!しかもなんで?!?なぜあのエロい事など全く言わない祖父にわざわざエロ本?!?!)

って心底ビックリしたけど、なんだったんだろうね、アレ。

信徒の人々も、なんかこう、ザビエルハゲじじいに、恋する様に熱烈にファンになってるお婆さんとか多かったみたい。

私には「女になったな発言」一度を除いて常にちゃんづけで優しく話してくれるいいおじいちゃんだったけど…

私には本性を見せなかっただけで、ひょっとすると相当なエロいおじいちゃんだったのかもしれないなー。今にして思うと。

そして、結論ですが、いま、いい歳になって思うけど、

あの実の祖父を超える大人の男のエロスを醸し出してる男性には会ったことはない様な気がするなぁ。


まぁ、とにかく太刀打ちならんかったよ。

80歳ほど歳上だしね。。。



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