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卵のこと

卵と私という食べ物やさんがある。少々情動を刺激する名称ではあるが、その件についてここでは触れない。

卵である。

子供の頃、偏食(というよりは好き嫌い)が激しく、特に魚介類が嫌いだったので、家では私だけ卵焼きか目玉焼きと漬物にごはん、とか特別メニューだったりした。
むしろそれさえあれば良かった。

長じて一人暮らしを始めると、経済的状況から好き嫌いなんて言っていられないので、結構何でも食べるようにはなった。
定食屋では焼魚定食や魚フライ定食の方が焼肉や豚カツよりも安かったので、仕送り直前の時期にはそちらを選択した。勿論、もっと安上がりに済ますことの方が多かったので、定食屋での魚系はあくまで定食が食べられる状況での選択である。

自炊をしようと簡易な台所がついたアパートに引越してからは、ひたすら目玉焼き、ハムエッグ、オムレツとか卵料理ばかり作っていた。
卵さえ食べていれば良かったし、何しろ安上がり。
米は実家や親類から送ってもらったりしていたので、腹いっぱい食べられていた。
夜中に腹が減ればもりもりと卵かけご飯を食べて暮らしていた。若い時の意味不明な体力と夜更かし能力は今考えるとどうかしていたとしか思えないが。

今、夕食にベーコンエッグを作ろうとすると家人から待ったがかかる。「飽きた」。
なので一人で暇な昼時にご飯を炊き、目玉焼きを作って食べるのだ。

しかるに卵である。
美味しい醤油と漬物があればなお幸せである。

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