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「芸術はどこまで許されるか」を問うた作品:Black Mirror 第一話「国歌」

Netflixにて配信中。(※配信先が配信を終了、中断していることがあります)

まずこの「Black Mirror」について。現在から近未来が舞台の、ソーシャルテクノロジーで繋がった人々の物語です。一話完結のオムニバス形式。各話45分程度。3シーズン/17話。イギリス。

「トワイライト・ゾーン」や「世にも奇妙な物語」に近いですが、幽霊や超常現象はありません。映画「マトリックス」の世界に近いですかね。

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第一話「国歌」について、これは個人的に傑作だと思ったのであらすじと感想を書きます。ネタバレになっちゃいますが。。

ストーリーの主題は別の所にありますが、ここはクリエイターさんの多いnoteなのでこのレビューでは「芸術はどこまで許されるか」を主眼においてます。

上記の通り近未来のソーシャルテクノロジーに翻弄される話が多い中、実はしょっぱなの第一話がちょっと毛色が違うというw。(SNSも含めた既存のメディアを使ったストーリー)

ではあらすじです。その下に行間を空けて感想を書いてますので、感想を読みたい方はすっとばしてください。

本編をちゃんと観たい方はNetflixで配信しているので、こちらからどうぞ。



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あらすじ




夜明け前、英国首相に「英国公妃のスザンヌ妃が誘拐された」と連絡が入る。
官邸には犯人からの犯行声明動画がネット経由で届けられていて、スザンヌ妃自らが要求を読み上げる様に強要されていた。

その要求とは
「本日午後4時に、英国の全てのTVチャンネルにて、英国首相が豚と性行為をする生放送を行うこと」。
またカメラの台数や撮影方法、スタッフの数なども詳細に指示されていた。

この件は既にYouTubeやTwitterなどSNSで拡散されており、国民は驚きつつもお祭り騒ぎに発展していった。

英国首相は警察など総動員で犯人を特定しようとするものの捕まえることが出来ず、ついに午後4時を迎える。

国民は放送開始前に仕事も放り投げ、自宅のテレビやパブ、病院などの待合室の前に集まり、街には車も人通りも殆どなかった。

放送が始まり、首相は公妃の為に屈辱に耐え、しかし嘆きつつ半ばヤケクソになって行為を始める。お祭り感覚でいた視聴者は最初こそ盛り上がるものの、一人また一人と目を逸らしていく。貴重な映像だと考える人や気まずいながらも観続ける人、首相に同情的になる人など、それぞれの思いで放送を観ていた。

放送が始まって一時間ほどが経過したとき、橋の上で倒れているスザンヌ妃が発見される。
またどこかの家の中では、犯人が首をつっていた。

放送が終わった頃、首相補佐官にスザンヌ妃を確保したと連絡が入る。スザンヌ妃は3時30分に監視カメラに写っていた事から、放送開始前には解放されていたことが分かった。だが街には人が居なかったため、発見に時間がかかってしまったとのこと。

補佐官はスザンヌ妃が解放されたことだけを首相に伝え、他は極秘にした。
首相は妻から電話がかかってくるものの、辱めに嘆き、電話に出ることは出来なかった。

一年後、首相は立ち直り支持率も昨年より上がっていた。スザンヌ妃も平穏を取り戻し、幸せな生活を送っていた。
犯人は芸術家だったのだが、一部の批評家はこれらの出来事を「21世紀の偉大な芸術」と讃え、議論を呼んでいた。

しかし、首相と妻の間は表向きとは裏腹に冷え切っていた。

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感想

誘拐犯の馬鹿げた要求に英国首相は応えるべきか。これは「国の為にどこまで尽くせるか」を意味していて、その立場で考えると見えてくるものがあるんじゃないかと思います。

タイトルが「国歌」となっていて、実際英国国歌の歌詞を見るとなるほど、と思います。

また同時に、この犯人の要求というのが実は「芸術における表現の自由についてどこまで許されるか?」を問うていて、ここも考えさせられます。

芸術という観点からみると、上記「国の為にどこまで尽くせるか」を表現しているのか、またもしかしたら「この国はこれくらい酷い」というメッセージなのかもしれません。表現としては強烈です。傑作といってもいい。

しかしながら「公妃を誘拐し、現首相に恥ずべき行為をさせ、リアルタイムで放送させる」という行為は許されるのか?と考えると表現の自由にもどこかに越えてはならない一線があるのではないか?と思わずにはいられません。

そして「愛国心」と「芸術の表現の自由」、その2つの間で国民がどう思ったのかを考えてみるに、今ネットでよくある炎上や、捏造や偏向報道による過度で尚かつ他人事でお祭り的な反応にも、警鐘を鳴らしている様に捉えられなくもないかな、と。

これらがうまい具合に一つにまとめられてる所に素晴らしさを感じました。

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他の作品も色々考えさせる内容になっています。英国独特のダークさを感じさせる作品ですが楽しめると思いますよ:)

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