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カフェ式モルト 新しい展開

■はじまりはニッカ・カフェモルト

竹鶴のこだわりの詰まったカフェ式蒸溜機を使い、大麦麦芽を100%つかった、珍しいスペックのウイスキー「ニッカ・カフェモルト」。

《前回記事》
創業者:竹鶴の流れをくむ珍しいスペック! 『ニッカ・カフェモルト』|チャーリー / ウイスキー日記|note

このニッカ・カフェモルトは、2013年にヨーロッパ先行発売、2014年に日本でも販売が始まります。
そのスペックの斬新さにおいて、イギリスのスピリッツ専門誌「THE SPIRITS BUSINESS」から、2014年の「THE MOST INNOVATIVE SPIRITS LAUNCH OF 2014」に選ばれています。

ニッカ カフェモルト|商品紹介|NIKKA WHISKY

このようにウイスキーの本場でも、ユニークな発想のウイスキーづくりと評価される一方で、味わいとしても、その後、様々な品評会でトロフィーを含む入賞を果たし、その実力が広く認められています。


■広がる連続式式蒸溜機の活用術

現在、連続式蒸溜機、とくにカフェ式蒸溜機での新しい原酒づくりの事例が出てきています。

◇ロッホローモンド蒸溜所

最近、大麦麦芽100%を、カフェ式の連続式蒸溜機で蒸溜したウイスキーを発売したケースとしては、ロッホローモンドの「ロッホローモンド シングルグレーン」があります。

ロッホローモンドHPより

商品紹介|ロッホローモンド日本公式ホームページ (lochlomond.jp)

ロッホローモンドは、通常のポットスチル、このカフェ式の連続式蒸溜機のほかに、超珍しいローモンドスチルも使っているため、多彩な原酒をつくっている面白い蒸溜所です。


◇サントリー知多蒸溜所

前回の記事で「知多はアロスパス式の連続式蒸溜機」と書きましたが、実は、この度、設立50周年を迎えた知多蒸溜所には、カフェ式蒸溜機が導入されました。

中部経済新聞(2022年6月16日)

一方、サントリーでは、2010年に白州蒸溜所内に、小規模のカフェ式蒸溜機を導入しています。
これは、今回の知多へのカフェ式蒸溜機の本格導入の前に、スモール・スタートしたと位置づけることができると思います。

ちなみに、この白州蒸溜所でのカフェ・グレーン原酒は、限定品以外では発売されていないと思います。(ひょっとしたら、ブレンディッド・ウイスキーの中に入っているかも知れませんが)

サントリーHPより

THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY サントリー

先ほどの新聞記事では、知多のカフェ式スチルをつかった「新しい商品」の発売も示唆されているので、「ひょっとして、将来的に知多・カフェモルトが発売されるのかな?」とか思ってみたり、今後が楽しみです。


■グレーンウイスキーに対する誤解?

グレーンウイスキーは今まで、「縁の下の力持ち」「お料理でいうところのダシ」という位置づけで、モルト原酒を助ける立場という認識が強かったです。

そして、今も基本的にはブレンディッドウイスキーのベースで使用されることが、ほとんどです。
しかし、ニッカ・カフェモルトや、シングルグレーン知多など、連想式蒸溜機からつくられるグレーンウイスキーには、新しい解釈・技術が加えられ、新しいステージへと進化して来ていると思います。

それにしても、グレーンウイスキーは、今まで不当に下に見られていたのではないでしょうか?

グレーンウイスキーは、もともとはブレンディッドウイスキーのベースとして「縁の下の力持ち」的に、モルト原酒に混ぜ合わせて使うため、そのモルト原酒にあまり影響を与えないように、通常はプレーン樽で熟成されます。

プレーン樽とは、すでに熟成に3回程度使われた樽で、あまり木の成分が溶出されません。その結果、熟成後のウイスキーの色が薄くなるのです。

私は、「縁の下の力持ちというサポート的な原酒ですよ」という認識に加え、「スコッチやジャパニーズのグレーンウイスキーは色が薄い」ことが多く、それが「不当に下に見られる原因のひとつになったのではないか」と思っています。


■バーボンはグレーンウイスキー

バーボンや、カナディアンウイスキーは、そもそもポットスチルは使用せず、連続式蒸溜機しか使っていません(例外もありますが)。
したがって、スコッチウイスキーの基準で言えば、バーボンもカナディアンウイスキーも「グレーンウイスキー」です。

当然その中には、優れた商品が、数限りなくあります。

特にバーボンにおいては、法律で『新樽のみで熟成させる』と規定されています。
その結果、バーボンは、熟成環境が暑いということもありますが、どの5大ウイスキーよりも、「色が濃く」仕上がります。
そして、色味の濃さとともに、独特のオーク由来の「バニラの香り」が強く感じられるようになり、バーボンの銘品が生み出されるのです。

したがって、「連続式蒸溜機」=「グレーンウイスキー」だから、「質の高い原酒ができない」というわけではないと思います。

逆に言えば、グレーンウイスキーであってもバーボンのように「新樽」で熟成させれば、バッチリ琥珀色がつきますし、樽の個性が強く表れ、色味も濃い原酒となります。


■グレーンウイスキーの未来

今までも、定番商品ではありませんが、チャレンジングな限定品として、ユニークなグレーン原酒が発売されています。

とくに、サントリーの「THE  ESSENCE  of  SUNTORY」シリーズは、本当に挑戦的なスペックの原酒のオンパレードで、そのスペックを読んでいるだけでワクワクしますね。

サントリーHPより
サントリーHPより

THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY サントリー

今後は、ジュパニーズやスコッチのグレーンウイスキーも、もっと「新樽で熟成」や、「カスクフィニッシュさせる」など、新しい動きもあるのではないでしょうか?

グレーンウイスキーの今後が楽しみですね!

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