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大航海時代と「お酒の発達」

今回はウイスキーの話ではなく、『酒精強化ワイン』の話をしたいと思います。

■大航海時代とは?

皆様、歴史で勉強したと思いますが、おさらいです。

◇大航海時代
西ヨーロッパの15世紀初めから17世紀にかけて、イベリア半島の2国(ポルトガル、スペイン)をその先導者とし、それまでの地中海世界から目を地球全域に向け、主として大洋航海によって、それまで伝説的・空想的領域であった世界の各地が、探検航海により次々に現実に確認されていった時代をいう。
コトバンク

そして、この大航海時代には、アルコールの製造技術が進歩しました。
それは、長い航海でもお酒が腐らないように、保存性を高める必要があったからです!


■酒精強化ワインとは?

シェリー、マディラ、ポート。
皆さん、具体的に何かは知らなくても、フレーズは聞いたことがあるお酒だと思います。
これらは、スペインやポルトガルでつくられる『酒精強化ワイン』です。

ちないに「酒精」とは、何かの英単語の日本語訳なのですが、わかりますか?
(ちなみに私は知りませんでした。)

答えは「アルコール」の日本語訳です。

蒸溜した純度の高いアルコールは「スピリッツ」ともいいます。
英語の「SPIRITS」には、「アルコール=お酒」の意味と、「精神」の意味のどちらもがあります。
アルコールを飲んだら、精神が高ぶる=興奮しますからね!

そこで、アルコールの日本語訳は「酒精」となったと思われます。
うまい日本語訳と思いきや、普段は「酒精」なんてフレーズは、あまり使いませんから、定着はしていないようですね。

話は戻して『酒精強化ワイン』です。直訳すれば「アルコールを強化したワイン」。

本当にザックリで説明すると、具体的な作り方は、
「ワインにアルコールをぶっこんだら」
酒精強化ワインのできあがりです!


■なんでワインにアルコールをぶっこむの?

ワインは醸造酒であり、アルコール度数もそこまで高くないので、劣化しやすいお酒です。
その劣化しやすいお酒であるワインを、「アルコール漬け(正確には混ぜるわけですが)」にして、保存性を高めたわけです!

具体的な、酒精強化ワイン「誕生の歴史」は、こんな感じです。
大航海時代に、スペインやポルトガルが、せっせと植民地の開拓に出かけます。
そして航海先で、「よし、一杯飲むか!」と思って、ワインを飲もうとしたら、「ぐわっ! まずっ!! 何このワイン!?」となってしまったのです。
赤道直下を通る航海では、醸造酒であるワインはすぐに劣化してしまいます。
そこで、アルコールを加えて、アルコール度数を高め、保存性を高めたわけなのです!

◇シェリー酒
スペインの南部で、ワインにアルコールをぶっこんだらシェリー酒。
(正確にはスペイン南部のアンダルシア地方のヘレス、サンタマリア、サンルーカルの3都市を結んだ三角形の内側のエリアです。)
◇ポート・ワイン
ポルトガル北部のポルトという港町で、ワインにアルコールをぶっこんだらポート・ワイン。
◇マディラ・ワイン
ポルトガルのマデイラ諸島で、ワインにアルコールをぶっこんだらマディラ。

「航海に持参」するために、アルコールをぶっこんだので、酒精強化ワインは、港町で発展したお酒となります。

そして、このシェリー・ポート・マディラを、3大酒精強化ワインと言います。

そこにマルサラを加えると、4大酒精強化ワインとなります。
マルサラは、イタリアのシチリア島・最西端のマルサラの町で、白ワインにアルコールをぶっこんだ酒精強化ワインです。

これもやはり大航海時代に、港町でつくられたものなのです!


◾️酒精強化ワインに入れられたアルコール

酒精強化ワインに入れられたアルコールですが、これはワインを蒸溜して、アルコール度数を高めたもの(熟成させていないブランデー)でした。

ワインは、当時のヨーロッパで広く飲まれていましたが、劣化しやすい醸造酒でした。
このワインが蒸溜技術と出会うことで、アルコール度数を高めた蒸溜酒が生まれ、保存性に優れていることが発見されました。

この保存性の高い、蒸溜されたワイン(無色透明)を、樽で保管していたら、木樽熟成が進みブランデー(琥珀色)となりました。

でも、ブランデーはワインとでは、醸造酒と蒸溜酒なので、かなり味が異なります。
そこで、この保存性の高い、蒸溜されたワイン(無色透明な、熟成させていないブランデー)を、通常のワインに加えて、味わいはワインに近いけど、保存性の高い酒精強化ワインが生まれたのです。


■酒精強化ワインの味わい

ワインが腐らないように、保存性を高めるために、誕生した「酒精強化ワイン」。
いわばワインの代替品だったわけですが、『普通のワインより、こっちの方が美味しいんじゃね?』という声が上がるようになります。

まず、アルコール度数が高く、「コク」があります。

また、ワインと違い「酸化熟成」が可能なので(ワインでは熟成でなく劣化となることが多い)、それによって、酸味をもたせた商品も開発されるようになります。

そして、ワインと同様に、「ブドウ品種」によって、甘口の商品にもすることもできたのです!

さらには、「製法」によって甘さを変えることもできました。

マディラはワインの発酵が終わってから、アルコールを添加します。発酵が完了し、糖分がアルコールへ転換していますから、基本的には辛口となります。

ポートはワインの発酵途中で、アルコールを添加します。発酵が途中でストップしますから、アルコール転換前の糖分が残り、基本的には甘口となります。

こうして、「保存性を高める」という必要性に迫らせてつくるようになった酒精強化ワインは、独自の進化をとげ、「飲みたい!」という嗜好品として、現在も世界各国で楽しまれているのです!


■まだまだある大航海時代に発展したお酒

このような酒精強化ワインとは別に、他にも「大航海時代」に発展したお酒があります。
また別途で、記事化したいと思います!


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