💁📚50【マリアージュ•ブラン】決めつけなくていいよね 948
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マリアージュ•ブラン
砂村かいり(2020年カクヨムWeb小説コンテストで2作同時受賞し翌年デビュー)
PHP研究所 325頁
2024/10/22
結局のところ「恋愛小説」なんでしょ?と思って読んだら、違っていた。
でもそれが、期待はずれではなくて、期待以上だった。
高校時代のミニ同窓会で、久しぶりに再会した奈穂と尊は結婚する。
ふたりともそれ以前に、別の人との交際は経験している。
ただ2人の間に恋愛感情や肉体関係はない。
この国では同性の恋人同士の結婚はできないけれど、友人でも異性なら結婚することに支障はない。
奈穂は在宅でフランス語を教える個人事業主。
尊は花屋のアルバイト店員。
同居している。
結婚指輪もしている。
記念日にはプレゼントを贈り合う。
家事は分担。
寝室は別。
たまに同じベッドで添い寝することはあっても、性的に体を触れ合わせることはない。
尊は、ブラック職場、致命的なミス、パワハラ後メンタルダウン。
仕事ができないのに被害者感情を募らせる新人店員。
尊に心を寄せ、妻である奈穂に嫉妬する男友達。
常連客を蔑ろにしてでも、大きな取引先を獲得したい花屋の店主。
尊を誘って独立を企む先輩。
奈穂には、コロナ後に孤独死した職場同僚がいる。
結婚を望まれた男性との別れ。
生徒からの奈穂へのPC越しのセクハラ。
別の生徒のモンスター家族。
妹達の結婚。
アプリ婚を隠して見栄をはる友人。
子持ち友人との溝。
性病。
気を許していた年下男性からの性被害。
箇条書きで書き出してみると、奈穂も尊も「いまどき」の問題に遭遇している。
お互いを心配させたくなくて黙っていたり、ふたりの間を微妙に振動させたり、冷たい空気も流れたりする。
性自認に関して、奈緒が尊には内緒で交流会に参加する。
参加者の中には、性自認が明確な人もわからない人もいる。
揺らぐ人もいる。
同じ自認を持っていても、程度が違う人がいる。
団体の主宰者は言う。
ある事件がキッカケで、ふたりは改めてお互いが必要であることに気づき直す。
マイノリティとして、恋愛や性愛はなくてもふたりで生きて行くことを新たな気持ちで選ぶ。
握手やハグくらいはするかもしれないけれど。
実際に多様かどうか許容されているかどうかは別にして、世の中には多様性という言葉が溢れている。
名前がつかないことや、名前があっても人によって大きく程度が異なることがゴロゴロしている。
人と違うことは、価値のないことでも恥ずべきことでもない。
本来ならマジョリティかマイノリティかの二択ではなく、各人が個々に特有であるはずたから。
いろんな意味でのマイノリティである奈穂と尊は、「グラデーションのどこかに立っている」ことに、性自認に限らず安心できたのだと思う。
ふたりの間で心の安寧を得られたことに羨ましさを感じる。
婚姻下でのセックスが「夫婦関係」「夜の営み」「オツトメ」などと表現されることがある。
たとえそこに思いやりや愛情や慈しみがなくても、場合によっては憎しみ合っていても、婚姻下であるから「偽装」と見なされることはない。
夫婦間レイプでなければ。
「マリアージュ•ブラン」は、英語では「シェイム•マリッジ(恥ずべき結婚)」。
他に目的があり結婚を「装う」こと、「偽装結婚」。
奈穂と尊はお互いを好ましく愛おしく想い、かけがえのない相手だと認識することができた。
ふたりの間に性愛が存在しないからといって、当事者でもない赤の他人が「普通じゃない」とか「偽装結婚」だと断じることはできない。
体を開けなくても心を開ける関係、心で繋がっている関係も素敵じゃないですか。
「そんなことを言うから少子化が進む」なんていう感想は、笑っちゃうくらいにお門違い。
結婚は子どもを増やす為だけのシステムではないし、人は皆グラデーションの途中に立っているのだから。 (11/24)
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