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#06 「プレイタイム」にありがとう の会

 春から今に至るまで、観劇スタイルって週ごとに公演ごとにやり方や姿勢が変わってて、この7/12にシアターコクーンで行われた「プレイタイム」、そしてその前日のシアタークリエ「TOHO MUSICAL LAB.」はまさしくその過渡期の作品だったと思います。どちらも劇場を主語とし、芝居や興行の総称の意味ではなく、場所として建物として物理的な存在としての“舞台”とは、に目を凝らした作品でした。

 読み始めてすぐにあまりの気恥ずかしさに後悔した、鑑賞直後の私の感想がこちら。公演を見ながら、メイを乗せたトトロや、ピノキオを胃袋で飼いならすクジラや、きっとどこかで絵本で見た大きな大きな何か、そんなのを思い出しました。劇場は巨大なバケモノ。客席と客はバケモノの腹の中。画面も壁も天井も組織の一部で、粘膜の向こうでさらに細やかな臓器がそれぞれの働きをし、神経が監視し、血液が流れ、腱が引っ張り合い、息を吸い、吐き、伸び縮みする。その呼吸の風を感じながら、なんか泣けちゃったんですよね。息吹きが、美しく尊いものだと、初めて知りました。

 公式見たら「シアターコクーンが目を覚ます!」って最初から言ってましたね!当方がダーダーにザルでした!

 で、こんな大きく複雑で繊細な演目にあたって、演じているのは「あなたが私のことを好きだというのはわかっているけど、きっと幸せになれないし長くは続かないし、でもあなたがどうしてもというなら私にそのつもりはないことはないですよ」な、クッッッッソめんどくさい恋愛模様(しかも男女どちらも)で、もう頭抱えますよ。これだけの壮大で大掛かりな組織が支える物語が、腹も膨れない、けれど誰にでも当てはまる普遍的なメロドラマ。と、劇場が湛える空気と重力の隙間をスルスルと流れる森山未來さんのダンス。ちっぽけだけど世界より重く苦しい恋につぶされそうな、黒木華さんのコロコロと悲痛な声とたたずまい。わかる人に伝わればいいのですが、黒木華さん演じる女は、CLAMP先生「CLOVER」の織葉のようだなと見ながら思ってました。「しあわせになりたい」と歌いながら幸せになれなかったモニュメントの女です。

 今回のPodcast、および、恋愛の話になると途端に照れ臭くなる私はこちらです。杉原邦生さんの流れで木ノ下歌舞伎の話もしましたが、激烈楽しみにしていた5月の木ノ下歌舞伎の新演目も中止になってしまいました。5時間半という超演目。いつかきっと拝見できる日を楽しみにしています。

 過去と未来の回はこちらになります。なんか最近すごく忙しくないですか?自粛期間に揺り戻しというわけでもなく、私も、私の周りもやけに忙しい気がする。成長してなければ負け、みたいなことが当たり前の日々に反して、全員が歩みを止めて「寝てテレビ見てたら褒められる」ラッキーデイズなあのころは、あれはあれでほっとする時間でもあったのですが、そういう気持ちの方はほかにもいますでしょうか。



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