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WORK #16 / 2021.9

 何にでもスイッチがあるんだと思う。やる気をオンにするのがスイッチならば、オフにするにもスイッチが必要だ。たとえば掃除。たとえば本を開くこと。仕事中の休憩のような一呼吸ではなく、仕事の世界からぐんと遠ざかるスイッチが自分にもある。それを知っていることは大事だなあと、久々に本を読んでアホのように思った。
 そんな風にあれこれ考えていると、いつも「仕事対自分」の図式が出てくることに気付く。就労対プライベートと言うべきか。それはとても自然なことだと思うし、同時に多少の違和感も覚える。仕事、就労することは自身のライフの対立項なんだろうか。対立とまではいかずとも、自身とどこか隔絶しなくてはならないものなのか。そうじゃなくね?と言っておきながら「ずっと仕事のこと考えちゃってさあ〜」と愚痴をこぼしているからバツが悪い。なんか分かるけど、なんか分からん。曖昧な感覚を抱え続けて、モヤモヤとしてしまう。

 友人とそんな話になった。
「ワークライフバランスっていうじゃないですか」
 おもむろに彼女が握り拳を二つ作る。天秤のように拳を動かして、「こういうことですよね」と言った。右手がワークで、左手がライフらしい。
「この両方とも大事にしましょーって考え方、就活でめっちゃ聞いたんですけど」
「ほお」
「私この捉え方がおかしいと思って。ライフとワークってこうじゃないですか?」
 左手を開き、右の拳を包み込む。
「ワークはライフに包括されてる。一部なはずでしょ」「おおお」
 確かに、と感銘を受けた。そうだよなあ。仕事は私の全てではないけど、仕事をする私は私に欠かせない一部だ。裏表でもAとBでもなく、一部。天秤にかけることではなく、ライフという円グラフの中の一つなのだ。明快な言葉にできなくてもどかしいが、そういうことだよ、と思った。これを手のひら以外でどう表せるんだろう。彼女と会ってからずっと考えている。

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