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『竜とそばかすの姫』観ました

 本文は映画『竜とそばかすの姫』の雑感です。内容に触れるため未鑑賞の方はご注意ください

 IMAXで観ればよかった〜〜〜!!!! とかなり序盤から思ってしまうレベルの作画と音楽でした。つまり最高だった。IMAXだったらもっと臨場感ある映画体験できたかも……これから観る人はIMAXをおすすめします。

 細田守監督でインターネット空間といえば誰がどう考えても『サマーウォーズ』なんだけど、じゃあ結局サマーウォーズの焼き直しなんですか? というと全然違いました。確かにサマウォも竜そばも「どこにいても繋がれる(≒あなたはひとりじゃない)」はインターネットの重要な要素だからテーマにも組み込まれてるんですけど……決定的に違ったのは敵ポジションにいたのが「生身の人間かどうか」だと思います。

 サマウォの敵ポジはラブマシーン、つまりAIでした。人に造られたものではあれど、人そのものではないのでラブマシーンに他人を傷つけようとする意思はありません。搭載された成長アルゴリズムに則って動いた結果が人を傷つけたとしても、それはラブマシーンの意思ではない。けど、竜そばで共通の敵ポジにいた竜は生身の人間で、だから明確に何らかの意思を持って攻撃しているのが、ベルにも伝わった。ただこの敵ポジというのも厳密にはちょっと違くて、周りの顔も本名も知らない人たちが敵にも味方にもなりうる空間が「U」だったんですね(逆に「OZ」は生身の人間がラブマシーンに対抗すべく自らのアカウントを預けてくれる世界でした)。

 このUの世界観は現実のインターネット空間と非常に似ています。見知らぬ人からの誹謗中傷、「unveil」の概念、それからジャスティンたちの存在。誹謗中傷はベルだけでなく、同じく歌姫だったペギースーにも向く。中身は本人曰くベルと同じ普通の女の子ですが、「BBA」などと全く根拠も何もない言葉を投げられていました。これは現実で問題になっている誹謗中傷と同じ。

 そして「unveil」は匿名性を排除する、いわゆる「特定」。Uにいる人々はunveilによって匿名性がなくなることを怖がっているし、だから気に食わないやつがいればunveilすることでUを追放しようとする。つまり、匿名性がUにおける自己防衛システムであり、これによってちょっと気が大きくなることで他者への攻撃性が高まっていると考えられます。実際のインターネットと同じだ……

 さらに厄介なのが、unveilを使えるのがジャスティンだということ。Uの秩序を守るため、と正義を掲げた集団はさながら「特定班」といったところだと思います。竜の正体を嗅ぎ回り、unveilの機会を虎視眈々と窺うこと、それが「民意」であり他でもない「正義」であるとジャスティンは信じて動いています。結局正体は恵と知の父親(?)でしょうね。Uでも現実でも明文化されていない「ルール」とやらに異様に厳しく振る舞うあたりとか、最後すずを殴れなかったところとか。全く見ず知らずの少女だったらあんな暴力親父が殴れないわけないんですよ。だけどunveilの瞬間、ベルの正体をいちばん最初にいちばん近くで見たのはジャスティンだった。だからすずに見覚えがあったし、殴れなかった。

 なんというか、現実の中で日々起きていることが見事に物語世界に落とし込まれているなあ……と感じました。けどちょっとストーリーの盛り上がりには欠けるか? 途中とか完全に美女と野獣だったし、如何せん要素が多くて冗長だった気もします。そこは映像美と歌でねじ伏せた印象……でも共感のしやすさは個人的にはサマウォより上でした。

 虐待に遭ってた2人の結末が不明なまま終わった点については賛否あるみたいだけど、父親は晒されてるし合唱のおばさんも然るべき機関に連絡してくれているので、たぶん保護されているはずです。そう思えるだけの描写はあったので。結論良い映画でした。

 最後に言わせてください。監督、相変わらずケモノ好きだな!!!!!!

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