見出し画像

7.文化政策とケアの考え方


 
 今日も演劇とは少し離れてしまいます。

「子ども」「高齢者」「シングルマザー」を対象としたアート事業(主に参加型で、気軽に楽しめるもの)を、行政に求められることが増えてきた。
 日本の公共劇場の大部分が、指定管理者である財団が運営されていて、そのほとんどは市の外枠団体です。つまり部長以上は行政からの天下りで、方針などは、市の文化部、あるいは教育・スポーツ関連の部署が決定します。そのせいか時折「はぁ?」という、あまり文化芸術の振興に関係のないようなことも出てきてしまいます。どんなプロセスで決定したのかわからないこと、例えば「子どもの育成」で、他地域と事業費の持ち出しで交流するように、とか「とにかく子供事業をもっと!」という要望が、特にここ数年増えてきました。結局は、あまり展覧会や、劇場に足を運んでこなかったのだなと、考えてしまう。誤解されると困るが、趣味嗜好について物申しているわけではない。外枠団体の職員としては、行政のアドバイスが、「お財布を握られている」ものからの力関係があるので簡単に覆せるものではないことが多いからだ。そして的外れな政策が、結局のところその施設の価値を下げ、スタッフの疲弊のもととなってしまう。
 公共劇場は、なんのためにあるのか、と言った問いかけにあなたならどう答えるのか?一流の作品を鑑賞する場であって欲しいし、気軽に芸術に触れて、体験できるワークショップを楽しめる場であって欲しいし、文化政策を考える機会を提供してくれる場であって欲しい。作品をアーカイブすることの意味を考えられる場でもあって欲しい。市民が主体でありつまり市民「サービス」は「人を幸せに導く」ことの中でのアートの役割を考えていくことだと思う。幸福論と言うのは時代の流行に左右されるし、生活の中で、その優先順位も決定していく。今のような非常に緊張を伴う日々の場合は、医療や流通が最優先されるべきと言える。 

 昨今の社会の流れで「これはないよな」と思うことがある。「生産性」という言葉である。元々は経済分析に使う統計用語で、翻って、マネジメントの一つの考え方にも応用され「このタスクをこの人員で、この作業時間で終える」ことが生産性としてどう捉えていくべきか、などにつながっていく。ある意味、従来までのデータを採取し、分析していく中で、プランを組み立てるといったプロセスが何もなく、あくまで前年度ベースで進めることの多かった組織にとっては、有益な考え方であると思う。しかしながら昨今の風潮で問題なのは、福祉や教育、日常生活といった、それ自体が生産性を目指すものではない領域にまで生産性を求める風潮である。


 「政策」「分析」がもてはやされる風潮の中、「芸術文化」という、最も生産性という言葉から遠いエレメントで仕事をしているところにも、なんとなく生産性を求められようとしているキライがある。そのことはとても残念だ。昨今の風潮にある通り、インフラの優先順位としては高くないアートではあるが、だがしかし、人の営みを幸せにするということに、今以上注力していくことはできる。


 ところで、私の住む街の大学に公共政策大学院という学び場があり事業課の仕事に少し息詰まっていた私は、数年前に試験を受けたところ合格することができた。合格を職場におずおずと願い出たところ、ご理解いただけて進学することとなった。おかげさまで無事卒業することができた。
 「公共政策学」の授業で最初に教わったことは「公共政策とは、異なる価値観の持つものを調整すること」だった。公共施設での文化政策はさしずめ「異なる団体の意向を調整する」ことになるのだろうか。行政、NPO、文化団体、アーティスト、ボランティア。。。。
 企画担当の立場からすると、調整だけでは正しいようでは、なんとなく受け身でありすぎるような気がする。そこに希望はあるか、など大袈裟なことをいうつもりも度胸もないが、劇場がモノを作る場合「専門性」が必要かも。。。と感じてしまうからだ。「専門性」、というのが学芸員資格だけに帰結するような状況も、すでに形骸化してきているのだが、企画の専門性と、年間を通じた事業構築に必要な「マネージメント能力」は別物であり、今求められているのは安易な団体との調整だけではない中期的な展望を見据えたマネージメント能力であるように思う。スタッフ統率や、予算の中でやりくりする能力や、施設の十全な活用能力、行政へのプレゼンテーション。。。

  社会構造も重層化してきて、幸福の形も一つではなく、社会が十分に成熟してしまった昨今、これからの時代に沿った社会の一翼を担うべき公共の劇場に課せられている課題は多い。そんな中でも地域固有の文化を発信していくこと、地域のアートの価値を高める活動を続けていくことは、一番に考えなければならないことだ。大変だけれども。。。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
スキありがとうございます!
7
chaikaと申します。ここでは私の思いの丈を、わかりやすく、少し肩の力を抜いて、真面目に書いていこうと思います。アート全般、特に音楽と舞台が興味の対象です。アート系の大学を出て、30代までは舞台演出に関わり(仕事でも、フリーランスでも)40代以降はマネジメントを生業としてます。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。