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藤本タツキの毒

ジャンプ月例賞での松井優征先生(※1)のコメントがツイッターで少し話題になっていた。

簡単にいうと、「藤本タツキ先生(※2)の影響を受けたような一話完結のヒューマンドラマが多いけれど、オリジナリティを磨くことも大事だよ」といった内容。これを見て、藤本タツキという人は、それだけ多くの憧れを集める人になったんだなあと思った。

こういうのって漫画に限らず、表現する世界においては繰り返されてきてる。お笑いだったら、ダウンタウン登場後はボソッとボケるセンス系漫才が増えたし、南海キャンディーズが人気になってからは、例えツッコミで笑いを取るコンビが増えた。

音楽だって、ゆずみたいなフォークデュオが量産された時代があったし、ユーチューブだって中田敦彦さんっぽいチャンネルが山ほどある。

でも、その流派のパイオニアになれるのは結局1人。「〇〇っぽいよね」の「〇〇」さんが作った道は、それ以外の人にはとっても険しい。

藤本タツキ先生は、わずか30歳で藤本流として認められた。これってきっと、「すごい」に「かっこいい」が加わらないとそうならない。そしてそこには、「自分にもできそう」と思わせる毒も含んでいる。

すごくて、かっこよくて、でも自分にもできそうって思ってしまうから、知らぬ間に影響を受けてしまうんだ。

ただ、影響を受けることそのものは、全然悪いことじゃないと思う。そのうえで、自分の好きなもの、やりたいこと、表現方法を模索し続けて、オリジナリティが作られていくんだよ、きっと。

だって、ザキヤマさんだって、最初はダウンダウンの松ちゃんに影響を受けていたっていうんだから。それが今では、「ザキヤマ流」として君臨してる。

女の子のメイクやファッションだって、最初は誰かの影響から始まって、徐々に自分らしさを見つけていく。そして振り返ってみれば、真似をしていた時期に身に着けた知識やテクニックは、なんだかんだ役に立っているもんだ。

だから、今回松井先生にチクッと刺された人たちの中から、新しいムーブメントを起こす人が出てくる可能性は十分にある。

そして、その人の作品が、ながやまこはるちゃん(※3)に「おもしろかったのでおすすめです」と紹介されたら痛快だ。

※1 松井優征先生:代表作は『暗殺教室』
※2 藤本タツキ先生:代表作は『チェンソーマン』『ルックバック』
※3 藤本タツキ先生の妹さん(という設定。実際は藤本先生ご本人)。ツイッターで、面白かった作品を紹介することがあります



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