教育委員会に請願が届かない問題

(1)長野県教委が請願審査拒否!?

 私たちは全国の都道府県教育委員会に対し、部活動に関する請願を提出する運動を展開しています。愛知・三重はすでに提出し、長野や茨城でも提出に向けて準備を進めています。

 このうち、長野で生じた問題をご紹介します。大きく言うと、民主主義のあり方にも関わる重要な問題を含んでいます。

 長野県教委事務局の説明によると、長野県教委宛てに提出された請願は、教育委員が出席する会議にはかけず、事務局が返答を行うとのことです。私たちとしては、採択の結果がどうであれ、審査の過程が記録に残されることを重視して請願を送ろうとしているわけですが、審査すらされないまま処理されてしまうとのことでした。

(2)法的に問題はないのか

 請願権というのは憲法で保障された権利ですが、それに照らして法的な問題はないのでしょうか。

 残念ながら、法的な観点からは、長野県教委事務局の対応を直ちに問題があると言うことはできません。

 ネットで検索したところ、次のような高裁の裁判例が見つかりました。私たちのケースと同様、県の教育委員会できちんと審査してほしいと求める訴えですが、控訴人が敗訴しています。

 判決文が言っている重要な部分を抜き出すと次のようになります。

「請願をしたことにより,請願者と請願を受けた官公署との間に,特別な公法上の法律関係を生じさせるものではなく(請願者による官公署に対する希望,意見,提言等の陳述に過ぎない。),また,請願者に対し,当該官公署に請願の内容について審理を求め,あるいは,その採否や結果の通知等を求める権利を生じさせるものではない。」

 私たちが官公署に対して意見等を述べることは請願権として保障されています。ちなみに、明治憲法下ですら一応の請願権が認められていました。しかし、請願を受け付けた教育委員会が、それを必ず会議にかけなければならないかというと、そこまでは請願権として保障されていないということです。

(3)私たちの戦略

 ただ、全く希望がないわけではありません。長野県教育委員会が定めた長野県教育委員会会議規則には、次の規定があります。

「委員会に対して口頭をもつて陳情等をしようとする者は、教育長の許可する時間内において事情を述べることができる。」(第16条)

 これは、請願を会議で審査することを想定し、請願者が口頭で陳述する場合について定めた規定と解することが可能です。もしそうだとすれば、請願を一律・無条件に事務局で処理することは、同規定の趣旨に反するおそれがあります。請願権という方向で追及しても勝ち目はありませんが、教育委員会規則に沿った対応かどうかという点では、事務局の対応を改めさせられる可能性もあります。現在、同規定がどのような趣旨で定められたのか、事務局に確認中です。

 長野のように、事務局だけで請願を処理する自治体が他にもあるかもしれません。そうした場合、諦めてしまうのではなく、何とか手はないかとあれこれ探ってみることが大事だと思います。

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