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餃子の「焼き」を科学する

餃子を焼いた時に「フライパンから離れない」という失敗、きっと人生で数回体験したことがあるのではないでしょうか。実はこの現象、油の種類と温度の関係で起こっていた可能性があります。

「餃子を焼く」ことは、フライパンと油をコントロールすることで上手になります。どのようなメカニズムで餃子が焼けるのか、知っておくと餃子がもっと美味しくなるはずです。

メイラード反応

餃子に焼き色がつくという現象は、「メイラード反応」というものでできています。小麦粉などの食材を一定の温度で一定時間加熱することで、食材に含まれるアミノ酸やタンパク質と糖が結びついて化学反応が発生し、褐色物質や香味成分が生まれるという現象です。餃子の他にも、ホットケーキの焼き色や、目玉焼きの焼き色などがメイラード反応です。

このメイラード反応、温度は160〜180℃で1分間加熱することで起こります。

餃子を焼く場合、茹で蒸しのお湯の温度は最高でも100℃までなので、フライパン内に水分が残っているうちは、フライパンの温度は一定の温度を維持します。水分が蒸発したあとは、一気にフライパンの温度が上がっていきます。フライパンに接した皮が180℃の状態で1 分間加熱されることで、メイラード反応が発生し、美味しい焼きめができあがります。

油の作用

小麦粉に含まれるデンプン質は60℃で糊化し、タンパク質は50℃で熱凝着が起こり、一定の温度になって変質するまでフライパンに密着しようとする現象が起こります。
この時に餃子とフライパンの間に油の層ができていると、餃子はフライパンに密着しにくくなります。なので、餃子をフライパンに置く時に、餃子の底面に油をつけるようにしましょう。
(余談ですが、最初にフライパンを予熱しておくことでこの糊化・熱凝着が起こる温度帯を素早く越えることができます。またフライパンを揺すり続けて同じ場所に密着させないことで、さらに密着は避けられます)

ちなみに、「フッ素加工(テフロン加工)」は、この油の層の代わりです。それならば、油なしでもフッ素加工したフライパンであれば、餃子を上手に焼けるのでは?と思われるでしょう。でも、やはり油は使った方が良い。

油を使った場合と使わなかった場合を比較すると、油を使った方が、よりパリッとした焼き目になります。

その理由は「揚げ」の効果です。水と油では比熱が違うため油の方が2倍ほど早く温度が上がります。さらに、水の温度は上限が100℃に対し、油は200℃近くまで上がります。それで、油に接した皮の中の水分が一気に蒸発し水の分子が入っていた穴に、入れ替わるように油が入っていきます。その油が、皮の中からメイラード反応を引き起こしていくのです。それで、油を使った方が焼きめがパリッとするのです。

油を焦がさない

餃子をパリッと焼き上げるには、餃子とフライパンの間に油の層を作り、メイラード反応が発生する180℃で1分間加熱することが重要ということは、ご理解頂けたでしょう。

それでも、フライパンから餃子が離れない現象が起こる理由が、もう一つあります。

いわゆる焦げが発生する現象です。
焦げる原因は2種類あります。前述のタンパク質が焦げた場合と、油が焦げる場合です。

油にはスモークポイントと呼ばれる、煙が出てきて酸化などの変質が始まる温度があります。例えば菜種油やアマニ油のスモークポイントは107℃です。エクストラバージンオイルで160℃。最も高温に強い油はアボカド油でスモークポイントは270℃。私がよくおすすめする米油は230℃です。サラダ油と呼ばれる精製された油も、230℃くらいがスモークポイントです。

同じように見えて、精製度によってスモークポイントが違うものがあります。例えばごま油は、未精製であれば170℃、精製したごま油(太白ごま油)は230℃です。

スモークポイントの詳細は下記のWikipediaをご参考ください。

このスモークポイントを超えて加熱し続けると、油も焦げます。そして、フライパンに焦げが張り付きます。なので、スモークポイントの高い油を使う、フライパンが高温になりすぎないようにすることで、焦げ付きは無くせます。

デンプン質をお湯に溶かして焼き上げる羽根は、この焦げとは違いますので、ご注意ください。

このスモークポイントの手前の温度で、メイラード反応の起こる温度帯で餃子を焼くことが、最高の餃子になります。

ごま油は前述の通り精製度によってスモークポイントが異なりますので、例えば最初から入れるなら白く透明なごま油、最後に香りつけで使うなら茶色いごま油を使うことで、焦げ付きを減らせるはずです。

餃子を焼く時の火力は中火にして、高温にならないようにして焼くことを心がけましょう。ちょっと油が焦げてきたぞと思ったら、とりあえずフライパンを揺すったりしながら熱源から遠ざけましょう。また、ずっと同じ火力で同じ場所にフライパンを置いていると、一定の場所が高温になって焦げると言うこともあるので、フライパンのポジションを変えてみるのも良い方法です。

鉄フライパンや鋳物フライパンだと、それでも温度がなかなか下がらないので、濡れたふきんに乗せてジューっと冷やすのも良いと思います(アルミフライパンでこれをやると歪むかもしれません)。

余談:フッ素加工とテフロンの違い

「フッ素加工のフライパンと、テフロンのフライパンは、どっちが良いのでしょうか?」とよく聞かれます。実は、どちらも同じものです。

「テフロン」はデュポン社のフッ素樹脂やその加工製品商標。

基本的にアルミでできたフライパンにフッ素樹脂を加工したものが、世の中で多く使われています。何とかコートとかたくさんありますが、ほとんど同じようなもの。基本的にアルミフライパンに何らかのコーティングが施されたものなので、いずれ剥げます。その硬度や厚さや混ぜ物の違いで様々なコーティングの名前になっているようですが、いずれ剥げます。

コーティングが剥げれば、当然ながらフライパンに餃子はくっつきやすくなります。コーティングを長持ちさせるためには、強火にかけたり空焚きしないことです。フライパンの温度が260℃を越えるとフッ素が分解して毒ガスになります。また、餃子を焼く時には油をしっかり入れることでもフライパンは長持ちします。

私は餃子を焼くこと以外の料理を一切しないのですが、餃子を上手に焼ける人は他の料理もきっと上手にできるようになるような気がします。初めての料理に「焼き餃子」はきっとおすすめです。

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餃子の焼き方、以下の記事でもご紹介しております。よろしければご参考ください。


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