詩 『 遙かなる友人 』
他の星からきたという人に 会いました
喫茶店の奥の席にすわり
珈琲カップをもつ仕草など とても自然なものだから
彼が異星の人だなんて
まわりの人にはきっと 分からなかったと思います
.
「故郷の星を離れてから
いつのまにか ずいぶん時間がたってしまいました
一人っきりで宇宙空間を彷徨っていると
時間の感覚が よく分からなくなってしまうんです 」
.
珈琲のサイフォンが コポコポと音をたてる
.
「地球は綺麗な星ですね
私の星と 少し似ているような気がします
そういえば
ここにも家族というものがあるんですね
私にも家族がいたんですよ
私をいれて5人
下の子は まだ5歳でした
みんなで安全に暮らせる星を見つけたら
必ず迎えに来るからね
そう言って聞かせ 旅立ったのですが… 」
.
彼の爪が 少しだけ蒼い
.
「だから
だからこの地球で 誰かの役に立とうと思うんです
話が飛躍していますか?
いえ
私という存在のゴールが ただ宇宙の塵になることだった というのは
ちょっと やりきれませんから
あなた達も 誰かの役に立ちたいと思いますか?
そうですか
住む星が違っても
生命体というものは 案外同じことを考えているんですね 」
.
そっと彼が立ち上がった後の椅子のへこみに
暖かく 午後の陽が差し込んでいる
.
「自分の星があるということは 幸せなことですよ
おまけにここは とても美しい
時々 私のような者を
あなた達の星に 立ち寄らせてください
たとえ住む星が違っても
生命体が願うことは それほどには違わない
それが この宇宙の法則のようですから
それで救われる者も いるのですから 」
.
それから彼を見かけることはないけれど
彼は今も
どこかで 汗を流しているのかもしれません
もう会えない故郷の人々を思いながら
この星の誰かのために 働いているのかもしれません
彼のふるさとは さそり座の兄弟星の近く
夏の夜空にこの星座を見つけるたびに
わたしは 彼の幸せを祈るでしょう
〜・〜・〜・〜・〜・〜・
この詩は、『ウルトラマンマックス25話 遙かなる友人』に魂を揺さぶられて書いたものです。
何気なく子供と見始め、見終わる頃には一生忘れられない話となりました。
異星人役の河相我聞さんが素晴らしかった。
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