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おばぁちゃんたちの自虐ワード


寝たきりのトキさん。
「若い時は、昼まで寝ていた~い!って叫んでいたのに今となれば寝たくもないのに寝ていなきゃいけない。なんてこった」
と目を白目にしながらおどけて話した。

心臓を患っている高齢のよしこさん。
「もう死なせてほしいっていつも言ってるのに、昨日、肺炎ワクチンしちゃった私。まだ、長生きする気なのよ。生きることに執着している証拠だわ、恥ずかしい」
乾いた口もとでワシャワシャと笑った後、上の入れ歯がちょっと落ちた。
そして、慣れた手つきでふにゅっと何事もなかったように元の位置におさめた。

外出の前の洋服選びでシックな茶色の洋服をお渡しすると
「その色は、年寄りくさくていやだわ。」「あー?私、年寄りだった」
と三面鏡の前で顔をくしゃくしゃにして笑った。
でもやっぱり明るい色の花柄の洋服を選んだ鈴子さん。

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ここで笑っていいのか、笑ったら失礼なのか微妙な空気になることもある。
このお三方は、年輪が増えていく寂しさの中にも笑いのエキスを数滴ポトンッと落とせる人たち。
きっとそれを一緒に笑ってほしかったり、いやいやそんなことないよ!と反応してほしいのかもしれない。


「シルバー川柳」は、面白いけど切なくもある、そんな感覚。

年を取っていく事が、嬉しくウキウキしちゃう!という人はいないだろう。
そんな中、ユーモアを織り交ぜながら会話をしていく事で残りの命の儚さを紛らすことが出来ているのかもしれない。

お年寄りの中には、この作業が出来ず、抑うつ的になってしまう方もいる。
高齢になり、できないことが増えて、家族のお荷物になっているんじゃないか?と悲しくてたまらない人も少なくない。

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寝たくもないのに寝ていなくてはいけないトキさんだって、本当は凄く辛いかもしれない。
私自身が、この状況になったらこんな風におどけて言えるだろうか。
私が想像しきれていないほど長い時間をベッド上で過ごしているのに。
このセリフを笑いに変えたトキさんの強さを感じた。

死にたいはずが、肺炎ワクチンをしてしまう自分を責めるよしこさん。
神様や仏様じゃないんだからみんな生きることに執着して生きてる。
恥ずかしいと思わないで。
それを言えるよしこさんは、嘘がなくて抱きしめたくなる。

年寄りくさい茶色の服はイヤ!と言った後で、自分が年を重ねていたことにはたと気づいた鈴子さん。
将来、私が言いそうなセリフだと思った。
私は、自分の年齢をずっと勘違いしているままなので、この気持ちがよくわかる。
だれも年を取りたくてとっているわけじゃない。

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彼女たちは、年を重ねるとこういう気持ちになるという事を如実に語ってくれる。

「年を重ねるとこんな風に感じるんだってことを覚えておきますね。きっと数十年後に私たちも追いかけて行って同じような時期を体験しますから。今、こうやって教えてくださったことを忘れません」と悲しみをしっかり受け止め、感謝を伝えることもある。

老いが避けられないことなら私もお三方のようにユーモアを散りばめるほうを選択したい。


きっと「老い」をすっかり悪者にしてしまっているのも違うのだろうな。
残念ながらそこを語れる域には、まだまだ入れないけど。

おばぁちゃんたちが、高齢になった時の気持ちを語ってくれたように私たちの年代も若い世代に何かを語れるのかもしれないとも思った。


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最後までお読みいただきありがとうございます。
感謝!

今のところは、個人が特定できないような形で患者さま、利用者さまの話を書かせて頂くことが多いです。今後は、全く違うお話も書いていきたいと思っています。
ゆる~い目標ですが、週に1回は、アップすることを目指しています。
気長によろしくお願いいたします。



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にゃむ
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