見出し画像

信用が無いところから商売を始めることの難しさを知りました

そもそもモノづくりに取り組んだきっかけは、
地域の中小企業を応援するとかそういった思想からではなく、そもそもはデザイン仕事のプロジェクトの内容次第で高下する売上の状況を自分たちで収益を上げられる仕事で解決できないかなと。なので「何でもいいから作ろう」っていう浅はかな発想で、セメントプロデュースデザインの最初のプロダクトは進みました。

難しい商品を一発目に作ってしまったんですよね。この商品は東大阪の町工場で作っています。当初は事業資金もなく、試作も金型も作るのに苦心しました。(金もコネも無い中で無謀な取り組みしてたなと思います)

最初のプロダクトは何もわからずに大苦戦
「7つの苦戦」

「見合った工場を探す作業」
「工場との意思疎通がうまく行かない」
「製造するための資金が足りない」
「売るためのパッケージの金型代がない」
「商品の営業方法がわからない」
「大手との取引口座の壁にぶつかる」
「仕入れ売りで資金繰りに苦戦する」 

スクリーンショット 2022-03-31 16.40.22



最初の苦戦は工場探し。今ではネットで調べれば工場も能力もわかります。
ですが僕が起業した2000年頃はどの工場もwebがなかった。

画像4

電話帳で工場を調べて見つけてアプローチするしか方法がありませんでした…

電話帳にある情報は技術のおおまかなことと、住所と電話番号。
どんな会社なのか、まったくわからず小さい工場なら受けてくれそうかなと
それっぽい感じの会社を見つけては片っ端から電話で話しをしていきました。


スクリーンショット 2022-03-31 16.41.48

で、工場の人と話しをするのですが、「モノづくりをよくわかっていない僕」と「製造業のプロ」との意思疎通が上手く行くわけがなく、とにかく安く作ろうとしていて、何度も失敗していきます。金型を安く仕上げてもらうも、安い金型はそもそも精度がそれほどたかくないため金型費用が追加でかかると。

一度作ればいいと思ってる僕としては素人なのでだまされているのだろうか?と。自分の無知を棚に上げて原因もわからぬまま、工場との間に不信感だけ生まれては、また違う工場へ…製造環境が整うまで何社も工場で失敗を積み、また新たなに探しまわることに。

困っているその時に知り合いを通じて出会った工場の社長が成瀬金属の成瀬さん。

画像3

社長は元々パナソニックで勤務後、自社の工場を継がれたそうで、当時も下請けの仕事をやりつつ、自分でも考えてものづくりされている前のめりな方でした。

ナンボでつくるんや?

出会って早々に企画書を見るやいなや、最初にいわれたのが、
「いくらで売るんや?で俺はいくらで作りったらええんや?」と。。

とにかく安く作ろうとしてるだけの目標値が無い作り方をしようとしていることに気付かされました。とにかくその場ですぐに考えて、「20枚入りで500円くらいで売りたいです!」と伝えると、これまで作ろうとしていた安い金型では上手くいかないことがわかりました。

「そんな安い金型やったらすぐヘタってしまうで、何回もつくりなおさんと〜」

この時やっと工場と向き合って話ができた。自分が売りたい金額だと原価を考えるとクリップを20万枚抜かないといけないこと、そのための耐えうる金型はこれまでの金型より相当質の高い型がいること。いくらかかるのか聞いてみて・・・・

スクリーンショット 2022-03-31 16.42.13


え?????ここでまた問題が…「金が無い」
(所持金無いなら作るなという・・・)

で、その日は一旦もどり、どうするか悩んで悩んで、
悩んでも悩んでもこのハードルは高かった。

スクリーンショット 2022-03-31 16.42.55

別日に成瀬社長にお願いにあがりました。

僕が出した一枚の紙。

”金型と製品代を全て割賦払いにしてもらえらませんでしょうか”

商品は3ヶ月後、金型は半年以内に・・・と。

見知らぬ怪しげな兄ちゃん(僕)に最初は「アホか」と言われましたが、

「ええよ、おもろそうやし手伝うたるわ!」と。

断られると思っていた僕にはめちゃくちゃ嬉しかった。
(こんな口約束でいい加減な支払い条件を飲んでくれました(涙))


生産が始まりました!で工場から製品20万枚がダンボールに入ってやってきた。

画像5

これが全部ダンボールに入ってシェアしていた事務所に運ばれてきました。
でもこのままじゃ売れない。あ、パッケージ。

スクリーンショット 2022-03-31 16.43.48

「売るためのパッケージの金型代が出せない」


今度はパッケージにかけるお金がない。既に100万円かかってます。紙のパッケージだとなんともしっくりこない、プラのケースだと見積もったら凄い費用がかかることがわかりまして、即座に諦めるしかなかった。

でもなんとかケースに入れたいと、とにかくクリップに合う空き容器を探しまくりました。でもサイズが大きかったり小さかったり、そんなピタッと合うケースがあるわけありません。そもそもそこも考えてなかった。

で、探しまくってようやく見つけた容器が、医療用の軟膏ケース。

スクリーンショット 2022-03-31 16.24.49


でも、下が透明で蓋がブルー…

デザイン的には、どうしても透明に替えたかった。
パッケージの製造業者に掛け合ってみたところ「1万個からなら作ってあげるよ」と。この20万枚のクリップ達は偶然にもこの1万個のパッケージに収まって、
何とか完成しました。(こんな恐ろしい作り方をよくもやってたなと)


スクリーンショット 2022-03-31 16.26.43

何とか商品が10,000個できあがったが…

スクリーンショット 2022-03-31 16.44.36


で、次の問題は…「どこにどうやって売るのか」何も考えてなかった。

販売計画もないまま1万個のようやく完成したクリップを持って見知った雑貨屋さんに営業に行く。小さな店にはボチボチと入って行きましたが、みんなが知っているような大きな雑貨ショップやチェーン店には取引口座をなかなか開いてもらえませんでした。

そのうち皆さんから
「展示会に出れば?」
「え?展示会ってどこでやってるんですか?」
「東京やん、ビッグサイトとか、ギフトショーって知らんの??」
世の中の商品がどうやって流通しているのか全く知らなかったことをここでも知ることに。で、出展費用が凄まじく高いことも知りまして、最初は知り合いの会社さんの軒先をお借りしたり、シェアしたりしてました。
皆さんが知ってるような会社が展示会で出会うようになり商談機会を得ることに。

スクリーンショット 2022-03-31 16.45.02


数社の大きな会社との商談でも驚いたのは皆さんたくさんの商品をトランクいっぱいに持ってきてバイヤーとの商談に挑まれていたこと。

僕は1個しかないので1この商品を延々と喋るだけでしたが(笑
とにかく圧倒されました。

で、バイヤーとの商談では、「問屋」を通して卸すように言われ、
「どうして知らない会社をマージン渡して通さないといけないんだろう?」って、当時は意味がわからなかった。

たった1つしか商品を持たない取引先のために大手企業がわざわざ口座を開くことが無いんですね。(会社案内に皆さんが取引先企業を入れている意味がこのときやっとわかりました)

結局、少しずつ売れてノベルティにも決まって行くのですが、今度はまた問題が…

スクリーンショット 2022-03-31 16.45.26


製造費も膨らんで、資金繰りを圧迫しはじめました。従来デザインの仕事の中では資金繰りがハードに発生する事は殆どありません。デザイン依頼を受けた仕事を収めた翌月には口座にお金が入っってくるわけです。

商品を製造して売る場合は違います。仕入れた商品を販売する商売は先に仕入れをおこしているわけです。その代金は翌月に工場へ支払う。(僕らのような小さな会社にとっては30日サイト)皆さんにとっては当たり前のことがデザイン仕事をしてきた初参入の人間には未知の世界。

商品を売ったお店からも30日後に入金されるのですが、あんなにも店に請求書を書いたのに月末には口座には現金がない(同じ日に現金が入って出ていく)でも、
工場との約束で月々の支払いは1日も遅れられない。

スクリーンショット 2022-03-31 16.36.49


世の中に全く信用がないところから商品を作って販売をする。小さなことかもしれませんが何も背景を持たない、知られていない実績も無い会社が世の中で商売を始めることの難しさを知りました。

その経験から、こんなやり方ばかりしていては会社もうまく行かなくなる…
何より無知な状況下で商品を作っていくには時間がかかりすぎる。

最短で進められる工場との連携のあり方は無いのか…
キチンとマーケットにトライできる方法が無いだろうかと…

ハッピーフェイスクリップは僕らの次の商品開発の形、
協業していくスタイルを模索していくきっかけにもなりました。

画像2

社長には今も頭があがりません。
20年の間におそらく累計400万枚は世の中にこのスマイルクリップは沢山のお店や皆さんのお手元に旅立っていきました。もっと色々と役に立ってくれていると嬉しい限りです。

笑っているけど笑えないハッピーフェイスの制作の裏側でした。

よかったら、おひとつお手元にいかがでしょうかー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?