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140字 恋愛詩(5作)ちょっぴりダーク

深呼吸をする前に膨らんだ感情を
僕だけに教えてほしい
捕まえて、そっと耳に囁いて
温めた蜜を溶かして作った王冠を
頭に乗せてほら

暗い夜空に飛散した星々は
明るい朝を運んでくる

沈んだ夕陽をその手で隠してくれ
我が儘な僕のために
きみの声で目覚めたい
きみの声で目覚めたい


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強請ゆすって起こした本能の在処
きみの奥に座る漆黒の月
天井がない空を指先でなぞり
仰ぎ見た僕にかける終わりのしるし

熟れた言葉の蝋燭に
消えない傷を浴びせて吹き消す

影に隠れて蹲る姿
二人の爪痕は二人にしか見えない


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砂糖漬けにした罪状を
唇に挟んで差し出す誘惑精神
冥合豊楽みょうごうほうらくへの殉教者になりたい私は
長い夜に付き纏う野良猫
狂って甘噛みした薬指
かけた魔法の名前をあなただけが知っている

白い足跡を追いかけて
黒い足で踏み付け、重なった
甘い春は苦い冬を上書きする


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麝香ジャコウの煙を巻いた僕のからだを転がすやわらかい足
突き刺す眼差しが心地好いと感じてしまう
皮肉なんかじゃないよ
愛の襖に挟まれていたいだけ
渇いた心臓を潤すのは沸騰した言葉
千切ればすなになる
風に乗って走っていく


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指先から羽ばたいていった蝶は
戻る道を知っている
飛び散った泥で体を汚しても
混濁の興に捕まっても
僕が用意した籠を見つけてくれる

雷雲の悲鳴を避けながら
虹が出る青空に向かって飛び続け
花の蜜に誘われてもただの寄り道
視界を遮る悦びのカーテン
まだ開くには早い

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