ウェルビーイング

ヒューマンOSを鍛え、ウェルビーイングに生きる

社会人こそ、学び続ける時代

学生でいるのは、社会人になるまで。

かつての常識は、知らぬ間に非常識へと変わります。社会人になり働き始めたら、先輩の背中から学び、目の前の仕事で成果を上げればいい。そんな常識も過去にはあったかもしれません。

組織の意図に沿っていれば、未来の雇用が保証される。先輩の成功体験が、未来の成功を保証してくれる。仕事で成果を出し続ければ、5年先、10年先も通用するビジネスパーソンになれる。

このような前提は崩れ去り、『仕事ばかりしていると、いつか仕事ができなくなる』時代だといわれます。このような時代に豊かなキャリア・人生を育むためには、人生の様々なタイミングで学び続けることが不可欠とされています。

では、私たちはどのようなことを意識して、何を学べばいいのでしょうか。その一つのヒントが、この記事に紹介されています。

ウェルビーイングに生きる

ウェルビーイングとは、「身体的、精神的、社会的に全てが満たされた幸福な状態のこと」を指します。幸福の定義は人それぞれですが、単一ではなく、複数要素の総合点で形成されるものでしょう。

働く価値観は、昭和の「ワーク&ワーク」から、平成の「ワークライフ・バランス」、そして令和の「ワークライフ・インテグレート」または「ワークアズライフ」へと人生の総合点へと移行しつつあります。

本記事では、そのようにワークとライフを統合していく鍵は「学び(ラーン)」にあると語られています。

「現代ではよくワークライフバランスという言い方がされますが、そもそも仕事(ワーク)と生活(ライフ)は対極にあってバランスさせるものではありません。本当によい仕事はよい生活につながりますから、これらは互いに相乗しているものと考えるべきです。これらふたつの相乗にレヴァレッジをかける鍵は学び(ラーン)にあります」

そして、ワークとライフとラーンのトライアングルの相乗効果を出していくことが、この不確実性の高い時代をウェルビーイングに生きるための必須要件だとしています。

学び(ラーン)の2階層

パソコンに比喩に用いながら、学びを2階層に分けて紹介されています。

階層1:学びの根幹となる"ヒューマンOS"
階層2:OSの上に積み上げられるアプリケーション

特に、階層1のヒューマンOSの重要性が強く語られています。

具体的なヒューマンOSは2つ。1つは自分がどのような場で価値貢献したいのかという「志=ビジョン」、もう1つは「自ら思考してクリエイトする力」が挙げられています。

確かに、自らの存在意義やブレない目的を人生の中心に据え、自らの頭で未来を捉えいまを判断していく人は、自分にこの先に必要なアプリケーションを的確に理解し、根気強くそれらを習得していくことでしょう。

2013年に論文『雇用の未来』で世界から注目を浴びたオックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授は、続く論文『スキルの未来(The Futures of Skills)』で、この先の未来に需要の高いスキルをランキング化しました。

ランキングの1位に輝いたのは『戦略的学習力』、つまり、「新しいことを再現性高く学び続けていくための方法論およびマインドセット」を身につけていることだと理解します。

戦略的学習力の土台になる重要な要素が、本記事で語られている"ヒューマンOS"なのではないかと考えます。

多様な場がヒューマンOSをアップデートする

ヒューマンOSをアップデートする方法は、以下のように紹介されています。

「大事なのは自分のためにどのように時間を使い、いかに生きていくのかを、自分自身に問いかけながら志やヴィジョンを明確にしていくことです。ただ、個人が一般的な関係でOSをアップデートしていくことは、決して簡単なことではない。普段とは異なる環境に身を置き、日常生活では出会わない多様な人たちと対話を重ねることが必要なのです」

私は定期的に社会人向けのキャリアを考えるセッションに登壇しています。参加くださる方は、キャリアというテーマに興味・関心の強い皆さんなので、いかに生きていくのかを普段から真剣に考えている方が多くいらっしゃいます。

とても素晴らしいことですが、一方で、真面目に自分と向き合っているからこそ、迷子になってしまいがちな点も大事なポイントです。自分の内側と向き合っている以上、想定を超えるキャリアを描くことは難しいのです。

なにかを考えるときには、私たちは考えるための材料を求めます。その材料を自分の中だけから賄えば、当然ながら、自分の持っている材料を組み合わせた範囲でしか思考が広がりません。その結果、堂々巡りをするケースが多いのでしょう。

そこで、この記事にあるように、自分とは異なる世界を生き自分とは違う考え方や価値観を持つ多様な人たちの中に飛び込んで、自らを視野を広げながら、多様性の中で客観視することは、キャリアを考えるにあたり、極めて有効な方法だと思いませんか。

まとめ

ウェルビーイングという概念は、耳障りよく思えながら、とても厳しい概念なのだと思います。幸せを構成する要素を示しながらも、どのような総合点を理想とするのかは、私たち一人ひとりに委ねられているからです。

結局は、ウェルビーイングな状態に近づくためには、自らの志=ビジョンを見定め、思考力と多様な場を駆使しながら、その意味や意義を再定義(創造)し続けること、そして、その実現に不可欠なアプリケーションを適時で獲得し続けることが求められていくのでしょう。それは言葉を換えれば、「戦略的学習力」と表されるものかもしれません。

意思を持ち学び続けるものには、自分なりの「ウェルビーイング」を追求できる時代が、すぐそこに訪れているようです。

※記事スピーカーの著書


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