夕食後の哀しみ

 アクセサリーが好き。ゴールドやピンクゴールド、キラキラしたのもごついのもいい。いびつな形をしたのも本当は好き。だけどここ十年くらいはほとんどつけなくなった。理由は怪我をさせるのが嫌なのと服に引っかかるのやなくすのが嫌なのと、それから単純にたくさん持っていないからだ。プレゼントされることもなくなったし自分で買うこともしなくなった。買ったとしてもせいぜい無くしても大丈夫な安物だ。それに、つけて行きたいと思うところが少なくなったのだから気に入ったのを数個持っていれば事足りた。

 そんな私が今日は珍しくネックレスをつけていた。ハイネックを着ていたから少し長めで、大きい三角の石が二つついたものだ。それも元々安かったのを閉店セールでさらにお得に半額でゲットしたものだった。

 それでも気分が良かった。たまにはつけようかな〜と思いつけたから。安物だろうがなんだろうがアクセサリーで気分が良くなる、服や靴だってそうでしょう。だから今日は、余計に虚しくなったのかもしれない。

 まぁあなたの前では初めてつけたかもしれない。それを突っ込んでくれたのかもしれない。ファミレスで食事をしていて目についたのだろう。けれど私は哀しかった。ただの冗談でエスカレータの押すところみたいだね、上と下どっちにも行くの? 的なことを言われ。最初ははいはいと笑った。確かに似てると思った。でもだんだん哀しくなった。結婚してから身に付けるようなものは買ってもらった記憶がない。贅沢だと思うことはなるべく遠慮してそれでもしたくなったら自分でしてきた。つけていくところもそれをつけて会いたいと思う人もいないからそれでいい。ほんの少し自分がほっこりできればいい。そんな思いのネックレスにお前が何を言うか? と。なんだか悔しくなった。私のささやかな贅沢を笑われた気がして。帰りの車内でじわじわと泣きたくなった。小さななんの気なしの言葉でこんなにも虚しくて哀しい。

 こういった気持ちがもう十年以上も積もっている。

 明日は半額じゃない何かを自分に買おう。

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