卒論を提出する話

この記事はろびにゃん(仮)2 Advent Calendar 2020 ( https://adventar.org/calendars/5627 )に投稿する記事です。


 大学1年生のゴールデンウィークにニコフレ登録した私も、ついに4年生です。つまり卒論を書いて提出しなければいけません。10日にオンラインでデータを提出し、17日に印刷した現物を提出します。
 卒論は、今後著作を発表する予定がない私にとって唯一の著作になるかもしれないものです。

と い う こ と で

卒論書きました。

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 古事記は漢文に万葉仮名が混ざったような文体で、表音文字と表意文字が混在しています。
 たとえば、現在のひらがなの「は」という文字は「波」という漢字が字母(元になった、崩す前の漢字)ですが、他にも「八」を字母にしたものや「者」を字母にしたものもあって大変ややこしいです。また、旧字がわんさかあります。大量の赤波線はこれらを現代語の常識に当てはめて校正しようとしてくる Word さんのせいです。これをオンライン入稿して印刷から製本まですべて業者におまかせしようとすると…

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 このようにひどいことになりました。かなしいね。
 諦めて紙に印刷したものを製本だけ業者にお願いする形にしました。
(これは先週のアドカレにも書きました→ https://note.com/cclemooooooon/n/n78cb837add1c

 うちの大学では、主査の先生、副査の先生それぞれに製本した卒論を提出するため、最低でも2冊の製本済み卒論を作らなければいけません。
 そのほかに私は自宅保管用も欲しかったので(オタクの性)合計3冊つくります。

 後輩のために金額計算を残しておくと、

1オーダーにつき持ち込み手数料2000円

・印刷した紙を製本してもらうときにかかる手数料です。1冊製本しても、3冊製本しても2000円です。店舗で印刷してもらう場合は1枚9円で、私の場合は1冊70ページであることから、本来は9*70*3=1890円になります。
実際は、印刷は大学のプリンターで行ったので無料、紙の値段は500枚入り500円のため、70枚*3部=210円、持ち込み手数料と合わせて2210円です。
これだと300円ぐらい損していることになりましたが、前述した旧字だらけ、文字化け祭りが恐ろしすぎるので、300円ぽっちでその恐怖が納められるなら安い出費だと考えました。

製本代320円
・3冊のため960円です

表紙加工料、表紙代
・うちの学部は表紙の書式が仔細に決まっていて、背表紙の書き方まで決まりがあります。それにしたがって印刷を行うと、1冊につき90円の3冊で270円です。また、表紙の代金はまた別なので1枚77円の3冊で231円です。

小計
持ち込み手数料 2000円
製本代      960円
表紙加工料    270円
表紙代      231円
─────────────────
        3461円

こんなもんでした。実際のページ数と、何冊作るかと、表紙にどれだけお金かけるかで亦計算は違うと思います。

こうして完成したのが

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これです!

名前を隠すためにその辺に転がってた茎わかめを乗っけました。スタッフがあとでおいしくいただきます。

テーマ:海幸山幸伝説にみえる呪力と皇統の系譜

〜あらすじ〜
山神の娘コノハナノサクヤビメと天孫ニニギノミコトの間に生まれた三兄弟の長男ウミサチヒコと三男ヤマサチヒコ(神話において三兄弟の次男は無視されがち)
ウミサチヒコは海で獲物を取るサチを持っていて、ヤマサチヒコは山で獲物を取るサチを持っていた。
ある時弟のヤマサチヒコは兄のウミサチヒコにサチの交換を申し出る(このサチが道具なのか、呪力なのかは意見が分かれる)ウミサチヒコは三度断るが、遂に受け入れる。
しかしヤマサチヒコは魚を一匹もつれなかったばかりか、借りた釣り針をなくしてしまう。
ウミサチヒコは怒り、自分の剣を鋳熔かして釣り針を作って償おうとするがこれも拒否され、ヤマサチヒコは途方に暮れて海辺に立ち尽くす。すると潮流の神が現れ、海神の国に行くように予言される。

この海幸山幸説話は末子成功譚(三匹の子ブタ、長靴をはいた猫のように末っ子が成功する話)と海宮遊行譚(浦島太郎みたいに竜宮城に行く話)が混ざりに混ざった話です。
また、ヤマサチヒコは神武天皇の祖父にあたり、この海幸山幸伝説は皇統の祖としても語られます。

私たち日本文学科は古事記を歴史書と捉えるのではなく、ただ紙に書かれた文章、物語として考察するため、実際に神武天皇や神話の神が存在したかどうかの考察は行いません。ただ、物語としての古事記の話の整合性や、そこにあらわれる古代人の感性や風俗を残された資料から考察していくのみです。そこには、当時の人々の信仰や、信じられていた呪術など現代からは想像も及ばない多くのことを読み取ることができます。
上記のあらすじを読むとわがままな弟に困らせられる兄という構図がみえますが、この話の結末としては、弟が兄を服従させ、皇統の祖として子孫を残すことが描かれています。どうにも兄が踏んだり蹴ったりで不憫なように見えませんか?
しかし、よくよく考察を進めると兄には服従させられるだけの理由があり、弟には正統な地上階の統治者としての資質が描かれていることが分ります。一次資料がとっくの昔に消失している作品からこれらを読み取るのは非常に難解です。しかし、決して実際にはふれることが出来ない古代人の生活の一端をつかみ、うかがい知ることができる非常に興味深い学問でもあります。

もし文学に興味がある人がこの記事を読んで、上代文学に興味を持ってくれたらうれしいです。あと、これから卒論を書く後輩たちに、製本料金なんかが参考になれば幸いです。

ニコフレからべスフレになるように、私も大学1年生から4年生になりました。楽しいことも嫌なこともほどほどにありましたが、長いこと私と遊んでくれて皆さんありがとうございます。これからもよろしくね。

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