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私的な書評 江國香織『真昼なのに昏い部屋』

※過去の文章のリライトです

やってしまった。
江國香織の『真昼なのに昏い部屋』を読み直してしまった。
今まで思い出したり、ぱらぱらめくっていただけだったのに、今日は最初から最後まで通読してしまった。
やんぬるかな!

この小説を初めて読んだのは、とある選考のために書評を書かなければならなかったからだった。
結構いい書評が書けて選考も通ったけれど、小説に惚れ込んでしまってそれ以上に興味がなくなり辞退してしまった。
今日もこの作品は江國香織の中で一番すきかもしれないと思った(エッセイは除く。あとはウエハースの椅子もすき)。
今もだけど、社会性や倫理観といった類のものは、わたしにはない。
あのとき自分が書いた書評をもう一度読みたいのだけれど、もうデータがない。
悔しい。

書評を書いた当時は、結婚というものを関係を縛るために利用する契約だと考えていた。
そして、わたしはそのときの恋人と結婚したいと思っていた。
契約を結べば彼は安心してくれるのだろうし、わたしも安心してくれる彼のことを好きでい続けられるだろうと思っていた。
でも彼は、突然結婚した。
もちろんわたしではない女の人と。
恋愛には往々にしてそういうこともあるのだなと思った。

彼と別れてわたしは自分の価値観にかなり制限をかけていたことに気づいた。
自由にしてはいけない、なにも感じてはいけないと。
もっとも彼には「俺からすればきみは十分自由にしてるけどね!」と言われていたのだけれど。
責任や忖度の重さが自由のそれより上回る自由が窮屈でないわけがないのに。

わたしは元々「外のひと」だった。
身につけた偏見のコレクションなんて、とっくのとうに破壊されている。
「外のひと」は好奇心の対象になる。
でもみんな最終的にわたしに失望していく。
わたしは色々な男の子が真理を発見する手助けをして、確かにその男の子がキラキラしなくなるのを目の当たりにしてきた(なぜか女の子はあまりみない、いつまでもキラキラしている)。
『真昼なのに昏い部屋』は最後の二行が真理だった。
わたしはジョーンズさん側の人間だったのか。
だから部屋の電気もつけないし、真昼なのに昏い部屋にしか生息できないのだ。

結婚してしまった彼と別れて本来のわたしを取り戻したとき、夜中に原付で高円寺にいって、ホットのカフェラテかキウイジュースを飲んでたばこを喫った。
井の頭公園で池をじっと眺めて、終電がなくなるのを待った。
気がつけば東京を離れた。
本来のわたしというものはそういうもので、いつだってひとりなのだ。
そうしないとわたしからわたしが剥がれてしまいそうで怖かった。
あの時期はとっても安心できる、何人にも精神が脅かされない時間だった。

ところでそんなわたしでも他人の存在がいっさいがっさい受け入れられないわけではない。
家族も、恋人も、友だちも、会社のひとも、みんなみんな愛しているのだ。
ただしわたしの領域を侵さない人間に限るだけで。
少しでも土足で踏みいろうものなら…と思ってしまう烈火のごとき幼稚さと気難しさと繊細さのせいで、わたしは頭のおかしい女なのだ、知っている。
でも頭がおかしいことを知っているだけ、ましでしょう?

今日もとてつもなくひとりになりたかった。
本を読み終わったあとに泣きじゃくって、高円寺に行かなきゃと思った。
そのとき恋人の顔を見て、諦めざるを得ないことを悟った。
それが大人になるってことなの?
わたしはもうひとりで高円寺にも井の頭公園にもいけないの?
わたしを縛っているのは自分自身だなんて、そんなこと分かっているけれど、じゃあどうすればいいっていうの?

恋人のことはすきだったし、いまはもうそのすきを超えた気持ちを抱いている。
この先もずっもいっしょにいたいと思ってる。
でもずっとっていつからいつまで?
何分割できるの?
そう考えるとほんとうに怖かった。

もし恋人と結婚をしたら、美しいものを美しいと、すきなひとをすきだと感じる資格が奪われてしまうのではないか。
わたしにとって川がきれいとか、空気が美味しいとか、空がたかいとか、そういう類の気持ちなのだ、恋愛感情というものは。

わたしがわたしでいるための構成要素が剥がれ落ちてしまうのではないか。
それが怖い。
とある人に、「他人と適切な関係を結べる自信がない。結婚したあとに恋に落ちない自信がない。犯罪者にはなりたくない。だから結婚したくない。」と言ったら、
「ばかね、自分が独身でも相手が結婚してたら意味ないじゃない。」と返ってきてもういま死ぬしかないと思った。

わたしは自分としか会話できないし、自分のことしか愛せないし、恋愛感情すら自分の範囲内でしかもつことができないのかもしれない。
わたしは自己批判ばかりしているけれど、まともでありたい、まともなフリをしたい、普通でありたいという気持ちはあるよ。

罪悪感の正体は自意識なんだって。

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