
【CCHパートナーズ会員限定】第2回 C&CHカンファレンスを開催しました(前編)
2024/11/27はC&CH構想および当協会の取り組みに関心を持っていただいているC&CHパートナーズ制度の加入者限定のWebセミナーC&CHカンファレンス2024を開催いたしました。100名以上のみなさんにご参加いただきました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。(CCHパートナーズ加入いただいた皆様にはアーカイブ動画をご案内します)
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前編・後編の2回に分けてカンファレンスの内容をレポートいたします。
※誌面の都合上、講演内容を一部省略していることをご了承ください。
1年間の取り組みの振り返り
冒頭の10分間、当協会の2025年1年間の取り組みについて、当協会理事の草野から紹介がありました。よろしければスライドをご覧ください。
今回のC&CHカンファレンスのテーマは
今回のカンファレンスは、“地域課題から考え直す、2040年に向けた地域医療のカタチ”というテーマで開催いたしました。
高齢化が進む2040年に向けて地域ごとに抱える課題は様々です。高齢者の増加に伴う病床機能の最適化、在宅医療への対応といった問題だけではなく、社会的孤立、経済的困窮、健康の社会的決定要因(SDH)などの社会的な課題にも向き合っていく必要があります。地域の医療を支えるコミュニティホスピタルとしてもこれらの課題への対応が求められます。

第一部 基調講演
総合診療医のための「地域分析」と「コミュニティづくり」入門
第一部は、基調講演として、株式会社メディヴァの代表取締役社長で当協会理事でもある大石さんから、データに基づいた地域診断の事例紹介とコミュニティホスピタルが果たすべき役割についてお話ししました。
昨今、社会的処方の必要性が謳われていますが、やみくもに地域での活動をするのではなく、データに基づく地域診断を行って地域の課題issueを理解した上で、地域活動に取り組むことで地域活動がより効果的になるというお話しを3つの事例をもとに紹介していただきました。
事例1)茨城県行方市
一つ目は、茨城県行方市について。厚労省の公開データと行政からのデータ定期を元に分析して自治体に政策提言を行ったものです。
行方市は東京から70km、霞ヶ浦に面していて主要な産業は農業です。人口約3万人の行方市には鉄道網がないという特徴もあって住民の移動手段は主に車になります。
数年前に中核病院の一つが経営上の理由で病床維持ができなくなって閉鎖したことがきっかけとなり、新たな病院の開設が求められるようになりました。
さまざまなステークホルダーがいる中で、議論を空中戦にさせないためにも共通のファクトが必要だったため行ったのが今回の調査分析で、その調査分析によって注目すべき重要な点がいくつか見出されました。

行方市の死因は全国に比べて、心疾患や脳血管疾患などの循環器疾患、生活習慣病関連のものが多いことがわかりました。
いきなり心疾患や脳血管疾患になるわけではないので、それに至る過程についての調査も行ったところ、行方市の後期高齢者向け健診の受診率および生活習慣病の受診率が周辺地域よりも低く、これらが循環器疾患の死亡数につながっている可能性があることがわかりました。

しかしながら、行方市にある医療体制ではこれらの疾患をカバーできておらず、脳血管疾患・心疾患の患者さんの90%以上は行方市外に通院していて、高血圧疾患も半数弱が市外に通院している状況であることもわかりました。
つまり、これらの地域課題を解決するために必要な病院とは、健診などの予防医療を含めた日頃からかかりつけ医療機関として関わり、健診受診などもサポートする病院となります。そして、車社会であることを考えると、高齢者の通院手段としてモビリティの課題を解決する必要性や、オンライン診療・在宅医療の普及を上げるなどの施策も必要になります。
現在、行方市ではこれらの課題と解決策を市長自ら市民公開講座などで発信することによって地域の状況・ファクトを市民や関係者に共有し、検討会では目線を合わせたファクトベースの議論を行っています。

二つ目と三つ目は、死亡小票分析と呼ばれる分析手法から地域課題を把握して活動した事例の紹介でした。死亡小票分析とは、自治体が厚労省から入手した死亡小票(死亡診断書が元)を元に、年齢、性別、死因(疾患)、亡くなった場所(自宅、施設、医療機関)、看取った医療機関、配偶者有無から地域の看取りの状況を分析するものです。

事例2)東京都世田谷区
東京都世田谷区は在宅医療が普及していて、自宅や施設での看取りも進んでいますが、異状死(看取り死以外で事故死などを除いたもの。俗に言う孤独死)が一定数存在することがわかりました。

特に男性の前期高齢者、女性の90才以上で配偶者がいない方の異状死です。これらの課題を解決するためには、かかりつけ医を持ち在宅医療を普及させること、本人の希望に基づいたケアが必要になります。世田谷区では自治体として、在宅医療とACP(人生会議)について、様々な施策で住民への普及啓発を行っているという事例でした。
世田谷区の在宅医療・ACP啓発の取り組みはこちら

事例3)横浜市青葉区
横浜市青葉区の死亡小票分析からわかった地域課題は、区内に在宅医療を行う医療機関が少ないこと、将来的に増加する高齢者の搬送や軽症な入院に対応できる病院の少なさでした。

これらの課題を解決するために「あおばモデル」という目指す地域包括ケアシステムに向けて地域の医師会を巻き込んだ取り組みが行われています。当協会が関わっている横浜市青葉区のたちばな台病院はコミュニティホスピタルとしてこれらの地域課題に対応していくことになります。
あおばモデルの詳細はこちら
「Why ⇔ How ⇔ What」を考える
大石氏は、その地域の特性・ニーズ・ステークホルダーなどをファクトベースで把握して地域にとってのissueが何かを明確にすること(Why)、そのissueに対してインパクトと継続性を出していくこと(How)、地域活性化や社会インフラとなる活動であること(What)、この3つを繰り返し見直し、PDCAを回すことが必要であると強調されていました。

これから地域活動を取り組もうとされている医療機関にとって、その地域の地域診断を行うことで、取り組みの糸口が見えたのではないでしょうか。
講演中、チャットでは参加者による多くの意見や情報交換がなされて盛り上がりました。チャットには有益な情報も多くあったのでその一部を掲載いたします。
●総合診療科の専攻医です。自分のプログラムではレジデントの勉強会で地域診断の仕方をやる機会がありましたが3時間での取り組みだったのでなかなか難しかったの覚えてます。地域診断大切ですね。
●「家で死にたい」という希望が、どういう状況で死にたいのか、も含めると、最後の最後まで家で死にたい方がどれぐらいいるのかは気になっています。どんな方も家で死ぬことは可能な世の中になっていると思いますが、家で死ぬことが全てではないと感じています。
●国とか都道府県のレベルで目線を合わせるのはかなり大変だなと思うことがあります。データを提供するだけでなく、それを説明したり一緒により良い地域を作ろうと伴走することが大事なんだなとお話を聞いていて思います。
●医療資源が少なくて困っている市町村とか行政や医師会などステークホルダーが困っていてヘルプを出してくれているところの方が外から入る場合はやりやすい気がしています。ただ人口が少ない離島だと介護保険サービスが経営的に成り立たなかったりすると思うので、数万人-10万人くらいの地域が上手くいきやすい印象です。都市部へは更に人口が集中していくと思うので、世田谷区や横浜みたいなところでどうやって地域包括ケアを作っていくかというのがissueだと感じています。
●やはり在宅医療の普及には大きな地域差があるのがデータ的には現状だと思います。その上で、在宅や入院や施設が、患者さんが望んだとおりに選択出来る世の中が一番大切なのだと思っています。そのためのコミュニティホスピタルだと嬉しいですね👍
●どういったデータを取るか、と言う観点も重要ですね。
最近では、在宅で呼吸数をモニタリングすることで、重症心不全の管理が改善(増悪を防いで)して、予後自体が改善された論文が日本から出ていました!
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2022/20220822kanekomakoto.html
横浜の高齢者だとこんな感じです
●分断が起きていることがissueなのか、つまり、それが患者満足度やアウトカムに直結しているのかも気になりました。「ACCCAを実装した本当のかかりつけ機能」はどこに行っても必要なのじゃないかなと思っています。
●ケアの分断の測り方はちょっと違いますが、患者アウトカムとの関連をみてるのは
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38658042/
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jgf2.651
https://www.annfammed.org/content/22/Supplement_1/6738
(最後のは学会発表ですが)
●分断することが悪いアウトカムがあるってことを示した次は、統合することが本当にいいアウトカムをもたらすのか?という話になるかなと思います(Multimorbidityへの介入というのは何をアウトカムにすべきか、どういう介入がbetterか、という議論ですね)
●「ACCCAを実装した本当のかかりつけ機能」はどこに行っても必要というのは自分もagreeです
都市部でそれを患者さんに実感として持って貰う、FACTとして出していく、というのが必要かなと思っています
第二部はシンポジウムとして、地域へのアウトリーチや地域との協業によって、様々な地域医療や地域活動を実践されている3名の演者のみなさんからのお話しいただきました。
こちらも大変興味深い発表でしたので、次回のnoteでご紹介いたします。
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