
2024年 コミュニティホスピタル簡易診断分析 C&CHレポート
今回、初めての試みとしてコミュニティホスピタル評価の簡易診断を実施しました。C&CHパートナーズの皆さんの病院のコミュニティホスピタル度を調査し、2024年版の調査結果としてまとめたものが今回の「C&CHレポート」となります。ご協力いただきました皆様には個別分析シートをお送りいたしましたが、あらためて御礼申し上げます。
PDFのダウンロードはこちら(内容は今回のnoteと同様です)
コミュニティホスピタル(C&CH)評価の取組みについて
「コミュニティホスピタル(C&CH)評価」とはコミュニティホスピタルに必要な要素について、①提供する医療の質、②組織体制、③教育体制、④地域連携の4つの軸から評価するものです。現状を可視化して、成長していくためのツールとして開発し、当協会でかかわっているコミュニティホスピタルにおいて活用しているものです。今回実施したのはその簡易版となります。
調査概要
2024年11月に実施したC&CH簡易診断には、法人・個人パートナーから合計37病院のエントリーがありました(個人パートナーからは勤務先病院等の診断)。今回は法人パートナー19病院について集計しました。
調査結果(総評)
結果を集計したところ、法人パートナー19病院平均で「総合評価:2.6/4.0」という結果になりました。※個人パートナーによる診断結果もほぼ同スコアでした。

調査結果(詳細)
1.組織運営について
組織運営については、他の項目に比べて相対的に評価が低かったことからどの病院も課題を抱えていることがわかります。特に必要な人員体制・適切な業務執行(組織体制)と(業務改善)については全項目で最も低い評価項目となりました。フリーコメントもこの項目の記載が最も多く、多くの病院で課題を抱えていることがわかりました。コメントを分類化すると下記のような内容になります。現場中心に医療・ケアの実践はなんとか行えているものの、病院全体の組織マネジメントに課題があり機能不全で起こり、生産性が上がらなかったり、変化に対応できないなどの状態に陥いり、現場が疲弊していることが想像できます。
●トップにビジョンがない、理念を病院全体に浸透させることが難しい
●管理職がマネジメントを行えていない(認識不足、スキル不足)
●各部署でのマネジメントはできているが、病院全体で動けていない
●情報共有されない、意思決定できる会議体が無い
●部門間でコミュニケーションが悪い、連携で軋轢が生じる
●意見が言いにくい風土
●現状からの変化することへの反発
●人員不足、職員の高齢化、退職者・休職者が多い




2.教育体制について
教育体制については、(看護師・専門職の育成)が全項目の中でも比較的高い結果だったのに対して、(医師の育成)については全項目の中でも最も低い結果で、取り組みができていない病院が多いことがわかりました。医師の育成ができていない理由について、フリーコメントを分類してみました。コメントの中には、指導医に頼らない研修の習慣をつくっている病院もあることから、決して指導医が必要なわけではなく、まずは教育を病院の文化として位置づける必要性を感じました。
●病院として医師教育に対する意識が低い
●教育の必要性を感じている医師が少ない
●指導できる医師の不在
●外部からの情報不足(学会、研修への不参加)
●時間的余裕がない、人員不足、研修制度等の支援不足
●継続的に教育し続ける仕組みがない
●部署・職種間で実施状況が異なる


3.医療・ケアの質について
医療・ケアの質については、外来、入院、在宅医療の順で取り組みができているという結果でした。入院・在宅医療・外来すべてで診療機能の提供(提供可能な機能)および医療依存度の高い患者への対応(医療提供範囲)はできているものの、地域における医療・ケアが届きにくい集団への対応(全ての人への医療・ケアの提供)については対応が十分できていないという病院が多いという結果となりました。
(入院)
一般的な総合診療で対応可能な医療課題への対応は近隣病院との連携を含めて実践できるているという回答でした。一方で(全ての人への医療・ケアの提供)の取り組みがまだできていない、あるいは途中の病院が半数以上でした。経営的な問題から病床稼働率を一定以上に維持するために、入院を優先せざるを得ないという問題意識を書いてくださった方もいました。
●肺炎や心不全で入退院を繰り返す患者も多いため、入院、外来、在宅の連携は密に円滑にしたい
●入院から在宅へのシームレスな移行など切れ目のない医療提供体制の構築が課題
●多職種連携の促進/円滑なコミュニケーションと連携が不可欠だが調整が難しい
●入院診療収益の比重が高いため、入院医療を優先せざるを得ない
●総合診療マインドと技術をもった医師の確保



(在宅医療)
ほとんどの病院で在宅医療を実践(提供可能な機能)し始めているものの、24時間・看取り対応(医療提供範囲)については完全に二極化しているという結果でした。これらは在宅を行う医師が充足しているか否かが影響しているようでした。また、複雑困難事例、認知症/精神患者等への対応(全ての人への医療・ケアの提供)は行えていないという回答が多かったです。
●人手不足ゆえに受け入れ範囲が限られる
●緊急時の訪問診療対応に限界がある
●訪問診療件数が多く短時間の診療になってしまう
●24時間往診体制の維持が課題



(外来)
外来については、多くの病院が週4日以上のかかりつけ機能を果たしていることがわかりましたが、一方で、外来を担っているのが非常勤医師のため継続性に課題がある、プライマリ・ケアの意識の低い臓器別専門医が外来を努めていることが課題である、小学生以下が対応できてないなど、課題についてのコメントも見られました。また、複雑困難事例、認知症/精神患者等への対応(全ての人への医療・ケアの提供)は行えていないという回答が多い結果となりました。
●医師が非常勤の臓器専門医/プライマリケアの意識のない医師/非常勤が多く継続性という点で課題/医師ごとの裁量によっていて病院として対応できる体制にない
●再診患者の慢性疾患についてのみ対応
●15歳以上に限定した対応(最低、小学生以上には対応したい)
●新患・初診患者の診療体制は構築されておらず
●病院全体としてプライマリケア全般に対応できていない
●外来における多職種連携をした包括的な医療ケアに課題
●複雑困難事例や認知症/精神疾患など包括的な対応に課題



4.連携・コミュニティ活動
連携・コミュニティ活動については、院内連携による統合的な医療・ケアの実践については約70%の病院が実践できているという回答でした。一方で、地域住民参加型の活動は多くの病院で実施できていませんでした。地域活動ができていない理由は、人手不足、個人的に動いていて、組織的に動く仕組みになっていない、病院として地域活動に対する意識が低いなどでした。
●病院の意識が不十分
●地域ニーズの把握/どんなニーズがあるのかが分かりにくい/本当のニーズに繋がっているのかわからない
●人材確保/院内のスタッフをどのように巻き込み持続的なものにするか
●有志による活動のみで病院としての活動になっていない
●地域づくりのエキスパートらに支えられて運営している
●効果の可視化


まとめ
今回、初めての試みとしてコミュニティホスピタル評価の簡易診断を実施しましたが、いくつかの得た気づきを共有します。
医療の本分である「医療・ケアの質」についてですが、外来・入院・在宅医療といった機能の提供(提供可能な機能)は多くの病院で実践できているものの、医療依存度の高い患者への対応(医療提供範囲)、地域における医療・ケアが届きにくい集団への対応(全ての人への医療・ケアの提供)などのに対する取り組みができていない医療機関は多くあります。
このように現状アプローチできていない患者像に対応するためには現状の診療体制の見直すことに加えて、現状の得意とする診療範囲以外の知見の確保、多職種協働の促進、組織体制の整備や業務効率化など、組織的な取り組みが必要であると考えられます。実際、(組織運営)のスコアが高い病院は少数でしたが、それらの病院の多くは(医療提供範囲)(全ての人への医療・ケアの提供)について実践できていると回答していました。
今回のレポートには詳細を掲載しませんでしたが、詳細項目ごとの相関を調べたところいくつかの項目については強い相関関係が見られました。今後、さらに調査を進めて、項目ごとの関連性などを紐解くことで、コミュニティホスピタルに近づけていくための要点や、望ましいステップなどを見出していきたいと考えています。
また、今回使用したC&CH簡易診断の指標については、現時点で当協会が重要と判断した項目ではありますが、この項目の妥当性については引き続き検討が必要であると認識しています。今後、皆様の協力を得ながら、より使える診断ツールに育てていきたいと考えています。
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今回はコミュニティホスピタル診断についてご紹介しました。
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