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コミュニティホスピタル進化の取り組み 水海道さくら病院の記録②「下り搬送の受入強化」.

2022年4月に同善病院から始まった「コミュニティホスピタル構想」。2024年4月からは茨城県常総市の水海道さくら病院の医師体制を強化してコミュニティホスピタル化を一段進化させる取り組みが始まっています。その取り組みについて2回目の紹介です。
1回目の報告はこちら


こんにちは。水海道さくら病院、経営企画室の髙橋です。
2回目の報告である今回は、当院がコミュニティホスピタルへと変化していく具体的な取り組みとして「暮らしに近い場所での医療の提供を目的とした下り搬送の受入強化」についてご紹介したいと思います。

以下の4点について順にご紹介します。
1.水海道さくら病院の地域連携の取り組み
2.暮らしに近い場所で医療を提供するための下り搬送受入強化の背景
3.三次救急医療機関へのヒアリングとシステム作り
4.地域包括ケアシステムの拠点として高度急性期と地域を繋いだ実例


1.水海道さくら病院の地域連携の取り組み

当院は病床数93床の中小病院です。
地域住民の皆様の健康を守り続けるためには医療機関はもちろん、介護保険サービス、福祉サービス、行政機関、学校などの教育機関、自治会といった多くの方々との連携が必要であると考えています。

そして、今後さらに地域連携を強化するために、2024年7月より地域連携室長(同善病院で言うコミュニティ支援室/CSR)に総合診療医である小嶋先生が就任しました。

院内、院外の連携を多面的に強化することが目的ですが、その中でも注力したのが、高度急性期との連携を強化する「下り搬送の受入強化」です。

2.暮らしに近い場所で医療を提供するための「下り搬送受入強化」の背景

近年、高齢者の人口増加に伴って高齢者の救急搬送が増加し、中でも軽症・中等症が増加しています。その結果、高次の医療機関の病床を圧迫する恐れがあり、高次の医療機関からの転院搬送の促進の必要性が指摘されています。
そこで、高次の医療機関と地域の一般病院が日頃から連携関係を構築して、高次救急病院に搬送された患者について「連携する一般病院でも対応可能」と判断された場合に「転院搬送」する「下り搬送」の促進が必要であり、2024年度の診療報酬改定でもこの「下り搬送」に対して評価がなされました。 


当院は救急車の受入も行う二次救急医療機関ではありますが、休日・夜間の救急医療体制は十分ではないために、休日・夜間については、隣接市であるつくば市の三次、二次救急医療機関に対応をお願いしている状況です。

このような状況下で、当院としてできることするべく始まったのが「下り搬送受入強化」プロジェクトです。
つくば市の三次、二次救急医療機関が休日・夜間に重症患者を受け入れることができるベッドを確保できるように、当院への「下り搬送」を促進させる。それによって自宅に近い地域で、患者さんの病状や自宅での療養環境に合わせて、最適な医療を受けられるようにすることが当プロジェクトの目指す形です。

3.三次救急医療機関へのヒアリングと【早期転院システム】の構築

隣接市のつくば市にある三次救急医療機関に訪問し、救命救急センター長にこの提案をしたところ、「軽症や中等症に区分される救急搬送患者も多く水海道さくら病院のできる範囲で治療を引き継ぎ、早期に転院できるシステム(下り搬送)を構築できると良い」という前向きなご意見をいただきました。

早速翌週に、当院の地域連携室長がこの三次救急病院のベッドコントロール会議に参加させていただき、「依頼から5営業日以内に転院する【早期転院システム】の流れ」を構築することができました。

三次救急医療機関のベッドを1床空けられるかどうかが1人の患者さんの命を救うことに繋がる、、、と考えて、この「早期転院システム(下り搬送)」では「意思決定のスピード」を重要視することにしました。具体的には、
 ・地域連携室長である医師に意思決定の権限を付与
 ・意思決定者である地域連携室長に直接依頼
 ・必要最低限の情報で受入判断
の3つを大切にする仕組みを構築しました。

当院からの退院先がどこになるのか、患者様やご家族様が今の病状や今後の見通しをどのようにお考えなのか等、確認したいことは多々ありますが、できる治療を行って入退院支援やリハビリを一手に担うことが地域包括ケアの拠点である当院の責任と捉えています。


4.地域包括ケアシステムの拠点として高度急性期と地域を繋いだ実例

実際にこの早期転院システムを活用して(5営業日以内に転院とはなりませんでしたが)6営業日で転院となった事例がありました。

X月Y日16時に三次救急医療機関より地域連携室長に直接電話での依頼があり、院内の確認を終え16時10分には受入可能と判断、16時20分には4営業日後の転院可能日が決まり三次救急医療機関にご返答となりました。
その後、ご家族の都合で6営業日での転院となりましたが、早期転院が実現いたしました。

このシステムにより、三次救急医療機関はより高度急性期に注力することができ、当院は治療を継続しながらリハビリと入退院支援を行うことで高度急性期と地域を繋ぐ役割の一端を担うことができたのではないかと考えています。

この取り組みは動き出したばかりでまだまだ課題も多くありますが、高度急性期以外のすべての医療、リハビリ、栄養管理、介護などのケアをワンストップで提供する地域包括ケアシステムの拠点病院であるコミュニティホスピタルとして重要な取り組みです。
今後も地域包括ケアシステムの拠点として高度急性期と地域を繋ぎ、「治し、支える医療」を提供できるように歩みを進めていきたいと思います。

次回もコミュニティホスピタル転換の取り組みをご紹介していきます。


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