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第154号(2021年11月22日) 中露爆撃機尖閣接近の意味 松輪島に新基地が出現

【今週のニュース】ロシア軍の対潜戦訓練と衛星破壊実験

北方艦隊で対潜戦訓練を実施

『TASS』2021年11月20日

 20日、北方艦隊広報部は、バレンツ海で対潜戦訓練が実施されたことを明らかにした。発表によると、この訓練は攻撃型原潜と弾道ミサイル原潜(SSBN)の対抗訓練であり、この過程では潜水艦から水上艦艇に対する魚雷攻撃訓練が実施されたほか、SSBN自身も魚雷使用を行なったとされる。
 以上の内容から判断するに、おそらくはSSBNを狩り出そうとする外国原潜への対処が主な想定だったのだろう。
 通例で言えば、ロシア軍は9月に軍管区レベルの大演習を行った後の11-12月ごろに大規模な戦略核部隊演習(2019年以降は「グロム」の名称が付けられている)を行うことになっているから、今回の対戦訓練はその前段階に当たるものである可能性が高い。おそらくは大陸間弾道ミサイル(ICBM)や戦略爆撃機と並行してSSBNによるミサイル発射訓練が実施されることになろう。
 太平洋艦隊でも、955型SSBNのうち1隻が今月に入ってからミサイル装填埠頭に入ったことが衛星画像から確認できるので、オホーツク海側でも同様の訓練が予期されよう。

衛星破壊実験を実施

『TASS』2021年11月16日

 日本でも大きく報じられているとおり、ロシア軍は15日に衛星破壊実験を実施した。標的となったのは、機能停止していた11F619ツェリーナ-D電子偵察衛星(1982年打ち上げたコスモス1408)で、ロシア国防省は他の衛星に対する脅威はないとしている。ただ、米国はこの実験によって1500以上のデブリが発生したと主張しており、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士が脱出ポッドに避難するという事態も発生した。
 この実験に使用された対宇宙システムが何であったかは公表されていないが、ロシアの有名軍事シンクタンク「戦略技術分析センター(CAST)」は、これが14Ts033ヌードリによるものであったとしている。

 今回使用された対衛星ミサイルはロシア北部のプレセツク宇宙基地から打ち上げられたとされるが、過去9回のヌードリ発射試験が多くは同基地から行われていることも以上の推測を裏付けよう。
 いずれにしても、軌道上で衛星を物理的に破壊するというのはヌードリの実用化に向けた試験プロセスの最終段階であると考えられ、長らく謎に包まれていた同システムが近く実戦配備される可能性は今回の件で大きく高まったと見ることができよう。

【インサイト】中露爆撃機尖閣接近と松輪島への新設建設

竹島への中露爆撃機接近が意味するもの

 11月19日、ロシアのTu-95MS戦略爆撃機と中国のH-6爆撃機各2機が日本周辺で合同パトロール飛行を実施しました。
 また、18日午後5時から7時に掛けては中露の艦艇計3隻(中国艦2隻、ロシア艦1隻)が対馬海峡を通航しており、これも爆撃機による合同パトロールと連動していた可能性が考えられるでしょう。
 中露は2019年に爆撃機の合同パトロール飛行を開始し、これまでは年に1回のペースで実施されてきましたが、今年10月には中露の艦艇計10隻が合同で日本周辺を一周してみせたことは本メルマガ第152号で紹介したとおりです。そこで実施されたのが今回の第3回合同パトロール飛行なわけですから、中露の合同活動は頻度と複雑性を増していると評価できそうです。

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