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必ずブランディング通になれる、3分で読めるエッセイ〜ブランドのチカラ ⑭

「広告の時代は終わった。これからはPRの時代だ。」とか「我が社はPRの部署を充実させて…」とかPRという言葉を実によく耳にします。宴会の場所ですら「自己PRを宜しく」みたいに言われて、もうPRという英語は「グルメ」とか「ホビー」とかという言葉と同じく一般化し流通しているんですね。でもPRってなんの略なんでしょうか。


  PRが相等する英語はPublic Relations。研究社新英和中辞典では「1. 広報、宣伝、渉外事務   2. (企業などの) 対外社会関係、世間に対する受け」とあります。幅広いです。2の対外社会関係、世間に対する受け、というのは辞典の会社にしては表現がおかしいと思いますが、要は会社の広報活動ということでしょう。

  「広告の時代は終わった、これからはPRの時代だ」というよく言われる台詞はPRが宣伝を意味するならば、(宣伝を宣伝広告の略と捉えるならば) 自家撞着してますよね。

  それほどPublic Relationsはカバーエリアが広いんですね。どちらかというと国家や公的機関の行う政策に対する国民の理解を促進する広報活動、という意味が元々は強かったはずだと思います。Publicというのは消費者というより「公 = 国民」ですから。

  それはさておき、もう一つ同義の英語があって、これはPublicity です。研究社新英和辞典では「宣伝・広告・公表」とあります。「公」感はないですね。我々が普段無意識に使っているPRって言葉はこちらのPublicityの方が近いと思います。それにしても宣伝広告と言ってるんだから、「広告の時代は終わった…」はこちらの意味でも自家撞着してますよね。

  重箱の隅をつつくつもりはありません。広告とPRの境目というのが実は本質的なイシューを孕んでるんだと私は確信しているんです。

  宣伝広告をテレビ、新聞、雑誌のマスメディアという視聴者、読者数の多いメディアで広告主が作った素材を流すものとします。今はこれにデジタルメディアが加わります。

  デジタルメディアは細分化されているのでマスメディアとは言われませんが、同一素材を流す場合を考えると足しあげればデジタルも新時代のマスメディアです。

  この場合マスであれ、デジタルであれ共通因子は「企業側の作った素材を消費者に一方通行的に流通させる」ということになります。

  ではPRについて考えてみます。ひとがPRという時に無意識に想定するのは先述の広告以外の手法で企業側が、記者発表&リリース、加えて例えばイベントや芸能人を使った観光大使とかベストファーザー賞とかの推奨方法で、これをメディアに取り上げてもらい販促をすることではないでしょうか?

  一定のフォーマットで作られた素材とそうではないことの違いはありますが、実は企業発信という意味では同じです。

  意地の悪い見方かもしれませんが、受け取る側は「上手いこと言って…」とか「お金貰ってるから観光大使やってるんでしょ。実際に何回行ったことあるのかね…」と感じる人も少なからずいるんじゃないでしょうか。

  私はブランディング3K説((私の個人的な持論です。😁))というのを信奉してるんです。ひとがブランドのEmotional Benefitに影響を受けていくには段階があって、それは 1) 好感 2) 共感 3) 共振 の3つのKの三段階です。

  まず「イイね」と好感し、使用経験するうちに更に高まりブランドの目指すところ、志に共感する。そして遂に不動の熱狂的ファン = evangelistになっていく…という段階論です。

  広告もPRも1)の好感をまず醸成するのがミッションなんだと思います。「いや、広告のミッションは売上を上げることだよ!」と仰る広告主の声が聞こえます。☺️

   もう広告代理店を辞めたので忖度抜きで言うと、それは違います。好感を作るのが先です。好感ファースト。売上はその結果です。

  故梶祐輔((1959年にデザイナーが中心となって設立した広告デザイン制作会社日本デザインセンターの創立メンバーのひとり。1964年東京オリンピックのイメージポスターを制作した亀倉雄策を始め錚々たるクリエイターが在籍した。))さんが名著「広告の迷走」で以下のように喝破しています。

  ”ふたたびぼくは「広告とはなにか?」を問いたい。すでに明らかになったように、広告は商品を売らない。では、広告は何をするものなのか。結論を急げば、広告は消費者やステイクホルダーとの「信頼関係をつくるもの」なのである。一歩進めて言えば、広告は「長期にわたって商品が売れ続けるために絶対不可欠な信頼関係をつくるもの」なのである。”

  慧眼名言だと私は思います。氏は広告をブランディングそのものと捉えていました。文中の広告という言葉をブランディングと差し替えるとそれが浮かび上がります。「ブランディングは商品を売らない。ではブランディングは何をするものなのか。結論を急げば、ブランディングは長期にわたって...」。

  梶さんが同著で語ったことは今日でも実に示唆に溢れてい、目鱗な金言に満ちているので、改めて別コラムで詳しくご紹介したいと思います。

  氏がこの著作を世に問うたのは2001年、まさに世がバブル崩壊後に迷走していた時代です。
テレビコマーシャルが以前のように効かなくなったと広告主の間で言われ始めた頃でもあります。

  好感を醸成するに一番大事なことは「嘘はつかないこと」です。盛っちゃってもダメです。「上手いこと言っちゃて」「本音は違うでしょ」と見抜かれたら終わり。

  梶さんが言った「信頼関係をつくるもの」的にみると信頼関係は見抜かれた瞬間に瓦解します。オワリデス。好感出来なくなります。

  今の消費者はヨコで繋がってるし、大抵のことは「ググれば」分かります。広告やPRで「上手いこと言っても」等身大がバレちゃいます。じゃどーすんの!?...ですよね。

  次回はそこを掘っていきたいと思います。

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