葦

私たちは何も言わない葦だ ただそこに揺れているだけで飾りにすらならない 気にかけても貰えず あることすら認められず 我をはれば疎まれて 刈り取られてしまうばかりの弱い葦だ 私たちは唖のように黙り 息を殺して生きている 考えてないふりをして 知恵のないもののように見えるには どうしたらいいかと考えている 聞こえてないもののように振る舞い 本当に耳に蓋をしている 私たちは牛のようにのろく 呑気に草を喰んでいる 日がな一日同じところで ただひたすらに喰んでいる 咀嚼するのが難し

その87

その87

閃光の如く、先行に先頭を走っていた。 それが5年続いた。俺の足の速さに勝てるやつはいなかった。 だが、6年になったある日、そいつは現れた。人間は日々成長する。この時期の子供の成長はすさまじいものだ。 今まで見向きもしなかったメガネのガリ勉。そいつが俺の輝かしい記録を抜いていった。 あの日はいつものように校庭で横一列に並び、俺は合図を待った。皆が期待していた。俺は俺との勝負のみを楽しんでいた。自己ベストを超えるために走っていた、他はいないものだと思っていた。 「いちにつ

路上

路上

「路上」という曲がある。それをもとにして、お話にしようと思う。 序文 俺に憑り付いているっていうカルマによると 俺は人違いで死ぬらしい 冗談じゃねえ。そのご指名自体が人違いだぜ。 俺がまだずっとガキの頃に聞いた話だ 俺の曾爺さん、いつも通らない道を歩いてて 崖崩れに待ち伏せされて死んだ。 あれは人違いみたいなもんだって 近所の爺さんがよく話してた。 俺の叔父さんは一字違いで マオイストの活動家ってことで引っ張られ もう8年連絡が無い 今は言わなくなったけど 親父

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「あの日の行方」第五章(終章)果て果て・二

「あの日の行方」第五章(終章)果て果て・二

     二  番茶のポットの表面へ、水の粒が溢れていた。浮き上がって、耐えられずに滑り落ちて、他の粒を巻き込みながら線を描く。ポットの周りは水溜りである。膳の上には他に、胡瓜がまだ置かれたままで、後は空のグラスが二つである。中野はもう少し安心させて欲しいと思った。 「根拠は。あるんですか。根拠が知りたいです」  門前はポットを取り上げると自分のと、中野のグラスへお代わりを注いで、それを膳に下ろしながら口を開いた。 「金のなる木だよ」 「はい?」  中野は遠慮なく語尾を上

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街風 episode.20 〜GOOD NIGHT、GOOD BYE〜

街風 episode.20 〜GOOD NIGHT、GOOD BYE〜

 「本当にこれで良かったのか?」  「ああ、付き合ってから今までもずっとあいつの心の中心にいたのはノリだったし、それを上書きする事はできなかった。だから、プロポーズだって一か八かの賭けだったんだ。でも、それよりもノリと再会したことが大きかったんだろうな。」  ケイタの頼んだ飲み物が来たので改めて乾杯した。  「遅れてごめんな。で、ユリエさんは今どうしているんだ?」  気まずそうにケイタが聞いてきた。  「俺と別れた足でそのままノリのお店へ向かっているんじゃないのか?

ファインドアウト for that

ファインドアウト for that

解像度を上げる為に 君は心の目を開いているか? 同調圧力なんて ちっぽけな虚構の力に惑わされない 真実の力 そいつを見つけ出さない限り 君の心は五里霧中 いつまでたっても 自分の魂に出会えない ようするに笑顔が善って 感覚を捨てろ 考えじゃないぞ? 感覚だ 暖かい灯に反応するなら お前は結局また奴らに負けるんだ 何度同じことを繰り返す? お前の渇望を満たす水を 奴らが用意できないことに いつ気付く? お前が選んだ炎は お前の中の現実を溶かしていく 他に歩ける

燕去月

燕去月

大学最後の夏のある日、二人は古いマンションの一角の家にいた。軽音サークルの仲間でもあり恋人未満友達以上のいわゆる今どきの関係のような印象だが、この二人は違った。 今時の子は…と書いたが今時とは若い世代をその時代を示すもの。誰でも今どきを通過するのであろう。今時だから多く受け入れられる反面、昔今どきだった世代からは顔をしかめられる存在のようにも思う。必ずしもそうではないが。 朝焼けがまだ青の世界の時、ふと夏菜子は窓の外をみた。『ここはどこだっけ…海の中に放りだされたような世界

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やりたいことリスト3

やりたいことリスト3

リスが見れる場所とは、カフェのことだった。 少し前の猫カフェブームにでも乗ったのだろうか。しかし、店名が「リスCafe」とはまたそのままだなぁ。リスが見れるカフェなんてそうそう無いから、区別する必要がないのか。そんなことを思いながら店内に入る。 「いらっしゃいませー、2名様でしょうか?」 「はい」 出迎えてくれたのは、30代前半くらいの少し太った女性だった。店内は一見すると昔ながらの喫茶店にしか見えないが、確かにリスがちらほらいた。僕らの他には、カウンターのところにマスタ

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色に沿う

色に沿う

自分が寝ている家が見える。 僕は群青色の朝に居る。音はなく視点は動かない。 僕は確かにその家の自室のベッドで寝ている。 それと同時にその家を見ている。 この映像は誰が見ているものだろうか。何故僕に見えているのか。 僕の魂ってやつが抜け出したのか。 それとも単なる夢だろうか。 次の瞬間、意識がベッドの上に移る。毛布の肌触りが心地いい。 鳥がピーユルッルッルピーユルーリッリッルと鳴く。 ベッドからゆっくり体を起こしカーテンを開ける。寒い。 辺りは群青色のまま何かを待っている。風の

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短編小説 後悔

短編小説 後悔

君は嘘つきだねと言う。彼女は何が悪いのかしらと上から目線で言う。僕はそうなんだと冷たく返すと、その返答に彼女はこちらを見てポカーンと口を開けていた。その反応をみた僕は笑った。すると彼女が 「何が面白いのよ」 と言ってきた。「初めて出会った時もそんな顔をしていたのを思い出したから懐かし反応をみて笑っていたんだ」と言うと彼女も「そういえば私達の出会いって最悪だったわよね」と言ってきたのでものすごく深く頷いた。 僕と彼女は市の図書館で出会った。もう4年前の事だ。 ファーストコ