小説|マフラーは蛇のように

「マフラーは蛇の仲間です」。少年は図鑑に記されたその一文を指でなぞりました。色とりどりのマフラーが頁を彩ります。少年は続きを読みました。「冬にマフラーは冬眠します。人は冬眠したマフラーを首に巻きます」  冬。初めて買ってもらった青いマフラーは少年の宝物になりました。冬眠しているマフラーは大人しく少年の首に巻かれます。嬉しくて少年は口笛を吹いて町を歩きました。家に帰ると少年はマフラーと布団で眠ります。  深夜。布団で温まったマフラーは冬眠から目覚めます。少年も起きます。窓外

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雪の花のような

真っ白な花瓶を買いました。 かすみ草にもぴったりのお洒落な花瓶。お値段なんと300円。こういう素敵なアイテムとの出会いも、なんだか嬉しいものですよね。 ここ最近、noteを読んだり書いたりがあまり出来ていないのですが、一生懸命に短編小説を書き上げている最中です。いいねを下さっている皆さま、なかなかお返しにいけなくてごめんなさい。 短編小説の執筆具合をご報告すれば、物語がいよいよラストに差し掛かるところまではなんとか筆が進んでいます。ただ、読み返してやっぱりここは修正しよ

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クリエイティブでもない時間

映画や小説にもならないシチュエーション 西くんは歳下だけど 会社では先輩で、何かと面倒を見てくれた 互いに「親友」と公言していた 年末のプチ忘年会で、西くんは理不尽な攻撃を受け わたしはその場に五千円を置いて 西くんの手首を掴み、タクシーへ乗った 「星が綺麗な場所へ」とドライバーに告げると 星が空から迫ってくるような野原に到着 プチ忘年会での愚痴を忘れるだけの、圧巻の夜空 しかし 自分達の居る場所がどこなのか、分からない 歩いても駅がなく、バスはとうに無くなっていた

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流星葬【短編小説】

(※創作大賞に応募するため過去作を再投稿したものです)  長らく音信不通になっていた父の消息が分かったのは先月のことだ。父は僕が十八歳の時に、僕と母を捨てて女と逃げた。行方をくらまして以来、二十二年が経っていて、霊安室に横たわる老人の遺体を見てもほとんど実感が湧かなかった。  遺体が発見された時、枕元には僕宛の手紙と、とある葬儀業者のパンフレットが入った封筒があった。手紙が入っていた封筒に書かれている連絡先は僕の現住所で、父がそれを知っていたことに驚いた。母が亡くなった時

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『ハイクサークル 12月』 月報

ハイクサークル 12月  月報 note ハイクサークル 2021年12月の活動記録です ◇ サークル主宰者作品 ◇ 〜10句〜 奈良になお歴史降りつむ雪だるま ぜんいんは僧にならずよ京しぐれ さまざまなけはいのなかか浮寝鳥 けさの雪ひとひらずつが幸になれ あしあとよのぼったひとに雪の山 ホットティーノートパソコン茜空 飛びたってむすうのかげよ浜千鳥 屋根屋根に鐘の音ひとびとに聖夜 さっそくに空を晴らして門松立つ 灯にれきし国にれきしよ除夜の鐘 Ku

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とても澄んでいて、すごくきれいなもの

 とても澄んでいて、すごくきれいなものを拾った。  冬の、雲ひとつない天気のいい日だった。  わたしは地面に這いつくばっていた。波の音が聞こえる。海の近くの護岸を歩いていたら滑って転んだ。これほど派手に転ぶのは子どものころ以来だと思う。  昔は、もっと転んでいた。膝を擦りむいたり、手を擦りむいたり。  大人になって久しぶりに転ぶと地面の固さに驚く。もちろん、そこが護岸で、コンクリートで固められているからというのはあるけれど、地面はとても大きくて、わたしの力なんかではびくともし

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ふくら雀

ふくら雀って寒い冬に自分で空気を身体中に取り込みマイ・ダウン・コートにしているのですね。私の描いたふくら雀はそんなに膨れていませんが。。。 ふくら雀は喜字で福来雀とか福良雀と書くそうです。このおめでたい字に変えることは昔からよくありました。比叡山はもともと日枝山と呼ばれていたそうです。比叡の叡は「聡明なこと」「天子の行いに敬意を払うこと」という意味で延暦寺が建立されると比叡山に変わっています。 因みに比叡山には神社もあり日吉大社といいますが、この日吉ももともとは日枝から始

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短編小説|海のお仕事

 知り合いにこの仕事を紹介されてよ。荷物を渡されたらボートで海に出て、沖合の指定された座標に落とす。こんなんでいいのか、ってぐらい簡単で金払いもいいのよ。  以前の俺は飯も食えないぐらい金に困っていた。ろくな仕事は見つからないし、自己破産したばっかりだからキャッシングも使えない。この仕事がなけりゃあ、野垂れ死んでたな。  大体は保冷ボックスを渡されんだけど、あれって海に落としても沈まないんだよ。発信機みたいのも入ってて、後で誰かが拾いに来てるんだろう。大方、薬物とか拳銃と

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みこりんの大冒険

【注意】この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません【注意】  ドカーンッ!  遠くの方で爆発音がした。 「キャーッ」  なんでかどうやってもフィットしないヘルメットを両手で押さえながら慌てて違う掩蔽壕に向かって走る。  ッタタ、タタタタタタタタタ……  周囲に充満するマシンガンの音。  あちらこちらにキノコ雲のような、オレンジ色の爆炎が上がる。 「ヒーッ」  爆弾が投下されるたびにみこりんは逃げ回る。あちらの掩蔽壕、こ

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命名、『夏ゲーム』!!

十六夜である。昨夜は凍結路との格闘に心身を摩耗し、すっかり空を見上げることなど忘れていた。今日は日中少しばかり陽がさし、気温も0度より上がったものだから大通りの雪はおおよそ溶けて、キラキラ輝く午後のコンクリート・ロードにしばし、夏を連想などしていた。凍結していない道路とはなんとも走りやすいことか。帰り道にも余裕がもどり、コンビニに寄っては体があたたまるとちょこさんに教えていただいたので、ホットココアを買っては空を眺めていた。 と、ふとそのフロントガラス越しに、見た目にはわか

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