金言301:名刺

会社が支給する名刺はもちろんのこと個人が私用で使う名刺も、年賀はがきの裏面を印刷するのと同様、一昔前までは印刷屋さんに依頼するのが普通でした。高機能・低価格の家庭用インクジェットプリンタが手に入るようになって、状況が変わりました。プリントゴッコの謄写版印刷からはじまった家庭用プリンタの需要は、デジタルカメラの登場で、急増しました。今では年賀はがきやスナップ写真は家庭用プリンタで出力するのが一般的になっています。その流れで、簡易な名刺は家庭用プリンタで印刷が可能になりました。

1)ビジネス用名刺の社内制作
商談相手が自作の名刺を差し出したのを始めて見たのは、平成に元号が変わってまもなくの頃でした。同じ会社の3人が違うデザインの名刺を出してきました。名刺は制服のようなもので、会社の顔のひとつとして、見た目やインパクトより統一性が基本であった頃です。名刺は制服同様会社から支給されるもので、使う本人の好みに合うか否かは問題外でした。その常識を逸脱したクリエイティブな会社がありました。今では、キンコーズなどのビジネスコンビニやオンラインプリントサービスが定着し、何でもできるようになりましたが、当時はまだMSDOSの時代で、個人がデザインして手軽に出力する環境はありませんでした。その制約下で、社員がそれぞれ自作の名刺を使う費用をその会社は認めていました。名刺は従業員の好みを反映させてバリエーションを許容する会社があるとしたら、今なら、従業員はデスクのそばにあるプリンタをつかって自分好みの名刺を制作することができます。

2)キャンペーンバッジ
ファミリーレストランや銀行をはじめ多くの企業でセールスキャンペーンなどを展開する際、従業員は、制服の名札のそばにキャンペーンバッジやタグを着用します。サンプルを現場の従業員に見せたときに、実際に経験したことがあります。社章や名札のデザインが制服に合わないと文句をいう従業員はいないと思いますが、キャンペーンバッジが制服の色に合わないとネガティブな感想を述べた従業員がいました。だからといって、従業員の好みに合わせて多様なデザインを認めるわけにはいかないと思います。

3)部門別の名刺デザイン
組織の一部がその得意分野に集中して分離独立するとその新しい組織には名前がつきます。会社には特定の業務を担当する複数の組織が、全社の事業目標達成に向けて有機的に連携して活動しています。それぞれの組織のミッションを視覚的にアピールするツールのひとつに名刺があるとしたら、例えば、事務方、営業、法務、経理、購買など、その組織に属する従業員の名刺は、その活動目的を視覚的にも表現するデザインに変更することは、一定の効果を期待できる仕掛けになるかもしれません。

4)補足
ひとつの企業に長く在籍すると、入社から退社まで同じ部署同じ肩書きということはありえないでしょう。人事異動で所属先が変わったり、昇進降格でタイトルが変わったりすることがあるはずです。その際、顧客や取引先に少しデザインを変えた名刺をだせば、変わったことをより強くアピールできます。同じデザインの名刺で、何文字か入れ替わった程度の名刺では、常連客は新旧の名刺を比較して違いを見つける苦労をしなければなりません。

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