バブルの頃#175:終わりの前兆

ITバブルの時、IPOに向けた経営基盤整備のなかで、レジャー産業出身者が異業種である情報処理の会社に職を得たわけですが、4年過ごした後、この会社は終わりそうと感じ始めました。会社は20年近く、親会社からの仕事をこなして、キャッシュフローの体力をつけ、株式公開という目標を達成しました。その後、持ち株に資産を投入した社員の期待とは違う方向に会社が進んでいくような経営判断がいくつかあり、疑問を感じた幹部社員は株を手放し始めました。上場目前に、ストックオプションをもらっていた幹部社員が流出したのは、今から思えば、終わりの前兆であったようです。

チーズを探す3匹のネズミの小話が一時ベストセラーになりました。社員としていつまでチーズにありつけるかを漠然と考えていた時でもあり、意思決定の背中を押してくれました。このままでは、会社延命のために、間違いなくリストラを経験します。これは何よりも大切にしたい、「誇り」を傷つけます。この傷は自分にとっては致命的であると確信していました。いつからか忘れましたが、誇りとか美学とかを優先していました。

初めての外資企業で、日本の代表が「名を惜しむ」と一言もらしたことがありました。アトランタで、美味しい日本市場をだれが担当するかという覇権をめぐるドラスティックな動きがあり、体調を崩して会議・会食を欠席したら、次はないという緊迫した力関係のなかでの発言でした。内部闘争をしのいで、上司が日本代表のポジションを確保してくれないと、部下のデスクもなくなります。このときは、自分のポジションについても覇権争いが生じていましたので、ハイリスク・ハイリターンのビジネスゲームに参加しました。

今回はビジネスゲームに参加しないことにしました。異業種出身のため、情報処理の会社ではこれまでの経験と人脈はまったく当てになりません。このままだとハイリスク・ノーリターン、いずれリストラされるという、不名誉な撤退となりかねません。そこで、船が沈む前に、逃げ出すことにしました。まずは、同志を募り、シャドーキャビネット風に、マネージメントチームをつくりました。そこで提案書をつくり、ヘッドハンティングのエージェントに営業活動を始めました。

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