金言343:成果主義≠情報共有

通常、成果主義の会社では、稼ぐ社員が評価されます。不法行為はお上からお咎めを受けますが、一定の不当な行為は会社の利益に貢献する限りおいて許容されてきました。利益確定優先すれば「何でも有り」状態になり、いわゆる悪い人たちが高額な報酬を得ながら生き残ることができるはずです。

成果主義を率先して採用した情報処理関連企業は、社内情報共有化が勝ち組必須のインフラと説明し、情報共有を効率的に可能にするツールやシステムを販売・構築してきました。競合他社に対する優位性を補強するための基礎的な情報化投資などは不要だと考える経営者は少数派だと思います。

人件費削減・若手登用により、暗黙知をもつベテランを手放す会社は、その対策として社内情報と従業員の知恵を共有するシステム構築に投資します。ところが、システム構築・販売会社は、成果主義と情報共有は従業員個人のレベルでは両立しにくいという事実に、あまり触れません。

豊富な業務知識、人脈、マニュアル化できないノウハウなどの属人的なナレッジをもつ従業員は、利益という結果のみを評価する成果主義の社内で、その大事な虎の子を公開してしまうと、自分の優位性が希薄になることを心配します。その人だから意味がある情報や知恵は公開しても他人が共有し活用できるわけはありませんが、他人に手の内を明かすのは将来何かしらの不利になるリスクがあります。

ある商社には、いくら利益を稼いでも個人プレーでは高い評価を得られない仕組みがあるそうです。利益という結果ではなく、プロセスを評価する制度とのことです。これは、資源高の追い風で恵まれた収益環境が可能にした経営戦略といえます。収益環境の悪化に背中を押されて日本企業が成果主義を取り入れた背景がありますので、この会社が想定外の危機的な状況に直面したときは、再び成果主義にもどるかもしれません。

「結果ではなくプロセスを評価する」システムで恩恵を受けるのは、結果が常に不透明な従業員です。赤字を出した従業員に対して、プロセスは良かったと評価できるのは、会社が恵まれた収益環境にあるか、または業績以外の価値に投資している主要株主がいる会社の経営者かもしれません。

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