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株式会社CAST 薄型センサー商品化を目指すまで【後編】 ―“研究と開発”両輪で進む企業へ

独自の薄型センサーをコア技術に持つ、株式会社CAST。製造業の課題解決を目指して、商品開発を進めています。

前回の記事は、創業ストーリーの前半でした。コア技術が20年前にはできていたことや、研究を中心に活動していたときの様子が垣間見えましたね。

今回の記事では、創業ストーリーの後編をお届けします。前編に続き、代表の中妻啓さんに取材。16年間研究に没頭してきたメンバーが、会社を興した理由に迫りました。


株式会社CASTとは】
・創業:2019年9月
・創業メンバー:中妻啓・田邉将之・小林牧子
・メンバー数:7名(2021年11月26日現在)
・所在地:熊本県熊本市中央区黒髪2-39-1(熊本大学内)
・事業内容:センサーおよび周辺機器・ソフトウェアの研究・開発・製造・販売
・ミッション:「あらゆる場所にセンサーを」


~創業の経緯~

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事業化のきっかけは、創業支援プログラム

テックプランター

―16年も研究に費やしていたCASTは、ここからどのように展開していくのでしょうか?

転機になったのは、2017年に参加した熊本テックプランター※ですね。単にビジネスピッチの場ではなく、どうビジネスにしていくかを考えたうえで最後にピッチをするプログラムなんです。主催の株式会社リバネスが相談に乗ってくれたり、勉強会を開いてくれたりして、初めて事業化を考え始めました。

※熊本テックプランターとは
熊本県内の次世代ベンチャーの創出を目指し、2016年4月から、熊本県内で新しい一歩を踏み出そうとしている研究者や起業家を支援する創業支援プログラム。
(引用:https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/65/50891.html)

こういった発表の場は田邉が好きで、最初は田邉が参加していました。で、「東京で本大会があるから出ない?」とお誘いを受けまして、ぼくが出場したと。田邉はスケジュールが合わなかったんですよ。だから「出れないんだったら出るわ、スケジュール合いまーす!」みたいな。なんかおもしろそうだし、と思って返事をしましたね。

―即答ですか?

ええ。あまり深く考えていなくて。

とはいえおもしろそうだったのは……きっと、事業化までのストーリーをつくるところですね。「〇〇という課題があります。そこに〇〇の技術があれば解決できます」みたいに話をつくっていくのが、楽しかったんだと思います。

本大会に出たとき、「新日鉄住金エンジニアリング賞」をいただいたのも大きな転機でした。グランプリを機にいくつか注文を受けたし、本格的に事業化に向けて動き始めていましたね。


研究と開発の両輪がスタート

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―商品をつくって、事業化も進めて……。一気に動き出したのですね。

「センサーを使ってみたい」と言ってくれた企業には、サンプルをつくって渡していました。当初は60個作って20個渡せるものができるかな?というくらいで、精度は低かったです。

こうしてサンプル作りや商品開発に時間とお金を使えるようになったのは、幸運でしたね。2018年にQBキャピタル合同会社の事業化プロジェクトを始めて、VCから開発資金を含む支援をいただくようになったんです。量産化の検証をしたりサンプルを作ったり、月に1回は活動報告をしたりして……。

としているうちに、「量産はいけるな」と思える日が来ました。どれくらいの金額で作れて、どれくらいの金額で売れて、どのくらいの利益が出るか、現場試算していたんです。それに周りの反応から、まずは「工場の配管にニーズがある」のが分かってきて。どこに適用できる技術なのかが少しずつ見えてきました。

ここまできてようやく「これは会社にしてもいいんじゃないか?」と話が出てきたわけです。


大学内でできることを超えた?

小林・中妻・QB川太

―起業ではなく、大学内のプロジェクトにする選択はなかったのですか?

もちろんそれも検討したんですけど……、ぼくは、大学でできることはもうないなと思っていて。創業メンバーにも伝えていました。

大学は基礎的な研究をしたり、新しいことにチャレンジしてく場所だと思っています。一方でぼくらがやろうとしていたのは、商品化のために配線をどうするか、どう湾曲させるか、100個作ったときの成功率をどう上げるか、などの細かい話。大学でできることを超えていると思ったんです。

それに、CASTの技術をどこかの企業が商品化してくれるかというと、むずかしいだろうなと思いました。商品化はかなりの投資が必要ですし、本気で取り組んでくれるところってあるのかな?と。商品化してくれる企業を待っていてもしょうがないですしね。

であれば、自分たちで会社を作った方が早いんじゃないの?と思ったんです。


―研究から本格的に開発するにあたり、不安はなかったのですか?

あまりなかったですね。いきなり起業しよう!ではなく、出資いただいたり注文をいただいたりと、今までの流れがあったので。VCに資金調達の手段も教えていただいたので、あとはやるのみでした。

また2019年には、熊本大学の教員が会社の代表取締役に就任できるように、兼業規則が変更になりまして。大学の職を続けながら会社の代表もできるようになったので、誰かを呼ばなくても会社を創れるようになりました。

そして2019年9月、株式会社CASTが誕生したのです。今もそうですが、熊本大学の後押しは心強かったと思っています。


それぞれの波に乗ってきた19年間

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―改めて、創業までを振り返っていかがですか?

その時々の流れに、うまく乗ってこれたんだなあと思いました。大変なことはないとは言わないですが、実際の大変さってよくわからなくて。それくらい、環境に恵まれたんだろうなと思っています。

今はメンバーが増えて7名で、薄型センサーの研究と開発を行なっています。「研究と開発」、どちらも社内でできるのが強みなので、うちの技術が気になる人はぜひお声がけください。


株式会社CASTは、「nano tech 2022」に出展中です!
CASTの出展情報はこちらです。
CAST独自のセンサー技術を知る機会として、気軽にお立ち寄りください。

【オンライン展示会】
2021年11月26日(金)~2022年1月28日(金)


次回は、株式会社CAST代表・中妻啓さん自身のインタビュー記事を更新予定です。


コンテンツ設計・取材・執筆:小溝朱里

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