[読書メモ]デンマークのスマートシティ データを活用した人間中心の都市づくり


読了後感想

次の職場にて、スマートシティに関する取り組みもしているとのことで、是非絡みたく、勉強がてら読んでみた。
デンマークは政治や環境が日本とはかなり異なる為、感想としては

((デンマークに住みたい。。))

でしたが笑
非常に先進的な取り組みを国がリードして取り組んでいるのが非常にうまく行きやすいパターンだなと思う。(日本はそうは行かない)
各章で、細かくファクトや事例を述べている為読み物としてはかなり読みにくい、、(そもそも知識の無い項目はかなり眠くなる)ので、そういった部分は流し読んでおいて、事例が必要になった時に再度その部分を見返すような使い方が良いかと思います。
あと、思ったよりもデータ活用と都市づくりの記述が少ないので具体的な方策を学ぶことはできないです。
ただ、デンマークには詳しくなります笑
国としての方針や、プロジェクトのコンセプト、進め方、などの浅めの内容になっている。(データの裏側をあまり紐解けないという事情もあるでしょうが、、)

1章:格差が少ない社会のデザイン

北欧が課税が高く、保証が手厚いという話は方々で知れていることなので省きます。
デンマーク人の国民性として「ヤンテの掟」というものが根付いている。
この「ヤンテの掟」は日本人には美徳とされるものでもある為、自分への啓蒙として覚えておきたい。

あなたは自分が特別だと思うな
あなたは自分が善良だと思うな
あなたは自分が人より賢いと思うな
あなたは自分が人より優れていると思うな
あなたは自分が人より物事を知っていると思うな
あなたは自分が人より重要であると思うな
あなたは自分が人より何でもできると思うな
あなたは他人を笑ってはいけない
あなたは人が自分に気配りをしてくれると思うな
あなたは人に何か教えられると思うな

少し過剰な謙遜というか清貧性というか、、という感じなのですが、
1933年に作家のアクセル・サンダームーサが書いた小説の中の架空の村の掟だそうです。
これを見たとき、過去面接官に、いい意味で謙虚でいて、いい意味でプライドを持つことが非常に大事と言われたことを思い出しました。
自分の心の中では、「ヤンテの掟」の気持ちでいるくらいがちょうど良いのかも知れません。
その精神性が根付いているせいか、デンマーク人はどんな立場の人間でも対等だそうです(社長に対して社員がかなりフランクに接したり、大学名や前職を聞くことはほとんどない)

働き手不足になった時代があり、その時に女性の労働人口が増えた(なんと7割の女性は働いている)経済的に自立している女性が多いため、離婚も多いそう。

2章:サステナブルな都市のデザイン

「CPH2025気候プラン」というエネルギー政策の中で、2025年までに

・市内の移動の75%を徒歩、自転車、公共交通機関にする
・職場、学校に自転車げ通う通勤・通学者の比率を50%まで高める
・2009年と比較し、公共交通機関を利用する比率を20%高める
(以下略)

としており、自転車に関する目標は以下の通り

・コペンハーゲンに置ける自転車道を80%増やす
・サイクリストの走行時間を15%低減させる
・自転車で大きな怪我を負うサイクリストを70%削減する
・自転車文化が都市環境に良い影響を与えていると考えている市民を80%まで高める
・駐輪場に満足する市民を70%まで高める

各項目の目標に対して、個別の目標をMECEに考えられているし、自転車は良いと考える市民を増やすという、啓蒙的な目標も入っているのが素晴らしいと思った。

自転車道の整備について、交通を検知するセンサーシステムを導入しており、交差点に接近中の自転車が5台まとまっている場合、その一団が通過するまで青信号を延長する、というような動画像の活用を行なっている。
また、目的地まであとどれくらいか、どこを走るとどこにつくのかを道路に掲示しているため、サイクリング中にスマホを確認している人はほとんどいない。

廃棄物施設のような施設はNIMBY:ニンビーと呼ばれ、施設が必要なことは理解できるが、自分たちの裏庭には建てないで欲しいという迷惑施設のように考えられているが、アマー資源センターには、休日に市民が集まるように設計されている。(スポーツ施設やカフェがある)

3章:市民が作るオープンガバナンス

医療ポータル:sundhed市民ポータル:borger.dk

▼デンマーク政府のデジタル化戦略の変遷

画像1

▼医療ポータル:sundhed
過去の通院歴や、処方歴を見ることができる。(病院ごとの管理ではなくシームレスに情報を把握することができる)

画像2

▼市民ポータル:borger.dk
全てのインフラ情報や申請などをweb上で申請できる。これはめちゃくちゃ便利そう。

画像3

地方のシャトル運営:サムソ・エネルギー・アカデミー代表
サムソ等という過疎地において、シャトルバスを走らせるプロジェクトを行なった。代表自ら数年かけて全島民に説明した。非常に泥臭く進めた。
「地域単位で考え、地域で活動する」が結局のところ成功の近道。
地域の発展が各地で起こることによってグローバル化に繋がるが、グローバルな発展が各地域の発展に繋がることは難しいから。

5章:デンマークのスマートシティの特徴

▼デンマークと他国のスマートシティの比較
技術、産業中心になってしまう(5G、IoT、自動運転、エネルギーのエコシステム構築など)があくまでも人間中心のアプローチで政策を進めている。

画像4

市民参加とソリューション開発が自己目的化しやすいことを考慮して福祉と持続的成長の手段にすると定義している。

コペンハーゲン、オーデンセ、ノーハウンと各都市でスマートシティ化を進めているが、街の歴史や政策ごとに最適化したスマートシティ化構想がある(コペンハーゲン:先進都市としてのショーケースになるような包括的な都市としてのスマートシティ化、オーデンセ:歴史的な街を残しつつ市民が快適に暮らせるスマートシティ化、ノーハウン:テック企業が集まる街らしい技術特化のスマートシティ化)

メモしたい項目
- LEDによる高度な照明システムに入れ替えると、約60%のエネルギー費用の削減ができる(コペンハーゲンの施策、DOLL社と共同)
- 2030年までに世界初の完全なキャッシュレス国家を目指している
- 5分間都市:人が5分間で歩ける距離は平均400mであることから、ノーハウンでは、徒歩や自転車での移動を楽にする為に「5分間都市」の原則を大切にしている。自宅、職場、公共交通機関、自転車道、緑地、区役所などの公的機関、商業施設が短い時間で移動でき、徒歩か自転車で行くことができるような、コンパクトで高齢者にも優しい街を実現する。
- オーフス市は、社会的な問題を解決して、より良いスマートシティを確率する為には、行政、民間企業、市民が高いレベルの責任を負わなければならないことを強調している。

6章:イノベーションを創出するフレームワーク

イノベーションのフレームワークという概念的な話は該当するかどうかもわからない為割愛。
重要だと思ったのは、複雑化する社会において、単一企業、機関が問題を解決することはできず包括的に取り組まなければ問題解決が難しいということ。
デジタル化で全ての情報をプラットフォーム化することが必要である。
5章に記述の内容になるが、オーフスは、良いスマートシティを実現するには、企業、行政、民間が高いレベルの責任を負わなくてはならないことを強調している。

おわりに

デンマークには元々高い福祉レベルと、それを保ち発展する行政そして、高い税金を払っているからこそそれを監視する市民の参画が機能している土壌がある。
行政の目標設定や、実現までのアプローチもかなりMECEに見え、地に足がついているように見える。
日本に完全なる横展開は難しいものの、海外の都市が先行してスマートシティ化に向けて動いているのは事例や取り組みを学ぶことができる為非常にありがたいと思った。
日本は都市一極集中の傾向が強く、コロナが落ち着いてもその傾向は続くと思うものの、リモートワークの恒久化などを実施する企業もちらほら増えており、デジタルに強い都市の人たちが、郊外、地方に移り住むことで、地方創生の足がかりになると良いと思う。(本の内容とあんまり関係ないけど、、)
都市はもうある程度便利になっており、人口集中による土地の高騰>通勤時間の長時間化というデンマークのスマートシティ化とは逆の流れに現状行ってしまっているので、地方でも都市と同等程度の仕事ができる環境(金銭的にでは無くライフスタイルとして満足できる生活という意味で)になっていくことが必要なのではと思う。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?