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東大で学んだこと:英語の勉強はザルで水をすくうようなもの

スパルタ教育:ギリシャ哲学英語で丸暗記

大学1年生の時、ギリシャ哲学の名著を英語で暗唱するという授業を履修してしまいました。毎週数ページの英語を丸暗記しなくてはなりません。哲学の教授が教える授業で、彼の考えでは、エリートたるもの、英語の会話において『国家論』の一文くらいさっと引用できるようになった方が良い、とのことでした。

あまりにも負荷が高いので、次の学期は絶対にこの教授の授業を取りたくない、と思いました。ところが、英語の選択科目の希望届けの提出日は、夏休み中、私がカナダで短期留学してにいる期間中でした。

一緒にギリシャ哲学の暗記で苦しんでいたクラスメイトに「あなたと全く同じでいいから、私の希望も提出しておいて」と電話しました。国際電話で高いので細かい説明はせず、彼女なら必ず哲学部の教授の授業は希望しないと信じていました。ところが、彼女はギリシャ哲学の暗唱も楽しかったようで、なんと私もその授業を後期にも受講することになってしまいました。

進学振り分けという圧力で、この暗記をやりきりました。友人はそもそも、こういう内容が好きなようで、彼女もやりきりました。2学期にわたり授業をサバイブした私達2人を、1年間の授業を終えた後、教授が飲みに連れて行ってくれました。

英語の論文はDouble Jeopardy

努力のかいがあって、後期課程では国際関係論に進学できました。その学部は秀才ぞろいでした。高校生の頃、弟に「姉ちゃんは天才じゃないけど、努力する才能がある」と言われたことがありました。国際関係論に進学して、自分より努力する才能のある人達に生まれて初めて囲まれました。

落ちこぼれそうになったのは、必修科目の国際政治の教授が文献を全て英語にしていたためでした。調べないといけない単語の数が多すぎるので、昔ながらの辞書では追いつかず、電子辞典まで購入して読みました。それでも、読み終わりません。

私は、英語の文献で国際政治の勉強をしている自分の状況は『ダブル・ジオパディー』だと思いました。直訳すると「二重の危険」という意味です。英語で『ハリー・ポッター』なら読めます。日本語でなら国際政治も勉強できます。でも国際政治を英語で勉強するのは難しいです。周りの学生はそれをこなしていました。
40ページの英語の文献を一晩で読むことは、当時の私には無理でした。単語を調べた後で、「この単語前も調べたことある」、と自分の記憶力の悪さにがっくりすることも、しばしばありました。知らない単語を全部引きながら読んでも、内容は半分しか理解できませんでした。

高校時代聴いていたNHKラジオ英会話の講師の言葉を思い出しました。「英語はザルで水をすくうようなものだ。どんどん覚えてどんどん忘れる。いつか力がつく」。

知らない単語は聞き取れない、という当たり前の事実

東大では『The Universe of English』という教科書が使われます。これは、文系、理系を問わず、1年生の全員がうける必須科目の教科書で、東大の英語の先生が集めた、面白い小論文が納められていて、細かい脚注がつけられていて、本当に名著です。有名私立では、高校生からこの教科書で英語を勉強していると聞きました。2年生になると『The Expanding Universe of English』が使われます。

授業は大講堂での授業ですが、毎週のテーマに合わせたビデオも面白かったです。そのビデオをききながら、プリントを穴埋めするのですが、教授が「知らない単語は聞き取れない」と言っていました。そのため、予習として、教科書の知らない単語を調べて覚えるようにしていました。

知らない単語は聞き取れない、というのは本当にそうで、同様に「書けないフレーズはしゃべれない」と思います。英語で文章を書こうとするとき、ある程度の英語力がある人であれば、サラサラと書けると思います。でも、その時本当に言いたい内容、日本語であれば表現できるニュアンスなどを割愛することもあると思います。面倒でも、文章を書くときに和英辞典を駆使して、なるべく「日本語だったらこう言うな」、という表現をするようにすることで、ライティングもスピーキングも、力がつくように思います。

終わりに

東大では、日本語の教材で授業をやりきる教授も多かったです。ただ、中には、英語の文献を浴びるように読ませる教授もいました。大変でしたが、そういう教授に今では感謝しています。

読むというのは、留学しなくても力をつけられる作業です。そして、知らない単語を覚えていけば、ゆっくりですが力がつきます。

英語のリズムに慣れる、というのは、文法構造を考えずとも、英語の順番のまま読んで、理解できる力がつくことです。私は、この力は、大学4年間プラス1年間のオーストラリア留学の努力では身につきませんでした。卒業後、MBAに留学した際に、1年留年して必要文献を全て読んだ頃、やっと身についたように思います。

でも、続けていれば誰にでもできることだと思います。続けることが何より大事だと思います。


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