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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第75わ「狡兎・ヴァーサス・走狗」

(承前)

人間の世界には獲物となる兎が死ねば猟犬も殺されて食われる、みたいな諺もあるのは事実だが……少なくとも俺はそこまで非情にはなれない。

「ぐすっ。本当ですか?信じていいんですか?」

相棒がメソメソと泣いている。ウソ泣きだとは思わない。ただ、涙を自由に出し入れ出来るだけなのだ。それよりも問題は俺の方だ。❝ゲーム❞が終われば相棒は俺を守る必要も義務も無くなることは分かっている。

「❝ゲーム❞が終わった途端に用済みとばかりに襲われるのが怖いのですか?しません、そんなこと!私は何度も勝ち残っています。その度にパートナーのニンゲンに欲しいだけの報酬を与えてから元の暮らしに戻して差し上げて来ました。それに関しては他のハントマンも概ね、そうしている……筈です」

じゃあ、それに関しては信頼する。あとは相棒が俺を信じてくれれば、それでいい。人類の平和と自由など俺一人の両肩には重すぎる荷物だ。俺は未来の勇者に希望を託す。

(続く)

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