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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第66わ「帰還」

(承前)

静かになって運びやすくなった相棒と共に、俺は自宅へと戻って来ることが出来た。同級生や知り合いに遭遇したりしないかと不安もあったが、人通りの少ない経路を選んだ努力は正しく報われたと言えよう。

「む……無事に家までたどり着いたのですね」

俺は居間に鎮座する黒い棺(家を出るまでは俺の部屋にあった筈だが考えても仕方がない)の蓋を外すと、其処に眠そうにしている相棒の身体を横たえてやった。さて、俺は今日こそ学校に行かないと。今から急げば二時限目には間に合うだろう。

「ダメです」

何故だ?相棒が俺の袖を掴んで離さない。

「ダンナは交通事故で意識不明の重体、面会謝絶なんです。そういう設定になってます。人目に付いたら何もかも台無しです」

既に根回しが済んでいたとはな。俺の両親を❝除外❞した連中にとって、それぐらいは朝飯前ということか。

「ですから」

俺の体を相棒の腕が掴んでいる。一本、二本、三本、四本。

「一緒に寝ましょう」

(続く)

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