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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第132わ「二人の不協和音」

(承前)

指摘されて思い出す。全身あちこち痛いせいで忘れていたが、今の俺は片目の男だった。家に帰ったら眼帯の手配をしないといけないだろう。妹と一緒に、俺に似合う眼帯を探そう。

「……ふふ。うふふ、はは。兄さんってば」

妹も楽しそうに笑っている。こんなに楽しそうに笑っている妹は初めて見たような気がする。そこで何かが妙だと気付いた。妹の着ている制服だ。こんな時間に制服を着ているのはおかしい。違う。そもそも妹が学校の敷地を抜け出して出歩いていること自体がおかしい。それに、それに……。

「それでダンナ、どうするんで?このまま朝日が昇るまで二人で見つめ合っているおつもりですか?私はそれでも一向に構いませんけどね」

❝ゲーム❞のルールによって自発的に行動できない吸血女は俺の言葉を待っている。「一緒に帰ろう」と俺が言うのを確信している。妹ではなく自分を選ぶことを、その決断を命を賭けて待っている。もうすぐ太陽が昇る時刻だ。

(続く)

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