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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第95わ「連帯感と連帯責任」

(前回までのあらすじ)高遠少年の平穏で幸福な日々は唐突に終わりを告げることになる。青ざめた肌、獣めいた身のこなし、尖りに尖った犬歯を持つ怪人に襲われ、隣を歩いていた友人は一瞬にして血煙に。しかし毒液の滴る牙が高遠少年を今まさに捉えようとした瞬間、割って入った存在がいた。❝ハントマン❞と名乗る吸血鬼の貴族───を自称する謎の少女である。彼女は今から始まる吸血鬼同士の決闘、通称❝ゲーム❞のパートナーとして高遠少年を選ぶと宣言する(断れば友人の後を追うことになるという)。ハントマンの少女と行動を共にするうち、彼に様々なものが見えて来る。人間狩りの怪人は❝マンハント❞と蔑まれる吸血鬼の平民のようなものであること。古来より人間社会は吸血鬼の互助組織によって管理運営される牧場に過ぎないということ。家畜である人間は血液の質によって格付けされているということ。ゲームとは即ち土地や資源の奪い合いであること。

(承前)

相棒の姿は既にない。無理からぬことであった。ハントマンの身体能力は人間のそれを遥かに凌駕する。しかし名前を大声で呼べば人間を凌駕する聴覚で気付いてくれるかもしれない。試してみた。大慌てで戻って来た。

「何ですか?何なんですか!?私はイヌですか?呼べば来るヤツなんですか!?今まさに見た目よさそうなニンゲンを見つけたところでしたのに!」

俺も同行する。パートナーとして、相棒のやることに目を背けているわけにはいかないからだ。

エッ。いや、お家で大人しく待っ……ああ、ヤサがバレると危ないから……例の雑居ビルの屋上で待っていて欲しいのですけれど。危ないですよ?」

俺には相棒の非道を見届ける義務がある。

「非道って……ダンナだって家畜の肉、食べるでしょ?そこに罪だの罰とか言い出すのは……」

お前の罪ではない。罪も罰も人間だけのもの。お前を野放しにする、俺が背負うべき、俺の罪なのだ。お前が気に病むことは何も無い。

(続く)

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