見出し画像

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第87わ「規格の外側」

(承前)

恐怖のあまりに座り込んだ相棒が啜り泣いている。その様子を見て不覚にも使命感が湧いてきた。つまり独力で、この難局を打開せねばならないということである。意を決して背後で膨らみ続ける存在感に向き直る。

よんだのはきみ?

異形。他に言葉が見つからない。一見すると二足歩行。俺と同じ身長。俺と似たような服。その顔は餃子の皮のような肌質。干し葡萄のような双眸。ぞんざいに穿たれた不揃いな鼻の穴。質量を持った暗黒が内部で渦巻いているのが窺える。もしかして俺の姿を真似しているつもりなのだろうか。

それともかのじょ?

どうやって事情を説明しようかと逡巡している間にも、謎の存在が周囲を文字通り嗅ぎ回っている。

ここにいない、どうほうのにおいがする。
さっきまでゲームマスターが此処にいたのか。

勇気を振り絞って発言する。ゲームマスターに半ば無理矢理、血を吸われそうになりましたので俺、もとい私が貴方を呼びました。そういうことです。

(続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?