ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第58わ「仕切り直し」

(承前)

相棒のペナルティ、即ち胸と右肩に刺さった杭は、それぞれ生命力と攻撃力を万全な状態から半減させる効果があるらしい。それは大変だな。

「そうです、大変なんです!本選が始まる前に何としても解消しないと!」

東の空が明るくなりつつある。闇夜に蠢く人間狩りの気配も消え失せた、ような気がする。家路を急ぐことにしよう。

「……そうです!ダンナはどうやって家までたどり着くつもりなんですか?この屋上から自力で脱出できますか?それとも職員と監視カメラの目を掻い潜って玄関から出られると思ってます?」

来た時と同じく、相棒の背中にぶら下がって帰ろうと思ってたんだが。すると相棒が屋上の縁に立ち、こちらに向き直る。

「取引しましょう。ダンナが私と同衾すると約束してくれなければ……私は一人で家に帰ります!」

何だと。

「十秒だけ待ちます!」

してやられた。こんな形で駆け引きを仕掛けてくるとは完全に予想外だった。恐るべし、吸血鬼の貴族。

(続く)

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