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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第113わ「感想戦」

(承前)

地に墜ちたミノムシよろしく地面に転がっていたのが最後の記憶だった。気が付けば俺は相棒の隣で棺桶に閉じ込められている。これは負けて死んだせいではない。勝って生き残った結果なのである。

「目が覚めましたか?」

端末を取り出して時刻を確認しようとするや否や、両腕が拘束された。蓋を蹴飛ばして外に出ようと思うや否や、両足が拘束された。

「今夜は寝かせません。と言っても間もなく太陽が昇る時間ですが。今から反省会ですよ、今回の反省会!」

また面倒くさいことを言い出した。即ち俺の落ち度を非難しようということだろう。怪物同士の戦いに於いて何の力も無い俺に、どんなミスがあったというのかは甚だ疑問ではあるが。

「ですが、今夜のダンナは百点満点!一点の落ち度もありませんでした!格下も格下のハントマンが相手とはいえ、ただの人間がアイテムと機転で互角以上に取っ組み合いをするとは!これは相当のポイントが振り込まれている筈です!」

そうか。それはよかった。反省会は終わりでいいよな?

「いえいえ、本題はここからですとも。今回は格下を相手に思わぬ苦戦を強いられた私の落ち度を挙げるのが目的ですので!ニンゲンであるダンナの視点からの忌憚のない意見を聞かせていただきたいのです!!さぁ!!!!」

何だ?さては新手の嫌がらせだな?そもそも俺は例の❝インセンス❞とやらのせいで頭がおかしくなっている間の記憶が曖昧なので偉そうなことは言えそうにないのだが。そもそも俺が正気に戻ったのもその❝インセンス❞のお陰なのだとすれば敵との格闘に突入する前に出し惜しみせず使ってくれていればよかったのでは?

「インセンスは一回の❝ゲーム❞につき一つしか支給されない貴重品。……確かに私の判断が遅かったというのは事実です。ですが、これはハントマンの最後の切り札であることもご理解いただきたい。戦闘の切り札としてではなく、パートナーに対する切り札という意味ですが」

(続く)

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